およそ
ボウに叩きつけられたウェンは、ある事を思索していた。
このままでは、カンラの忌み子二人にいいように利用されて殺されるのは目に見えている。
仕掛けるとしたら、件のトンセンか、又はその道中に何かがあるとしか思えない。
となれば、今この場でこちらから攻めるのが上策ではないか。
ユーリイに会話を聞かれる心配はないと言っていたが、それはあり得るだろうと当たりをつけていた。なぜなら、住民を通して聞き耳を立てていても、逆に自分に気付かれる可能性がある。表向きは二人の忌み子は繋がっていないのだから、それは不自然だろう。
やるなら、ここしかない。
後がないとはいえ、そう結論付けられたのは、我ながら不思議に思えていた。
ただ、何故だか、確信があったのだ。
自分の『特色』なら、ボウを倒せると。
ボウの周囲に巡らせた透明の
地面に押し付けられたままのウェンは、その手応えを感じさせたまま立ち上がった。
ボウは、手足をばたつかせ倒れこむ。一言も発せられることなく、もがき苦しんでいた。
自棄気味に放った攻撃だったので、ここまで上手くいくとは思わなかった。
これで確証を得る。
自分の『特色』とは、他者の
偶然か否か、それはウェン自身が忌み子を深く嫌悪する理由とも結びついていた。
ボウを手中に取り、情報を引き出すべく
特色の事を置いても、実態が分かるまで多用は避けるべきだろう。
最終的に、ボウを操作することには成功したが、時間をかけすぎて門前にいるユーリイに不審を抱かれたらまずい。目ぼしい情報を聞き出してひとまず切り上げた。
この特色において注意するべきは、決して無敵ではないという事である。
例えば、
過信は禁物だが、逆に言えば、
単純な
◇
巨大な
紫黒を押さえ込む濃紺の
自らの圧倒的な力を疑わなかったのだろう。クヮンは驚愕に満ちた顔を浮かべた。
他の
しかし、そうはすんなりと勝たせてはくれない。
「これは驚きだ。だが、まだ甘い」
相手の忌み子は、
彼が十全に持つ
ウェンもそれを察し、攻撃に回している
いかにウェンの持つ
負けじと、クヮンへ攻めの勢いを強めるが、どれだけ
このままではジリ貧──。ならば、危険を背負うしかない。
一度、全ての
その後、再び戻して、攻めに転じた分の、相手の防御が緩んだ瞬間と箇所を一点に集中させ一気に斬り込む。
問題は、一度攻撃を食らって無事で済むのかだが、自分の体にある
視界には、僅かにクヮンを捉えている。その姿を睨んだまま、作戦通りに動こうとした瞬間、
標的が、無数の武器に串刺しにされた。
「えっ──?」
ウェンの驚きの声と共に、更に槍や刀、矢の幾十本がクヮンを刺し貫く。
それらが飛んできた方向は、全角度の、あらゆる場所から投げられ、正確無比に全ての凶器が小さな身体へ射る。
ウェンは、紫黒の色から解き放たれ、敵の
少女は、片手の人差し指を斜め上へ向けていた。恐らくあの武器群は、ここへ集まった町民が、ユーリイによって投擲させたものなのだろう。
余計な事をするな、と抗議の目を向けると、
「
都合の良い解釈で彼女は釈明する。
ユーリイの助力なしで倒したかったが仕方がないと踏ん切りをつけ、改めて向き直り、再び
大岩のような塊のそれで今のクヮンを叩きつければ、確実に絶命するだろう。あれほどの
そうなれば、自分の本当の名前は、知られないままになる。
「……」
ウェンは首を振った。もう未練は残さない。
決別するべくここで仕留めると決め、更に
クヮンは多数の武器に遮られる視界の中、片目でそれを見た。
自らの最期を悟り、
笑みを浮かべた。
「そうか……、私の
ここまでの高みだったか……」
体から生えた夥しい程の凶器に、多量の血が滴った。
ウェンは、有無を言わさず、
渾身の力で、
一つの命を潰した感触が、少年の心に刻まれた。