み〜あろっく 作:幽霊部In
低く見られたり、誤解されがちだけど。
楽曲のリズムに沿う形で演奏するギタリスト、つまりはよくリズムギター或いはサイドギターとも言われる人は曲の完成度を問われる時に、とても重要なポジションだ。
一般的にリードギターが注目を浴びるけれど、リズムギターの役割である伴奏は、音楽を成立させるための重要な土台部分。
ここがしっかりリズムを取って演奏の土台を成立させないと良い音は奏でられない、その点で言えばファンク*1界隈にはリズムギターの名手が沢山いたりする。
彼ら彼女らのリズムの取り方を良く聴いてみると、それによって活性化する音があったり、相乗効果があることがはっきりと分かり易い。
伴奏を弾くのは簡単に見えるかもしれないけれど、曲の中で、テンポを見失わず、的確に弾くのは思うよりは簡単じゃない。
例えばギターが二人いるバンドで、リードギターを担当してる人の方が上手いギタリストかと言われたら、必ずしもそういう訳ではなかったりする。
メロディーを弾くのは得意だけれど、それに意識し過ぎてリズムはあんまり得意じゃないって人も居たりする、逆にリズムを取るのは得意って人もいる。
適当にやって良い訳じゃない。良くボーカルを担当するついでにリズムギターを任せられる人が居るけれど、歌唱に力入れ過ぎてギターの力が低かったりするのを見てとれる。
厳しいかもしれないけれど、それならリズムギターを担当する必要はない。
リードギターをする人がメロディーも弾いて伴奏も弾けば良いだけだ、もちろんその人の重要性と担当する事は多くなるけれど、それならそれで個人技を減らして周りに合わせる事を意識すれば良い。
命名上分かり易いからリード、リズムって分けてるだけで、本来分ける必要も無いし、リードギターの人が伴奏は弾いちゃダメなんて事は全くない。
歌唱力が確かなら、それだけでカリスマ性はついてくる。
少ない例だけれど。楽器が上手く弾けないから声一つを磨き上げて尖らせたってボーカリストはいる。彼らは強いライブパフォーマンスや、ブレない音程や広い音域を強みにしている。
ミックスボイス*2もスクリーム*3も出来ます。芯のある太いチェストボイス*4だけど楽器は弾きません、なんて言われたとして。
それぐらい出来るならってボーカルに集中して欲しい。って理由であえて楽器を持たせないスタイルを使うバンドもあったりする。
だけれどしっかりとしたリズムキープが出来て、ボーカルとしての役割もしっかりと熟す人たちも、負けず劣らずにかっこいい人たちなんだ。
慣れないうちは歌いながら、ついつい手元を確認したり、周りと合わせられているか不安になったりするかもしれないけれど。
それらを克服するようになって、自分の奏でる声に自信を持つようになれば、悪くないミュージシャンの仲間入りだ。
……これはちょっとした小話で、例外だけれど。
ボーカルの担当が被るバンドもいたりする、普段はシンセサイザーを弾いているけど歌いたいから歌うって人もいたりする。*5
そういう異色なバンドマンは、そういう目立つ所に焦点が行きがちだけれど、ちゃんとした演奏能力を持っているのも確か。
「うーん……」
一通り最初から最後まで聞いてみて、わたしは未だに答えを決めかねている。
この曲に、わたしの声は必要なのか?
歌詞は、まぁ思い付く。曲に合うように作れる歌詞は、でもわたしが歌うべきなのか、それともボカロとかの音声合成を使うべきなのか。
そもそも、この曲に声はいるのか?
「困ったな」
今のわたしに解決出来る問題じゃないや。
ここまで完成して、わたしは久しぶりに難関な直面に遭遇した。
この問題を解決出来ない限り、わたしは前に進めない。
☆
世間では新学期のシーズンだ。
この時期の高校生の頃わたしは何かしてたかな?いや、何かしてたけど、別に何か特別なこともなかったし、思い出すようなこともないか。
さて今日は何やら星歌ちゃんから連絡が来て、一言で言うならお昼から空いてる?との事なので、下北沢に降りてSTARRYに向かう事にした。
こういってしまうとちょっとどうかと思うけれど、年中空いていると言われればまあ、空いてはいるので、お誘いが来たら基本行くつもりだ。
だけどなんだろう?飲みの誘いでもなく、ご飯の誘いでもない、ただとりあえず暇だったら手伝って欲しいとの事だけれど。
ひとりちゃんが遂に人見知り拗らせ過ぎてバイト辞めたとか?なんて、それは流石にないか。
「お待たせ」
STARRYに来てみると、何やら結束バンドの子たちもいた、いやベースの子だけ居ないな。
「おお、悪いな突然呼んで」
「別にいーよ、何すれば良いの?」
「あいつらの手伝えるか……?」
そう指差して結束バンドの子たちの方に指を向けた。
わたしが来たことには気付いてないみたいだ、何に集中しているのかな。
そーっとひとりちゃんの隣まで近寄って覗いてみる……あ〜〜〜、なるほど。
「中間テストか」
「ヒョワア!アッアッ、みみみみみ!」
「みあさん?あっ、もしかしてお姉ちゃんが言ってた助っ人って……」
何やら納得したように虹夏ちゃんが頷いてる、星歌ちゃんもうんうん頷いてる。あはは、シンクロしてるー。
「喜多ちゃんだったよね、久しぶり」
「お久しぶりです!っもしかして、家庭教師的なことしてくれるんですか!?」
「そうn「やったぁあ!私、このままじゃ自分の成績も下がるって薄々思ってて!後藤さん全然出来ないから!あっいえ頑張ってるんですけど、ですけど私も人に教えられる程勉強得意じゃないのでそれで____!」」
と、私が何か言うより先に喜多ちゃんが畳み掛けるように言葉を続けた。どうどう、流れ弾に当たったひとりちゃんがどんどん萎れてってるよ。
「でも中間テストなんて、カンニングでもすれば良いと思うけど、解答パクったり」
「みあさんまで
「大丈夫大丈夫、バレても停学ぐらいで済むよ」
「そういう問題ではないのでは?!」
「ほら、ロックらしく行こうよ」
「そんなロックいやだーっ!」
前に気づいたんだけど虹夏ちゃんは答えたことにちゃんと反応してくれるから、ひとりちゃんとは別の理由でいじっていて楽しいよね。
というか廣井ちゃんと同じ扱いされた?え、やだな、わたしあんなにお酒飲まないよ、飲んでもちゃんと終電で帰れるし。
「も、もしかしてみあも
「高校は中退したよ」
「私もですー、仲間ですねー」
「ああ!ダメな大人だった……!」
「えっ、じゃあ私これからも後藤さんに教え続けないといけないんですか?!」
「ウッ……イキテテゴメンナサイ……」
喜多ちゃんの悪意のない言葉がひとりちゃんを再起不能にしてしまった、これが下北沢のツチノコかぁ、飼いたくなるかわいさだ。
なんで中退したかというと、ずっと音楽してたし、色々手付け始めたら時間足りなくなってって感じ。
そんな理由で高校辞めたわたしが力になれる問題なのかな?星歌ちゃんはわたしが賢い風に見えたのかな、それは嬉しいけれど、大学生してた訳でもないし。
まぁ一応見てみるか、頭の良い高校じゃないなら多分教えられるでしょ。
ちょっと席を借りて、ひとりちゃんの前に置かれてある用紙を見る。
高校一年生レベルの数学問題だ、なんだか懐かしいね、ていうかひとりちゃんバカだなぁ〜〜……いや、というか全部答えてるのに全然合ってないの、努力はしてるのわかっちゃうから尚更ひどいような。
これ多分教えるの大変なんだよなあ……まあいいや。
「ひとりちゃんひとりちゃん、人間に戻ろう」
「ハッ……はい」
「式を覚える所から始めよっか、ペン取って?分からなかったら都度聞いてね」
「……あっは、はい……!」
さて人に音楽以外で何かを教えた事は無いけれど、ちょっとたのしい気持ちになって来た、偶にはこういう事するのも良いかもしれない。
さてやるかー、と思ったのと同じぐらいに、固まっていた虹夏ちゃんが驚いた顔でわたしの方に振り向いた。
「って、アレ?!今の流れは出来ない流れだったような?」
「中退したけど高卒認定は取ってるよ、無いと困って有ると便利だったからね、色々」
「ダメじゃない大人だった……!」
「おい、なんで私の方を見るんだ」
「私……解放されたんですか!?」
という訳で数日間、ひとりちゃんに付きっきりで勉強を教えることになった。
結果から言うと、初めて30点代を取れたみたいだけれど、良い感じに教えて30点かあ〜〜〜って天を嘆きたくなった。
余談だけれど。
この数日間わたしは久しぶりに「人にモノを教えるのってこんなに難しいんだ」って気持ちになった。
何故ならひとりちゃんは、なんというか、凄い物覚えが悪い訳ではなかったし、だけど考え過ぎるからか解答も遅くて、そしてそれに焦るせいで解答率も低くて。
喜多ちゃんの気分がよく分かった、なるほどこれは確かに一言言いたくなるなあと思ってしまった。
次は頼られたら断ろう……うん。
わたしにも難しいことがあるんだ、良い経験になった。
☆
「みあちゃ〜〜〜ん!」
わたしが逃げるより先に抱きつかれてしまった、お酒くさい。
ひとりちゃん達の中間テストが終わって数日後、星歌ちゃんから家庭教師代としてお昼を奢ってくれるっていうので、奢ってもらってその流れでついでにSTARRYに来てみたら、何故か廣井ちゃんに抱きつかれているわたしがいます。
「ニートは平日からダラダラ酒飲めて良いよな、消えねぇかな、ていうかみあに抱きつくな」
「ニートじゃないんですけど!お姉ちゃん厳しすぎない?君からも何か言ってやってよ、妹ちゃんは私がここに来ると楽しいよねぇ〜?」
「皆働いてるのにうんざりです、帰ってください」
「うわぁぁぁんみあちゃ〜〜ん!」
「おーよしよし」
虹夏ちゃんの冷め切った瞳にやられた廣井ちゃんがわたしに泣きついてきたので、仕方なく甘やかしてあげた。なんて情けないんだ……ウケる。
「みあもそいつ甘やかさなくていいぞ」
「うーん、でも情けなくてJKにお金を平気で借りるようなダメダメな廣井ちゃん、かわいいし」
「えへへ〜〜〜……えっ?うん……?喜んで良いのかなこれ」
それにしても廣井ちゃんはともかく、ゴミ箱に入ってやどかりぼっちになってしまったひとりちゃんは一体どうしたのかな。
ニャンニャンしだした廣井ちゃんを放って置いて、ひとりちゃんの隣に座って顔色を伺ってみる。
「悩みごと?」
「えっ……あ、文化祭ライブがあって……そっそれで、あの、いつもの箱のライブより多い人前でライブするの怖くて……そっ想像も出来ないし……」
それで悩んでたのか。
ひとりちゃんらしい悩みで、わたしには無かった悩みだ。
バンドをしている時は人前に立つことよりも、自分が出来る演奏の方に焦点があっていて、それ以上に同じバンドメンバーの事を考えていた時の方が多かった。
少し、なんて言うべきか悩む。悩んでる間に、廣井ちゃんが一枚のチケットを取り出して、ひとりちゃんに差し出した。
「ぼっちちゃんこれあげる」
「えっこれ……」
「私の今日のライブチケット、よかったら見に来なよ」
そう言って廣井ちゃんは結束バンドの子たちにもチケットを渡し始めた、ああ見えてもちゃんとしたインディーズバンドだものね。
まあ、チケット渡された喜多ちゃんの目が学生から金を巻き上げる貧乏バンドマンじゃなかったの?みたいな目で廣井ちゃん見てるけど。
……でもそっか、それはそうだ。
わたしがひとりちゃんにしてあげれる事は、やっぱり少ないな。喜ぶべきなんだろうね、だってその方がきっと良い。
自分の問題も片付けられてないわたしに出来る事は、少ない方が良いよ。
「みあちゃんも、見に来てよ」
「わたしも?」
「うん!……だめかな」
今日はもうこの後何かする予定もないし、家に帰ろうかなって思ったんだけれど。
「だめじゃないよ、行く」
差し出されたチケットを手に取ってそう言うと、嬉しそうにしてくれる廣井ちゃん。
なんだろう、そんなに喜んで貰えるとは思ってなかった、横目で見ていた星歌ちゃんも何か気づいたみたいに、一瞬ニヤってしてたし。
アレ、もしかして星歌ちゃんが今日奢ったのって、これが理由?なんて、流石にそれはないか、出来過ぎだよね。
「すっごいライブ見せてあげるぞ〜〜〜!」
すっごいライブか……いいね、うん。
かっこいい廣井ちゃん、見せてみてよ。
本日11/26日、書籍5巻発売日ですけれども、電子書籍などで買いましたか?僕はまだですすいませんツチノコです……。
それから。本日土曜日24時から8話です、原作12話の話で絶対に力入ってる回なので、是非ともリアルタイムで観ましょうね。これを機に楽器弾き始めたり歌ったりしてロックバンドの沼に嵌れ……ッ!
王道のおすすめはDI◯ EN G◯EYです(王道とは#)