海賊王の子供による海兵譚   作:ふくふくまる

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第18話 夢の町レインベース(一部第三者視点)

 

 

 オーナーの名義は違えど、クロコダイルが所持していると思われるレインベースのカジノ『レインディナーズ』

 押し寄せる警備員を軽く払い、気配のする方へ向かえば想像以上に悲惨な光景が広がっていた。

 

「…………サー・クロコダイル、これは一体どういうつもりですか」

 

 鉄の檻にいるスモーカー大佐と麦わらの一味

 バナナワニに襲われているビビ王女

 そしてそれを見つめるクロコダイルと謎の美女

 

 色々言いたいことはあるが、鈍い私でもこれだけは分かる。

 

 一国の王女にしている仕打ちと海兵を檻に捕らえているという状況を見るに、クロコダイルが七武海の権限を超える所業をしているのは明らかだった。

 

 

 

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 イスカ少尉に格好つけたものの、いざクロコダイルを目の前にすると「早まったかもしれない」と後悔してしまう。

 

 見るからに悪者然としたこの男は計算高さとロギア系の能力を以て成り上がった実力者であり、恣意的に昇進し、義理の祖父の威を借りているに過ぎない私にとって荷が重かった。

 こんなことなら海楼石や海水を用意しておけば良かったと準備不足を嘆く。

 

「クロコダイル、やはり貴方はアラバスタ国家転覆を目論んでいるんでしょう。証拠はすでに押さえています」

「どこで聞き付けたのか知らんが、その通りさ。すでにもう遅いがな」

 

 覇気も無いのに圧をかけてくるクロコダイルに冷や汗が流れる。

 

 しかし、これで自供は取れたのだ。こっそり今の会話を盗聴していた貝を証拠として本部に送れば、クロコダイルは七武海から追放されるだろう。

 

 すると突然、クロコダイルは腕の一部を鋭い砂の刃に変えて切り掛かってきた。

 それを何とか避け、武装色の覇気を込めた足で奴の胴体を蹴り上げる。

 

「!? クロコダイルに打撃が通じるの!?」

 

 反動によって瓦礫の中に沈むクロコダイルに檻の中にいるオレンジ髪の少女が驚く、が、それに答える余裕はない。

 向こうは私を殺す気なのだ。

 

 私が先にとどめを刺さないと!私が殺される!

 

 しかしその時、猛烈に嫌な予感がした。

 咄嗟に短剣を構えると、突如私の胴体からにょきりと白い腕が生えて関節技を決めようとしてくる。

 

(って、え!?パラミシア系の能力!?)

 

 構えていた短剣で斬りつければ、それは花びらのように消え去った。

 

「武装色に見聞色か………。Ms.オールサンデー、三世殿の相手を任せても?」

「貴方の計画が夢半ばで頓挫しても良いのなら」

 

 瓦礫から立ち上がり憎々し気に睨み付けてくるクロコダイルに、Ms.オールサンデーと呼ばれた美女が腕に血を流しながら肩をすくめる。

 

 向こうが「やりおる」みたいな顔しているけど、全然やりおっていないのだ。

 武装色と見聞色の覇気を極限まで使うものの、クロコダイルを捕縛できるヴィジョンが全く浮かばない。

 

 ───その時、バナナワニによって襲われるビビ王女が視界に入った。

 咄嗟に助けに行こうとすれば彼女が叫ぶ。

 

「私のことは大丈夫!だからクロコダイルを仕留めて!海兵さん!!」

 

 いや、全然大丈夫じゃないでしょ!

 

 バナナワニの巨大な口が階段ごと飲み込み建物が崩落していく。

 ビビ王女が瓦礫の隙間をぬって逃げていくものの、通路にはまだ大量のバナナワニがおり蠢いている。

 

 私に!覇王色の覇気があれば、覇気によってバナナワニを気絶させられたのに!

 

「どうする、三世。俺の相手をしていると王女様は死んじまうぜ?」

「───言われなくとも。それに貴方がここから逃げたとしても海軍本部が動きます。七武海から追放された貴方は逃げ切れますかね?」

「ほざけ」

 

 するとクロコダイルは体中を砂化して、まるで蜃気楼のように消えていく。

 控えていた女性もいつの間にかその場から去っていた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「ネフェルタリ・ビビ王女ですよね?ご無事ですか?」

「え、ええ、貴方は………」

「海軍本部のモンキー・D・アンです。本部の命令により貴方の捜索とクロコダイルの調査を行なっていました」

 

 ビビ王女に襲い掛かっていたバナナワニを昏倒させたものの、次から次へとバナナワニは入ってくるし、すでに浸水が始まってしまっている。

 腰まで浸かる程水が入ってきているため、早くここから脱出しなければならない。

 

 するとその時、檻の中で顛末を見ていた麦わら帽子の青年──ルフィが「あ!」と声を上げた。

 

「お前、もしかしてアンじゃねえか!久しぶりだなあ!」

「ルフィ、今あの人モンキー・D・アンって言ってたわよね?アンタと同じ苗字ってことは………」

「ああ、俺の姉ちゃんだ」

 

 あっけらかんと言い放つルフィに彼の仲間であろう子達が驚いた顔をする。

 私がガープさんに養子入りしたのは手紙で伝えていたが、彼が正しくそれを認識してくれていたことに少しばかり感心した。

 

「久しぶりだね、ルフィ。貴方とビビ王女の関係を問い詰めたいところだけど………とりあえず今そこから出すよ。皆、檻から離れて」

 

 サーベルに覇気を纏い、檻を一閃する。

 切り裂かれた鉄の檻にルフィの仲間達が目を丸くするものの、スモーカー大佐は慣れた様子でずかずかと近寄って来た。

 

「お前、どうしてここにいる」

「クロコダイルの会社情報を洗い出している時に不透明な銀山の売買があったんです」

 

 ダンスパウダーの製造とクロコダイルの不動産に何か因果関係があると思い、レインベースまでやって来たのだ。

 

「スモーカー大佐もクロコダイルが怪しいと思って、ここにいたんでしょう?連絡が取れなくて困りましたよ」

 

 そう返せば、何故かスモーカー大佐は視線を逸らした。

 

 ふと横目で見れば、ルフィや緑髪の青年が大量のバナナワニを仕留めている。バナナワニはしばらく彼らに任せておいて良さそうだ。

 

「先程のクロコダイルとの会話は貝で録音済みです。これを差し出せば、海軍本部も動くでしょう」

「お前………祖父に似てちゃっかりしてるな」

 

 いや、ガープさんはちゃっかり………してるか。

 微妙な気持ちになりながら苦笑すれば、スモーカー大佐は珍しく「助かった」と礼を言う。

 本当に珍しい。本部で会えばいつもコネ昇進で昇り詰めたボンクラ三世みたいな目で見てくるのに。

 

「ともかく、急いでここから脱出しましょう。浸水がこれ以上始まったら能力者の貴方は動けないですし、何よりビビ王女を安全な場所に避難させないと」

 

 証拠の貝は後程送るとして本部にクロコダイルの裏切りについて連絡しなきゃいけないし、アルバーナにいるイスカ少尉に小電伝虫で情報を共有しなきゃいけないし、ビビ王女やルフィ達から状況を聞き出さなきゃいけないし………。

 あれ?やること多過ぎない?やることが多すぎて、私のキャパが超えそうだ。

 

 するとその時、長鼻の青年の声が耳に飛び込んでくる。

 

「おい、お前ら!やり過ぎだぞ!建物の壁まで破壊してどうする!!」

 

 え?

 

 振り返れば、バナナワニとの戦闘でか何か知らないが建物の壁が破壊されていた。

 そしてそこから大量の水が津波のように押し寄せてくる。

 

 あ、やばいかもしれない。

 

 慌てて私はスモーカー大佐の首根っこを掴み、ビビ王女を抱える。

 そして覚悟を決める暇もなく、私達は水槽の水にあっという間に飲まれていった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 遡ること数分前。

 アン達よりも一足先にカジノから出たクロコダイルはMs.オールサンデー──ニコ・ロビンに告げる。

 

「Ms.オールサンデー、計画変更だ。今すぐアルバーナのコブラ国王のもとへ行くぞ」

「…………あの子達の相手は良いのかしら」

 

 それにクロコダイルは眉を顰める。

 あの地下空間で麦わら一味共々王女を抹殺するつもりであったが、よりにもよってモンキー・D・アンが嗅ぎつけてやって来てしまったのだ。

 

 腐ってもガープの身内。幼少の頃より訓練をこなし、覇気や六式を習得した娘を真正面から相手取るのは些か分が悪い。おまけに………

 

「あの三世が来ちまった時点で国家転覆計画の一部は漏れているだろう。それにアイツのバックにはガープがいる。証拠はなくとも、ガープの血縁である奴の言葉を海軍は無下にはしない」

 

 このままアラバスタ王国を乗っ取ろうにも、アンからの証言によって海軍本部及び世界政府はクロコダイルを国家元首として認めないはずだ。

 

「それじゃあ、もう一つの計画を優先するというわけね?」

「ああ、最終的に兵器さえありゃどうにでもなる。順序を逆にするだけだ。国盗りも、王家滅亡もその後だ」

「ちなみに反乱軍はどうするのかしら」

「予定通り国王軍とぶつければ良い。国が混乱すればするほど、こっちは動きやすいからな」

 

 それにニコ・ロビンは静かに微笑を浮かべる。

 そして彼らは首都アルバーナへ向かって行った。

 

 

 

 

 

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