み〜あろっく   作:幽霊部In

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書きあがったら投稿するスタイルなので投稿しますゥゥゥ……




G#dim(E/G#)→Amぐらいの距離

 

 わたしは自分が作る曲以外を投稿することはあんまりない。

 

 これは自分が作詞作曲する以外の曲で動画を投稿するのが嫌いとかそういうのじゃなくて、自分がカバーして歌ったり弾いたりする事にそれ程の魅力を感じないから。

 

 世の中にあるカバー曲を否定する訳じゃない、中にはその曲をこの人がカバーするから生まれるオリジナリティが生まれる事だってある。

 

 ただ、わたしが弾いたり歌う事によってオリジナリティが生まれるような他アーティストの曲が、わたしの中では無かっただけだった。

 

 弾けはする、歌うこともできるしそれ以上のアドリブもする、でもただそれだけ。

 

 技術的な問題じゃない、それこそ「熱意」って言うべきものが、わたしが他の曲をカバーするときに足りてないんだと思う。

 

 ……まあそもそも、それはそうなんだよ。

 

 このバンドだからこの演奏が出来て、この歌詞が響いて、このボーカルに適している。

 

 そうやって纏まっているものを、変に歌おうとしても、模擬する様に弾いても、余計なことをしてしまったとしか思えないんだ。

 

 その場で満足するようなカラオケとは違う、世に出すなら誰かに見てもらって何かを感じてもらうために曲を出すべきだ。それを考えればなおさら、わたしが歌って世に出そうって思える曲は無くて、演奏の面でも同じような現象が起きた。

 

 だからわたしは逆に、カバーする事で他人に何かしらの感情を強く引き出せる人を尊敬している、わたしには中々出来ない事だから。

 

 

 ……なんて、そんな偉そうに言ってるけれど、今となっては動画投稿すら何年も上げてない、自称アーティスト気取りの半引きこもりだけどね。

 

 思わず自笑してしまうぐらいには、情けないけれど。

 

 でも、そんなわたしでも数回だけカバー曲を出した事がある。

 

 ただ純粋に、その曲が好きで、他でもないわたしが響いて、わたしが歌って弾いてみたらどうなるんだろうって感情で上げた曲。

 

 その時を思い返すと、根底にあったのは楽しさだ。

 

 そう、楽しかったんだ。

 

 それは、この前のひとりちゃんとの演奏やゲリラ路上ライブに当てはまる。

 

 音楽をする上で何が必要なのか、人それぞれではあるけれど。

 

 わたしが一番必要なものは多分、楽しさだ。

 

 この感情からくる音の螺旋が、彩って仕方がない世界に連れて行ってくれる。

 

 

「……基準線(ベースライン)が、出来た」

 

 

 2分42秒の音色が形になった、まだまだ形になった程度で、ベースラインだけの曲としては未完成も未完成。

 

 完全に納得もしていないし、メロディラインも無い。DAW*1を使っての調整は必要だし、ノイズ調整もする必要があるし……やらないといけない事はキリがない。

 

 でも、出来た。

 

 たった今わたしの作る音で新しく、まだ名前もついていないモノが完成した。

 

 息を吐いて、作業の手を止める。

 

 いま、たった一つだけ確かなことは、わたしの根底にあるたのしさが確かに、満たされた。そんな気がする。

 

 

 気がする……だけじゃないって、思いたい。

 

 

 

 

 

 

 

『みあちゃ〜〜〜ん飲み行こ〜〜〜!』

 

 

 という連絡が来た。

 

 この文言でわかるだろうけれど、廣井ちゃんだ。

 

 連絡先を交換した覚えはないんだけど、もしかして知らない内に前の初結束バンドのライブ日に交換してたのか、わたし。

 

 嘘でしょ……あの日そんなに酔っ払ってる記憶ないんだけどなあ、特に粗相もしなかった筈だし。

 

 こわくなってきた、どうしよう。

 

 てか絶対あの日の立て替えたお金のこと忘れてるよねこの人。

 

 いや、まあ……STARRYの店長さんがストッパーになってくれていたし、それほど飲んでなかった(当社比)みたいだったから、わたしの分と合わせても諭吉さん一枚ぐらいだけど。

 

 でもまあ、誘ってくれるのは普通に嬉しいな、外に出たくないってわけじゃなくて、外に出る理由が少ないだけだから。

 

 ……それに既読も付けちゃったしなあ。

 

『良いよ、何処?』

 

 と連絡して外出する準備をし始める、持って行くようなものも必需品以外無いからそれは直ぐに済んで。

 

 待ち合わせ場所のリンクを見て、これぐらいの時間かかるけど良いのって連絡した後に良いよーって来たから、今度こそ家から出た。

 

 わたしの家から都内に向かうまで大体一時間30分ぐらいかかる、着く頃には夜の七時を過ぎちゃうけれど、この時間から金沢八景から都内に行く電車は、そこまで混んで無いからちょっと嬉しい。

 

 Bluetoothのイヤホンを付けながら、昔から気に入っているバンドの曲を聴いたり、ちょっと仮眠をとったりしていたら、あっという間に駅に着いた。

 

「何処にいるんだ……?」

 

 と、多分一眼見たら分かるだろう酔いどれ廣井ちゃんを探そうと周囲を見渡すと、背後から聞き馴染みのある声と、気配を感じた。

 

「みあちゃ〜〜ん!待ってたよお〜〜〜、お?、おぉ〜!おぁ〜!?」

 

 抱き付かれそうだなあ嫌だなあと思って身を翻したら、廣井ちゃんの体制が崩れて地面と同化してしまった。

 

 ……ちょっとおもしろいじゃなくて、かわいそうだな、受け止めてあげた方がよかったかもしれない。

 

「ひどいよぉー」

 

「ごめんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて誘われるまま付いてきたわたしだけれど、どうやら廣井ちゃんとのさし飲みって言うわけでもなく、廣井ちゃんに案内されるまま居酒屋に向かう事になった。

 

 ……ちょっと安心、廣井ちゃんの事だから路上飲みも視野に入ってた、だってそういうの人呼んでも普通にやりそうだし……。

 

 集合場所が下北沢駅の時点で、何となくは察していたんだけれど。

 

「そういえば、何でわたしの連絡先知ってるの?」

 

「ぼっちちゃんに聞いた〜」

 

「ああ……」

 

 まぁひとりちゃんなら仕方ないか……お願いされると断れない子だし、誰かに教えないでねって言ってるわけでもないし。

 

 むしろ、今度会った時そのことを言ってみようかな、全然怒ってないけど、何で教えたの?って、すごい慌てるひとりちゃんが見れそう、いじわるかな?いじわるだね、ひとりちゃんがわるいよ。

 

「連れてきたよぉ〜!」

 

「お……誰を呼ぶんだと思ったら、みあさんか」

 

「さん……?呼び捨てで良いよ、STARRYの店長さん」

 

 やっぱりと言うべきか、あの時の金髪の美人さんだった。隣で手を振って歓迎してくれる人は見たことがある、STARRYのPAさんだね。ばちばちのピアスしてるから覚えやすかった。

 

「いやそんな……あー、ならみあも、名前で言ってくれよ」

 

「良いの?じゃあ改めてよろしくね、星歌ちゃん」

 

「ブハ!せ、せ、先輩が、ちゃん!あはっ!」

 

「よしこいつ殺す」

 

 

 酔っ払い〆そうキャンペーンが開催した、星歌ちゃんの渾身の右ストレートで酔っ払いは成敗されたみたいだ。

 

 屍は放っておいてPAさんの隣に座った、ばちばちのピアスとは違って人当たりの良さそうなにこーって表情だ。

 

「よろしくね、PAさん」

 

「はい〜〜…… 名前言いそびれました……

 

「珍しいね、ライブハウスは休日?」

 

「ん、ああ。そうだよ、偶には休まないとな」

 

「それでこの子(床のシミ)に誘われたんだ」

 

「……いや」

 

 あれ、違うのか。えっ……っと、じゃあなんで?

 

 そんなわたしの疑問に答えるように、すごい形状し難い顔で、星歌ちゃんは指を差しながら言葉を続けた。

 

「こいつ放って置くと箱の近くで飲むんだよ」

 

「……さすがベーシストだなあ」*2

 

 

 

 

 

 

 

 

 床のシミちゃんが廣井ちゃんとして復活するのに時間は掛からなかった。

 

 乾杯してお互いのことについて話し始める、といってもわたしはただのひとりちゃんのファンの一人だし、それ以上でも以下でもないけれど。

 

 だから主に星歌ちゃんのライブハウスについてのお話とか、廣井ちゃんの活動の話とかが主に語られる。

 

 といっても固い話をしに来たわけじゃないから、軽いお話程度だけれど。

 

「____でねぇ〜、結成してまだ一年経ってないけど、人気になってきたんだよぉ〜〜〜」

 

「ふ〜ん、結構すごいじゃん、ジャンルは?」

 

「メタル!」

 

 

 メタルバンドか、メタルバンドで人気になれるなら相応の技術はあるんだろうね。

 

 どういう会場の雰囲気をつくるんだろう、パワーバラード*3を主に歌う方向じゃない限りは、まあわたしが思うイメージ通りなのかな。

 

 デスコアとは違ってライト寄りの方ならそこまで激しくはないだろうけれど。いやわたしは好きだよ?上から見てる分にはね。あれを見ながら飲むライブハウスでのお酒は値段以上のスパイスだ。

 

「みあちゃんは好きな音楽のジャンルってなぁ〜に?」

 

「んー……ジャンルにこだわった事はあんまりないなぁ」

 

「へぇ〜!素敵じゃーん!じゃあ好きなバンドの曲とかは〜?」

 

「好きなバンド、ね……聞いてみる?」

 

 

 わたしも酔ってきてるみたいだ、あんまりこういうこと、ひけらかすことしないから。

 

 わたしが好きなバンドの曲(・・・・・・・・)なんて、昔から変わらないよ、ずっと、いつまでも好きなまんまだ。

 

 この時計は止まったままでいい、ってわたしは考えている。だってそうでしょ、忘れることなんて出来ないんだから、覚え続けているんだ。

 

 スマホの設定をイヤホンからスピーカーに変えて、お店に迷惑がかからないぐらいの音量にして、曲を流す。

 

 サブスクリプションに乗っていないこの曲は、でもわたしは覚えている、知っている。聞いている。

 

 出だしはピアノの旋律、ローテンポからスクラッチ*4、すかさず一気にリズム隊が入る、テンポを速く上げたリズムから、次は転調*5。ベースソロからのボーカルの投入。

 

 ヘッドボイス*6からの電子音、裏拍*7に合わせて続くリズムに乗った歌い方。

 

 

「わあ……これは、いい曲ですね……?どうしました、店長?」

 

 PAさんは知らなかったみたい、というより知らない人の方が多いと思う。別にそれに何か思う事はない、だってこの曲はもう、解散したロックバンドの一曲だから。

 

「_________はは、久しぶりに聴いた。音源残ってたのか……この曲」

 

「懐かしいですね先輩、私この曲カバーしたことありますよ、知ってました?」

 

「覚えてるよ、おまえがカバーしてライブしてんの、私も居たし」

 

 廣井ちゃんはともかく、星歌ちゃんも知ってたんだ。

 

 じゃああの時代(とき)の音楽シーンにいた人だね、既視感の正体はそれか。だったら……納得、それと同時に嬉しい、まだこの曲を聴いて何かを思ってくれている人が、いたんだ。

 

「いい曲でしょ?」

 

「みあ、この音源……あ、いや。それは不味いか」

 

「にへへ、実は私音源持ってるんですよ先輩、欲しい?欲しい?」

 

「うぜえ……」

 

「珍しいな、ああでもカバーするなら、持ってるよね」

 

「あははー、いまちょっとぼっちちゃんの気持ちわかってきました〜」

 

 PAさんがいじけちゃった、腕に寄り掛かられたけどその様子がおもしろかったからそのまんまにしてみる。

 

 にしても……ふふ、嬉しいな。わたしが好きなバンドの曲を知ってくれていることが嬉しい、覚えていてくれているのが嬉しい、カバーしてくれてたなんて知らなかった。

 

 聞かせてあげたいな、って思った。絶対に喜ぶから、でもだけど……会えるわけじゃ、ないからね。

 

 少しセンチメンタルな気持ちは、おいしいお酒で無くそう。

 

 ついさっき頼んだレモン酎ハイを半分ぐらい一気に飲んで、全身からアルコールが行き届くのを感じる。

 

「廣井ちゃん、次何頼む……?」

 

「緑ハイのめちゃくちゃ濃いやつ!」

 

 終電には気をつけないとなあ……。

 

 

 

 

 

 

 わたしの終電が近付いてることに他でもない廣井ちゃんが気付いてくれて、解散の流れになる。

 

 まさか廣井ちゃんに指摘されると思わなかった、自分以外のことになると、妙に気配り出来るよね、偶にだけど。

 

 

「たのしかった、また飲もうよ星歌ちゃん、PAさん」

 

「是非〜!ねえ、店長?」

 

「ああ、今度はソレ無しで飲もう」

 

 そうして指を指される地面に転がるつちのこベーシスト廣井ちゃん。言葉になってない口から出る音が終わりを物語っている、絶対焼酎と日本酒飲んだのが原因だよ、本当に大学生みたいな飲み方してるよ。

 

「ぶぇ〜〜歩けね〜!がはは〜〜みあちゃんおぶってぇ〜」

 

「うわぁ、引くなあ」

 

「みあ、ここに捨ててもいいんだぞ。寧ろそうした方が身の為だ」

 

「地球に悪いから拾ってくね」

 

 酒くさい廣井ちゃんをおぶってあげて、星歌ちゃんとPAさんと別れる。姿が見えなくなってすぐに、居酒屋で交換した連絡先のチャットに『最悪廣井のせいで帰れなくなったら直ぐに言ってくれ』と連絡が来た。

 

 優しい人だなあ、それと本当に信用ないなぁ廣井ちゃん。まあこんなになってるんだから、それはそうか。

 

 

「うぅ……ウェ……!」

 

「吐いたら捨てるからね」

 

「う、うぇ〜……さ、流石にしない……」

 

 毎日は面倒くさいから嫌だけれど。

 

 こうして人を介抱するの、嫌いじゃないよ。今わたしがこの人から離れたら絶対この人困るんだろうなあっていう、そんな気持ちがうずうずするから。

 

 それに、やっぱり人に頼られるのは嫌いじゃない、廣井ちゃんみたいに関わっていて気持ちがいいって思える人なら、特にね。

 

 

「みあちゃん……」

 

「なーに?」

 

「音楽しよーよ……みあちゃんの歌声、また聞きたいな……」

 

「ん……いつかね」

 

 今にも眠りそうな声のその言葉になんて返せばいいんだろう、なんて思うより、先にそんな。曖昧な返答で返してしまった。

 

 いつか、なんて。一番失礼だ、歌わないなら歌わない、歌うなら歌うってはっきり、できないから、こんな風に生きているのかな。

 

 ……ああでも、どうしてだろう。

 

 前よりも嫌な気分じゃない、だからかな、少しは前を向いて歩けてるって思いたいな。

 

「わたしの背中で寝ないでよ?」

 

「寝ないよぉ〜今日は一人で帰れるよぉ〜〜!」

 

「なら良かった、警察に届けなくていいね」

 

「って、お〜〜〜〜い!」

 

 

*1
簡単に言うと音楽を制作することの出来るソフトウェアのこと

*2
特殊なケースです

*3
メタルバンドのバラード曲のこと

*4
レコードを前後に擦ると鳴る音

*5
曲の途中でキーが変わること

*6
裏声のこと

*7
1と2と3と4と……って数えた時の“と”の部分の音




5巻楽しみだねええ……。

ところで。ある日突然リョウさんが「旅に……出るから……」って言って旅に出るんだけどどうせいつものでしょって茶化してたら、突然ニュースでYouは何しにアメリカへ?みたいな番組にリョウさんが取り上げられてるのを見た虹夏ちゃんの気持ちを125文字以上で答えようとおm(
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