今日も女山賊ダダンさんのもとで世話になりながら、この過酷なコルボ山で何とか生きている。
エースは度々家を抜け出しているため何をしているか分からないが、相変わらず私と彼との間には距離があった。
直情的でどこか頑固なエースと事なかれ主義の私。
売られた喧嘩は絶対に買うエースとプライドも無く逃げる私。
自分に嘘をつかないエースと周囲の雰囲気でころころ意見を変える私。
そんなものだから情けないことに姉としての威厳はなく、私は完全にエースから舐められていた。
『お前、本当にエースと姉弟なのか?』
たまにダダンさんがそう言ってくるが、これだけ性格が似ていないのだ。言いたくもなるだろう。
とりあえず「はい」と頷いてみせれば、ダダンさんから「澄ました面しやがって」と面白くなさそうに言われる。
実を言うとエースだけでなく、ダダンさんにもハマれてなかったりもした。
少しおっかないところもあるが、気風の良い姉御肌なダダンさんにこうも距離を置かれるのは中々悲しい。
彼らと暮らして、7年目。
まだまだ私は馴染めていなかった。
◇
「村長さん、今日の授業もよろしくお願いします」
「うむ」
所変わって、フーシャ村の村長宅。
昔から私はフーシャ村の村長さんに勉強を教わっていた。
コルボ山の山賊達が村へ下りると面倒なことになるため、日用品などの備品は私が買いに出ている。
その際に、フーシャ村の村長さんから「何か困っていることはないか」とぶっきらぼうに声をかけられ、それならばと週に数回、文字や計算、この世界の歴史や教養を教わるようになったのだ。
前世で培った経験はあるけれど、巷の常識やルールと乖離していないか確認する必要があった。
「───計算は問題ないのう。じゃが、文字のココが間違っておる」
「はい」
村長さんお手製のペーパーテストを受け、間違いを修正する。
この世界の文字は不思議なことに英語と日本語と、また見覚えのない文字が混ざっていた。
それを組み合わせて文章を作るのだが、未だに慣れずこうして間違えてしまう。
「村長さん。この文字も、それから私達の話す言語も世界共通なんでしょうか?」
「ん?そりゃ、そうじゃろう。…………いや、もしかすると、この海の果ての未開の地では違った言語が話されているかもしれんのう」
なるほど。大まかには世界共通だと言われて、そういうものかと納得する。
村長さんや海兵のガープさんによれば、この世界での海面積はかなり広いらしい。
そんな中、どうして言語が統一されているか理解できないが今の私には知る術がなかった。
「ところでアン、エースはどうじゃ。授業にはこんのか」
「誘ってみましたが乗り気ではないようで………」
「…………そうか」
この村長さんの授業が始まる際に、一応エースも誘ってみたのだ。今後生きていくのなら知識として学んだ方が良い、と。
しかしそれも無視されてしまったため何とも言えない。
(エースは将来どうするんだろう)
ガープさんはエースを海兵にさせたがっているが、拒否している。
(あれだけ父親を恨んでいるんだから、『海賊』にはならないだろうけど………)
あの懐かない獣のような少年がこの先どう生きていくのか、ふと気になった。