【改稿前版】唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション 作:家葉 テイク
戦闘メイドが生徒会書記長と激戦を繰り広げていた、ちょうどその頃──。
「早速困ったな」
生徒会執行部の本拠地としては、生徒会室が存在する部室棟があたる。
しかし、生徒会執行部は役員だけで五〇人はいる大所帯である。活動中その全員が生徒会室に詰めているわけにはいかない。したがって、役職を持たない庶務の生徒は図書棟で様々な書類仕事をやるというのが通例になっている。
「そういえば、私の生徒証が連中に監視されている可能性を考えてなかった。どうしよう
──図書棟は、蔵書の盗難を抑制する為に入場時に生徒証に内臓されている
つまり、正規の方法で図書棟に入場した場合、ピースヘイヴンが侵入したことが生徒会執行部側に速攻でバレてしまうということになる。
「あらぁ、大変そうねぇ。お姉さんにはなーんにも関係ないけど」
が、駅の改札機のような認証システムを前にして立ち往生するピースヘイヴンの横をするっと通り抜けて、
同じ立場だと思っていたピースヘイヴンは目を丸くして、
「ええっ!?
「そもそも私自身の生徒証は書類上卒業した段階で失効してるしぃ。今私が持ってるのは、他の生徒の生徒証を複製したものだから。別にスキャンとかしても私だってバレる道理はないのよん」
「何だそれ、ズルいな……。私にも一枚分けてくれないか? どうせ複数持ってるんだろ?」
「嫌よ。何で私が協力しなきゃいけないの? 自分で何とかしなさいよ」
「えーっ!! ケチ!!」
不満そうに唇を尖らせてぶーぶー言う元ラスボスだが、
「何もできないなら私はさっさと先に行っちゃうわよぉ? 別に侵入がバレたって困らないんだし、盛大に侵入して陽動でもやったらどうかしら」
「そしたらお前が侵入してることも言って力の限り足を引っ張ってやる」
「このカス……!!」
ギリィ……! と奥歯を噛み締める
「ウワーン!! なんとかしてくれよー! なーんーとーかーしーてーくーれーよー!!」
「分かったから敵地で泣き喚くんじゃない生徒会長!!」
「……トレイシーちゃん。何か勘違いしているようだけど、私達は仲間同士じゃないわ。たまたま利害が一致しているから一時的に行動をしているだけで、私たちは敵同士。あまり馴れ合わないでくれるかしら?」
「それは君が、昔の感覚に戻ってしまうからかい?」
「…………、」
「待て待て待て待て! 今のは私が悪かった!!」
一気に冷え込んだ空気のその場を後にしかけた
その様子を見て重いため息を吐いて、
「次はないからね。……でも、アナタならこんな認証システム程度いくらでも通過できるんじゃないの?」
「そうだが、君、それを見て私の霊能の推測材料にしようとしてるだろ」
しれっと言われて、
コメディなノリに隠して、確かに
──都合三八年ほどこの世界で活動していて、それなりに互いのことを認識していた期間も長い二人だが、それでも未だにお互いの霊能についてはほぼ把握できていないと言ってもいい。
既に野望は折れた──と宣言しているピースヘイヴンに対して
「もう計画自体は潰えているので教えてしまっても問題はないのだが、せっかく今まで隠し通してきた霊能なんだ。さっさと教えてしまうのも味気ないだろう?」
「アナタはまたそうやって……」
ピースヘイヴンはそう言って、茶目っ気を出しましたとばかりにウインクをする。
「……それじゃあ、スペアの学生証貸してくれないか?」
「そもそもスペアの学生証なんて今持ってないわよん」
「ちくしょーっ!!」
だん!! と、膝から崩れ落ちるピースヘイヴン。
彼女に憐れみの視線を投げかける
「それじゃ、私は一足先に潜入してるわぁ。トレイシーちゃんは派手に突入して暴れちゃってねぇ」
「え!? おい待て!
必死に呼び止めるが、
そうは言っても実は戻ってきて面倒を見てくれるんじゃないか? とちょっと期待していたピースヘイヴンだったが、三〇秒ほど待っても
俯きがちなその表情は遠目には伺い知れないが──
「……分かった。じゃあもう全部めちゃくちゃにしてやる」
顔を上げたその、いっそコメディに触れ切った不機嫌そうな表情。
直後。
トレイシー=ピースヘイヴンの姿が、
…………。
…………。
それから一〇分ほど後。
「……というわけで、普通に全員ボコった訳なのだが」
「アナタの中でさっきまでの戦闘はカットされてる扱いなのね……」
そうぼやく
隣を歩くピースヘイヴンも、手をパンパンと叩いて一仕事終えた感を演出していた。どちらもこの世界でも有数の実力者である二人には似つかわしくない苦戦の跡を感じさせる姿だったが──
「……アナタ、加減とかできないわけ?」
──そんな二人の惨状も、
「私が居なかったらどう考えても図書棟倒壊してたわよ……?」
大前提として、生徒会執行部の造反勢力は完全壊滅していた。
彼ら彼女らの扱うシキガミクスは一機残らず大破し、本人たちも今も大小さまざまな負傷を負って図書棟の床に転がっていることだろう。──生徒会執行部の半数、およそ二五名ほどが、である。
それでも陰陽師として陰陽術を修め、シキガミクスを行使する能力を持った人間が二五人である。少なくとも、二人なんていうごく少数で対応するならば、ぶつかり方を工夫しない限り手痛い反撃を食らうのは確定のはずである。
だが、彼女達の常識外れはそこに留まらなかった。
「壁は壊す、天井は壊す、床は壊す。……挙句の果てに私の方に敵が大量に雪崩れ込んでくるように仕向ける。いやがらせにしても陰湿すぎないかしらぁ?」
「フンっ。私を見捨てた罰だ」
『メガセンチピード』を殴打のみで粉砕できる、圧倒的な戦闘能力。
それはつまり、平凡な建物の建材など発泡スチロールのように粉々に殴り砕くことができるということである。そしてそれは、屋内というある種の限定された地形戦において、『地形を無視できる』というカードとして機能する。
ピースヘイヴンは、己の霊能を秘匿する為にこのカードをとにかく使い倒した。
結果として、図書棟は倒壊していないのが奇跡というレベルで破壊され尽くしてしまったのだが──
「それに、造反者を叩きのめしたはいいが、この後が問題だ。何せ首謀者の
「うーん、お姉さんてば自業自得以外にかける言葉が見つからないわ」
「お姉さんを自称するならもう少しママみを出せ変態痴女め」
何らかの拘りが見える恨み言を吐き、舌打ちを一つ。
「ともかく、だ。これで後顧の憂いは断った。だが大丈夫なんだろうな?」
──反乱分子の大半は鎮圧できた。だが、あくまでも計画の首謀者は
「君のところのメイドがしくじっていたら、私はこれから高飛びの計画を練らなくちゃならなくなるんだがね」
「それなら心配には及ばないわよん」
冗談めかしたピースヘイヴンに、
「さっき
| 12 ある反逆の終了 |
| >> DEEP GROOVE |
というわけで、紆余曲折ありはしたものの、
「……面倒臭せェ役目を押し付けやがって」
「そうですわよ! 結局ボスは
もっとも、
シキガミクスを破壊して無力化した
「それについては感謝する。ありがとう助かったよ。私が迎撃役を買って出ていたら
「うぐぅ……素直に感謝されると強く出づらいですわ……」
「バーカ。それを狙って殊勝な態度とってんだよ」
速攻で丸め込まれた
「まァ実際のところ、面倒臭せェ役目を押し付けたことについてはもう良いがよ。
「思い当たる節がありすぎて心当たりが絞り切れない……というのが本音だが」
「彼女は『外』の裏社会からの刺客だったんだろう? ならばおそらく、動機の大半は世界の現状……自分が経験してきた苦境を『設定』した私への恨みだろう。正当な憎しみだな」
「…………くっだらねェ」
「サブのプランを裏で走らせているとかって訳じゃなさそうなのは分かった。無粋なことを聞いたな」
「
「わたくしもまだ完全には掴み切ってないんですの……。雰囲気は何となく分かりかけてきたのですが……」
メイド観。人生観に並ぶ難しい話題である。ひょっとしたら、この突然変異メイドのそれを完全に推し量ることなど不可能なのかもしれないと、
「オマエら遅かったな。わたしは、わたしは、ずっと、ずっと待ってたんだぞ」
と、震える声を抑えながら四人を出迎えたのは、留守番係に任命されていた
神様相手の接待ゲームを余儀なくされた
「あー……なんというか、申し訳ございませんわ。カガミサマも、そう怖いばかりの方ではありませんのよ?」
「まァお嬢様は
「だと思ったぞオマエ昔話で良い思いするタイプだもんなー!!」
わーん! と
「さて、本題だ。いよいよ『草薙剣』のコピーに入っていくぞ」
「まずは前提の共有をするか。たまに誤認している読者もいたことだしな」
ピースヘイヴンはそう前置きをしてから、
「『草薙剣』とは『神様』スサノオノミコトの霊能を
その事実を、原作者は語っていく。
「分類としては『神託型』に分類される。怪異や霊魂を機体に封じる『封印型』だと誤解されがちだが、究極的にはスサノオの協力がなくとも運用できるのが『草薙剣』の長所でもあり短所でもあった」
「せめて強奪された時の為のセーフティ機能くらいつけとけよと思わなくもねェが」
「仕方があるまい。下手に認証機能をつければ悪用されるリスクの方が高かったのは
──もちろん、『草薙剣』のセキュリティ的脆弱性については原作でも改善が提案されたことがあった。
たとえば、利用者を登録して強奪のリスクを減らそうというもの。しかし、その施策が検討された直後に発生したのが、利用者候補となった人員の誘拐と成りすまし。霊能というあまりにも自由すぎる概念の前では、下手なセキュリティは却って強奪者に利するという結論がなされたのも無理はなかった。
結局は、霊能によるごり押しが通じないくらいの物理的な障壁で『草薙剣』を守るのが『原作』での結論だったが──結果として、何らかの方法でこの物理的な障壁を貫通して『草薙剣』を奪われてしまったのが現状のウラノツカサである。
「本来、余剰霊気は『常世』という追加領域に退避することで霊気の淀みを解消し、
霊気淀みを解消し、
ただし、この霊能は
人に向ければ、その身から放たれる顕在霊気を丸ごと『常世』に移送されることになる。必然的に、『草薙剣』の太刀を受けた者の霊能はキャンセルされるのだ。
──
「とりあえず、『草薙剣』を再建する」
そんな絶望的な状況において、『ライ研』が用意していた策というのは。
「……その話は前にも聞ーたけど、具体的にどうするんだぞ?
「ああ、わたくしの霊能は
言って、
とん──とそこから水面に波紋が広がるようにして、白紙の表面にイラストが広がっていく。浮かび上がったのは、金髪碧眼の神経質そうな美少女の姿。
「おおっ!? すご!! これが
「ええ! これこそ世界最高の霊能ですわ! 出力できるイラストはわたくしがきちんと完成図までイメージしている必要があるとか、わたくしの画力で描けるものでないといけないとか、多少の制約はありますが……下書きとか線画とかそういうのをすっ飛ばして、どんな場所にも好きな画材でイラストを描くことができるんでしてよ!! しかも一度描いたイラストは時間経過でも解除されません!」
胸を張って力説する
実際、イラストを描くものにしてみれば夢のような霊能であるのは間違いないだろう。戦闘においてはほぼ無意味もいいところな霊能だが。
ただ、それだけに
「凄い……とは思うけど、これがどーやって『草薙剣』の再建に繋がるんだぞ?」
「シキガミクスってのは、
首を傾げる
それは──つまり。
「
「と、とんでもないチート霊能だぞ……」
「此処だけ聞けば、そうかもしれねェが……」
唖然とする
確かに、作中の重要なアイテムを完璧に複製できるという点だけ聞けば
乾いていないペンキなどを使って足場を悪くする応用もあるにはあるが、触れたところからイラストを描くという霊能の性質上、影響を真っ先に受けるのはよほど状況をコントロールできない限り自分になってしまう。引火しやすいシンナー等を発現して火をつけるにしても同様の難点が立ちはだかるし──考えれば考えるほど、戦闘的な意味での伸びしろが見いだせなくなる。
むしろ──。
「察したか? ……この話が下手に広まれば、
「な、なんて難儀な……」
そう考えたら、
(……考えてみれば、コイツにしたら自分を襲ってきたわたしは、『稀有な霊能を狙ってきた怖いヤツ』に映っていたのかもしれないな……)
改めて自分の罪を思い出した
「それに、
だからこそ、ピースヘイヴンから図面を引き出すことが可能(という触れ込み)な
「だからわたくし、最初に
世間話でもするみたいに、
なお、元凶であるピースヘイヴンはどこ吹く風であった。
「そ、その節は……悪かったんだぞ……」
「あ、いえ! そうではなくてですね、あの時『困っていることがあるなら協力しますわ』って言っていたでしょう? アレ、実はちょっと『草薙剣』の図面を持ってるんじゃないかって期待も半分だったのでしてよ。わたくしを襲うということは、わたくしの霊能に何かしら期待している可能性があるということですから……」
「わたくし、レイア様ほど人間ができているわけではありませんの。だからこういう風にわりと現金なことを考えていたりするので……あんまり気にしすぎないでくださいましね」
「……なんていうか、もー、わたし、オマエに一生頭が上がらない気がしてきたぞ……」
「どうして今の流れでそうなるんですのっ!?」
| 一目で全体が木製だと分かるGペン型シキガミクス。 片手で扱える通常サイズだが、持ち手を捻ることで最大で一・五メートル程度まで伸長し、槍のように取り回せる。槍状態では通常の槍に比べるとかなり細身となるが、それでも鉄棒以上の頑強さを誇る。
触れたものの表面にイラストを描いていく能力。 書く動作を行わず、触れた箇所からインクが広がるように描画される。 また、下書きなどを無視していきなり術者のイメージしたイラストの完成形を描画することができる。
材質も無視することができ、ガラスの上に鉛筆画を描いて定着させることも可能。また、乾燥具合や塗料の材質なども実在する限りで自在に設定できる。
元々は物質創造系の能力だったが、本人の趣向でイラスト具現化能力に調整された。 |
| 『 |
|---|
| 攻撃性:40 防護性:40 俊敏性:20 持久性:20 精密性:本人次第 発展性:70 |
そんなこんなで。
ピースヘイヴンが『草薙剣』の設計図を書いている間、暇になった面々は居間でゲームをしている久遠達と合流することに。
『おお、戻ってきましたか
「何だよサメガキ、お前も好かれてんじゃん」
「わたしみたいな小悪党はいつ神様の逆鱗に触れるか分かったもんじゃないから怖いんだぞ……!」
『この小動物感、可愛いと思いませんか?
完全に愛玩動物としての好意であった。
神様の尺度での『好かれている』は、必ずしも人間の尺度で喜ばしいものとは限らない。
非常に気の毒な事になっている
「まぁまぁ。
「あ、姐さん……!」
「そういう格付けになってんのか……」
ちょっと見ない間に久遠を姐さん呼ばわりすることになっている
ちなみに久遠は中学二年生なので、中学三年生の
「よーし、わたくしも混ぜてくださいまし!」
「お! 歓迎するのです
『──フ、果たして人の子に私の牙城が崩せますか──?』
「ゲームでそんな神様アピールされても困るんだぞ」
なんだかんだでワイワイと楽しみつつある(地味に神様にツッコミもできてる)四人を少し離れたところから見守りながら──
「……ああ、ありがとう」
「あんま根詰めすぎんなよ」
現状は、至って順調である。
当初の予定とは違い戦闘なしにピースヘイヴンの協力を取り付けることができた為、ほとんどのメンバーが消耗することなく『草薙剣』複製にこぎつけることができた。
今は肝心の『草薙剣』の機体を作る為の素材がないが、生徒会の権力を使えばそれも労せずこなすことができる。この分ならば、明日には『草薙剣』を製造して
もちろんその後も世界の危機は頻発することになるが、それでもジョーカーを再建できれば『避け得ない世界の終わり』というウラノツカサ全体を覆う閉塞感は打破できる。
しかしそれでも、当事者の心労が完全に消え失せる訳ではない。特に、ピースヘイヴンと
「何か、気になることでもあんのか。わざわざヤツと一緒に行動するなんてよ」
本来であれば、あの場で
お互い腕の立つ使い手だし、霊能の都合上、単独行動を好んでいる
それをおしてピースヘイヴンと行動を共にしたのは──一緒に行動することで霊能を探りたかったという思いももちろんあるにせよ、一番大きい動機は『現在のピースヘイヴンを見定めたい』という気持ちであることに疑う余地はない。
「……俺は、今から二三年前、高校生の時にトラと再会してね」
溜息を吐くみたいに、
「俺は編入組だったからな。当時から既に、トラは生徒会長をやっていた。驚いたよ。生徒会は俺の知っているあの世界と違って、しっかりとした組織として成立していた。まるでフィクションに登場する生徒会みたいだった」
生徒会執行部は、元々モブの集団のような脇役じみた組織だった。精々サブキャラクターのプロフィールに載っている程度の属性。それが生徒会執行部というものだった。
「当時から、既に『草薙剣』は失われていてね。トラは『草薙剣』に変わるセーフティネットを構築しようと模索している段階だった。俺も、二もなく協力を申し出たよ。……あの頃は、……いや何でもない」
聞かずとも、その言葉の続きは
無理もない、と
「それから三年間、俺は生徒会副会長としてトラの右腕をやっていた。霊能は互いに秘密にしていてな。『全力で隠すから当ててみろ』……そういう遊びが好きなヤツなんだ」
しかし──三年後。つまり今から二〇年前、二人に転機が訪れる。それも、これ以上なく悪い転機が。
「高校三年生の秋だった。俺達は、『草薙剣』の代用に成功した。今回のような完璧な複製ではないが、少なくとも『原作』における役割を果たすくらいのことはできるようにはなった」
「それは……スゲェじゃねェか」
「ただ、当時の生徒会役員が欲に目を眩ませてね。完成した代用品を盗もうとした」
──
手にすることができれば、最強の切り札を獲得できるのと同義だ。ウラノツカサから卒業間近で
「…………、」
「もちろん盗難は阻止された。俺とアイツがいるんだ、当然だろう? ……ただ、信じていた仲間の裏切りに遭ったアイツは、そこで絶望した」
悲痛な面持ちで、
痛恨。そう表現するのが相応しいくらいに──己の罪を責めているような表情だった。
「二〇年後の
「……その話を聞く限りじゃあ……」
「ああ。……現状は、ヤツが絶望したとりあえず目先の破滅を防ぐ、言い換えれば『誰かが欲をかけば瓦解する』方針でしかない。ヤツの策が頓挫したことでとりあえず妥協をしているならば、俺の取り越し苦労でしかないが……」
「随分警戒してくれるじゃないか」
そこで。
話に割って入るように、ピースヘイヴンがダイニングテーブルにつく。
予想外の乱入に息が止まる
「設計図は?」
「書き終わったよ! 後は明日、生徒会所有の資材をかき集めればいい。あー、
ピースヘイヴンはそう言ってから、温かな紅茶を一口含み、喉を潤す。
「……警戒するのも無理はないと思っているよ。そう思われても仕方がないだけのことを、してきた自覚はある。詫びるつもりはないが」
寂しそうに言って、ピースヘイヴンは視線を横合いにずらす。
エヴァーグリーンの瞳には楽しそうにゲームに興じる四人の姿が映っていた。
「だが、私は別に
ピースヘイヴンの視線が、
先に視線を落としたのは、
「…………さて! 仕事も終えたし、私もゲームに混ぜてもらおうか!! どれ、負けたヤツが交代するルールで行こうじゃあないか!」
四人でゲームに興じている集団に飛び込んでいくと、ピースヘイヴンは大人げなくコントローラ争奪戦を勃発させていく。
「あ、わたくしもうそろそろ寝ようと思っていたので、代わりにどうぞ……」
「駄目だ! 今日は徹夜でやるぞ!!」
「ええ!? 明日は全校集会ですわよ!? 他にも色々目白押しなのですから、明日に備えて寝ましょうよぉ!」
「フハハハ陰陽術を極めれば睡眠など不要! よって徹夜ゲーム!」
「いやあああこの人精神が明日の講義のことを一切考えない男子大学生になってますわああああ!?」
なんだかんだで仲間の輪の中に入って行って笑うピースヘイヴンの横顔を見て、
「まァ、飲めよ。
「十分だよ」
ぬるくなった紅茶を啜って、
「……今は、それだけでも十分だよ」