【改稿前版】唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション 作:家葉 テイク
「あの、
例によって俵のような形で、お尻を前に向けて肩に担がれながら。
現在、暴走メイドは廊下を全力疾走中。それにしては
「決まってんだろ。ピースヘイヴンの野郎だよ!」
吐き捨てるように言って、
「昨日の段階で、もっと深く考えておくべきだった……!」
その様子にただならぬ非常事態の気配を感じつつ、
「何がですのっ?」
「何故、
それは、『原作』においても提示されている事実だ。
『神様』は全知でも全能でもない。本質的には、ただ圧倒的な出力を誇るだけの『怪異の一種』。それが、この世界においての『神様』だ。
だから、秘されていた事実を知っているならばそれは長い歴史からの推察であったり、何かしらの情報源があったり、さもなくば特有の霊能だったり──とにかく何かしらの『からくり』がある。無条件に何もかもお見通しというわけではない。
そして。
「ヤツの霊能は、詳細じゃねェが概要が分かる程度には
「……そうじゃなかった。
そう、断言した。
「会長の企みが……? あの、
「『神様』に限らず、怪異ってのは存在の維持に霊気を必要とする。だから現世に存在する連中は生物、とりわけ人の霊気を取り込んでいるわけだが……『神様』は特別でな。連中は、大気中に残存している霊気を吸収することで存在を維持することができる」
「それは流石に覚えていますわよっ! それがどうしたんですの?」
「おそらく『神様』は、その生態上霊気の流れをある程度読むことができる」
言われて、
「……これは『原作』では明言されていねェ。『神様』は大抵独自の情報網を持っていたし、本筋に絡みづらい以上、作中でのそれらしい描写も『「
「『裏設定』……」
そもそもの発端となった『霊威簒奪』だって、そもそも裏設定という触れ込みで広まったデマだ。そんな『裏設定』がこの局面に来て重要な判断基準となることには、何か皮肉な因果を感じざるを得ない。
「つまり、
「カガミサマが会長の企みを察知していた理屈は分かりましたわ。でも……それって結局、『
「あァ。
「…………?」
意図が読めずに首を傾げる
「あの時点で周知の事実だった
「え……それって」
「
| 14 縛られた神秘 |
| >> SOOTY DIVINITY |
──
発生する怪異は純粋な霊気の結合によって発生した妖怪、大量の霊気を浴びたことで器物が変質した化生、霊気の奔流によって命を落とした人間の幽霊。強さも種類も状況によるのでまちまちだが、場合によっては大怪異と呼ばれるような強力な個体が発生することもある。
『原作』では、それによるピンチが何度かあったし、敵の黒幕が
「短い付き合いだが……ヤツの人間性の一端くらいは
そんな
大量に怪異を発生させる
「あの野郎はおそらく……自分の思い通りの大妖怪を作り出す為だけに、
「そ、そんなこと、できるわけ!」
反射的に
これを狙ってやろうというのは、原始の海に雷を堕とすだけで海に複雑な脊椎動物を生み出そうと言っているようなものだ。
まさに、神の御業。
しかし。
「できねェと、言い切れるか? 相手はこの世界の法則を作り出した張本人だぞ」
陰陽術を極めた不老。高性能なシキガミクス。確かに確定していたはずの死の回避。
見え隠れしている事象を並べ立てるだけでも、ピースヘイヴンがこの世界でも有数の猛者なのは分かる。それを考えれば──可能性は大いにあると言えるだろう。
そしてこの推論が正しいなら、ピースヘイヴンが出番になっても現れなかったのは
「で、でも望み通りの怪異を生み出せたとしても、怪異は怪異ですわよ? 狙い通りに動くとは限らないのではなくって……?」
「おそらく、『封印型』にでも取り込むつもりだろうな。元を正せば、それが
──シキガミクスは、『怪異の再発』に対する抑止力として発明された。では、それが具体的にどういう機能を以て抑止力とされたのか?
その答えが、『封印型』と呼ばれる
怪異は、特定の条件を満たすことで何かに封印することができる。『神様』をその身に封印している久遠の例がその典型だが──かつては現人神や人柱と呼ばれた『それ』を現代のロボット工学を用いて再現したのが、原初のシキガミクスであった。
原初のシキガミクスは何らかの方法で弱らせた怪異を機体に封印することでその霊能を人間の為に行使する『封印型』が主。現在主流となっている『陰陽師の霊能の使用補助・利便性向上』としての機能は、技術の発展に伴って派生したオプションに過ぎない。
もっとも、ランダムに発生する怪異をリスクを負ってまで封印して運用するより術者の霊能をカスタマイズする方が圧倒的に安価・安全かつ強力ということで、今はほぼ廃れた運用方式なのだが。
この流行り廃りについては、何かと例外の多かった『原作』においても、数えるほどしか例外はなかった。
ただし、その数少ない例外があまりにも有名すぎるせいで、いまいち例外感が薄かったという評もあるのだが──。
「……つまり、
「ああ。そういうことになるだろうな」
それは、
ウラノツカサ高等部一年、
「既存の主人公とは異なる『軸』の獲得。……なるほど、こう表現すりゃあ世界を諦めちまった原作者らしい『決着』じゃねェか」
新たなる主人公の資格の創出。
即ち、かつてあった物語の完全なる放棄。
霊気の流れを感知することによって、
そこで
「…………ってのが
地下鉄の島型ホームのような、太い支柱が幾つか立つばかりのだだっ広い廊下──その片隅でまるで幽霊のように希薄な存在で佇む女に、そう問いかけた。
『──概ね間違いありません。正解と言っていいでしょう』
黒髪の巫女──
そんな『神様』に向かって、
「んで、愛しの久遠をほっぽってこんなところまで来た理由は?
『──安心してください。私は貴方達のどちらにも肩入れするつもりはありませんよ』
『貴方達は、どちらに向かおうとしていますか?』
「……屋上。空から霊気淀みを確認して現場に出向くつもりだ。流石にこの鳴動だけじゃ位置までは分からねェからな」
『手間を省きに来ました。──それでは間に合わなくなる可能性があるので』
そう言って、
『第七体育館。
「……アイツの肩を持つんだか、こっちの肩を持つんだか、はっきりしねェ態度だな」
『言ったはずですよ。私はどちらにも肩入れするつもりはありません、と。──あちらの計画を阻止せず見過ごす以上、それに釣り合う手助けをしているまでです』
言い繕うような言葉のあと、
『──私は、この世界に転生して救われました。己の魂を賭けてもいいと思えるくらいに大事な人との出会いを、永劫に渡って見守っていたいと思えるものを、与えてもらいました。そしてそれは、この世界を──「シキガミクス・レヴォリューション」を作ったあの方への恩です。だから──この世界に生きて初めて幸せになることができた私は、もしもあの方と巡り合えたなら、この力であの方の手助けをすると決めていました』
話の内容は半分も
三〇〇〇年も前に転生した転生者が、人間を辞めて『神様』になってまでこの世に生きている、その熱量。そこに思いを馳せれば──この『神様』がどんなことを考えているかはなんとなく予想できる。
そしてそれは、『神様』として悠久の時を生きる彼女にとっては間違いなく希望だったはずだ。
だが──現状が彼女の望んだ通りでないのは明白だろう。彼女がこの状況でしている『手助け』とは、その力によって恩人の望みを叶えることではなく──自分の意に添わぬ活動をしている恩人の所業を、
そこまでを斟酌して、
「くっだらねェな」
そう、切り捨てた。
「ちょっと
『良いのです、
『少々、長く生きすぎたのかもしれませんね。──こうはなりたくないから、しがらみの類は最低限に抑えたつもりだったのですが』
「……まァ任せとけ。結局、これは生者の世界の問題だからな」
疲れたように漏らす
ひらひらと手を振った
「情報ありがとよ。助かったぜ、
そう言い捨てて、窓の外へと跳び立った。
特に深い意味はないのですが、覚えやすい感じにタイトルを変更しました。気軽にこういう調整ができるのもweb連載のいいところ。