海賊王の子供による海兵譚   作:ふくふくまる

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軽い気持ちで読んでいただけると幸いです。


東の海編
第1話 海賊王の父


 

 

 今世の世界は、あまりにも治安が悪すぎた。

 

 大海賊時代といって時代錯誤の海賊達がうじゃうじゃいるし、ナイフや拳銃を携帯している人も多くいる。

 海軍なんて組織はあるけど、島によっては常駐していないところもあり、刃傷騒ぎがあっても対応が遅れることはざらだ。

 

 おまけに私は、この世界では極悪人と名高い『海賊王』の娘だそうで。一緒に生まれた双子の弟も含め普通に生きていくには、それはもう難易度が高かった。

 

 

 

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「アン!!お前は立派な海兵になれ!!」

「わ、分かりました」

「エースみたいに駄々をこねても無駄じゃ!ワシがきちんと………って、ん?」

 

 ───東の海に位置するドーン島コルボ山の麓にて。

 

 可愛らしい犬の帽子を被った筋骨隆々の老海兵の言葉に、私は逆らうこともなく頷いた。

 それにお爺さん、いやガープさんがきょとんとする。

 

「私の身の上を前提にした場合、もしものことを考えて海兵になっておいた方が良いでしょう。もちろん、ガープさんの後ろ盾は必要ですが………」

 

 え?ていうか、この決定に拒否権なんてあるの?

 

 私が海賊王の娘だと知っているガープさんからの命令だ。彼に命が握られてる限り逆らえるはずがないだろう。それをわざわざ知っていながら私に聞くなんて。ガープさんも人が良いのか悪いのか。

 

 すると彼は「お、おう。そうか」と戸惑ったように頷き、私をまじまじと見つめた。

 

「お前は本当にロジャ……じゃなくて、あやつに似てないのう」

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 転生した先が『海賊王』の子供という。

 人生難易度のかなり高い星のもとに生まれた私は、割と最初から絶望していた。

 

 海賊王ゴールド・ロジャー。

 この世の全てを手に入れたと言われる男であり、処刑間近に財宝を隠したから探せと言って『大海賊時代』を始めた極悪人である。

 

 そんな彼の子供として生まれたものの、運が良かったのか海兵のガープさんによって保護されたり、忙しい彼に代わってコルボ山の女山賊ダダンさんに面倒を見てもらったりして今日まで何とか生き延びている。

 

 ───ガープさんが海軍の軍艦で島から去っていくのを見送った後、私も世話になっているダダンさんの根城へ戻ろうとする。

 

 するとその時、目の前に一人の少年が立ち塞がった。

 

 今世の双子の弟であるエースだ。

 私と同じ海賊王の子供であり、正真正銘血を分けた兄弟である。

 

 彼は遠くから様子を見ていたのか、私を睨み付けて忌々しそうに口を開いた。

 

「アン。お前、海軍に入るのかよ」

「う、うん。ガープさんの命令を拒否できないし………」

 

 そんなエースの問いに曖昧に答えれば、彼は頭をがしがしとかきながら舌打ちをした。

 そして「腰抜け」と吐き捨てて、そそくさと去ってしまう。

 

 手負の獣のような、どこか危うい雰囲気の少年。

 彼は海賊王である父を憎み、間接的に母を殺した海兵も恨んでいた。

 

 自分達の母親は、海賊王の血を引く赤ん坊の私達を世界政府から守るため、20ヶ月もの間その身に宿し続け、出産後に命を落としたのだ。

 

 結果的に公権力によって殺されたと言っても過言ではなく、海賊王の血を根絶やしにするために海軍は関係のない母子も殺しただろう。

 

「……………」

 

 本当は、私だって海兵なんかになりたくない。

 海軍に不信感があるのは変わらないし、出来るならどこか長閑な島に移住して穏やかに過ごしたかった。

 

 でも、それも無理な話。海兵にならずうまく逃げたとして海軍は血眼になって探すだろうし、いつか殺される。

 

 それなら最初から海軍に入った方が良い。

 もしバレてしまっても『英雄ガープによって海軍入りをした娘が、実は海賊王の子供だった』なんて事実、揉み消すために無かったことにされるのだから。

 

 こんな世紀末な時代と世界で海兵をやるだなんて自殺行為以外何物でもないが、こういった生き方くらいしかできなかった。

 

(でも、もしかしたら殉職を偽装して、いずれ海軍から逃げ出したりできるかな。それで身元を隠して、こっそりどこかの島で暮らしたりとか………)

 

 いやでも殉職の偽装ってどうやるんだ………?

 そうぼんやりと考えながら、弟のエースが去っていった方を見つめる。

 

 そんな組織に姉が入ろうとするのだから、罵りたくもなるだろう。おそらく軽蔑しているはずだ。

 

 おまけに、転生して7年。

 それ以前に、そもそも私とエースは壊滅的に馬が合わなかったりもするのだった。

 

 




2022年11月23日 加筆修正
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