海賊王の子供による海兵譚   作:ふくふくまる

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第20話 反乱軍と王女の再会

 

 

 

 アルバーナ南門の前に広がる砂漠の中心地。

 そこで私はビビ王女といつの間にか合流していた巨大カルガモのカルーとともに、反乱軍を待ち受けていた。

 そしてルフィ達はビビ王女のふりをして先にアルバーナへ向かっている。

 

「拡声器付きの電伝虫があれば良かったんですが………。もし反乱軍が気付かず侵攻するなら、貴方を抱えて逃げますからね」

「そんなこと、しなくて大丈夫よ」

 

 ビビ王女は震えながら続けた。

 

「リーダーを、反乱軍を止めるためなら、私は死んでもここから動かない」

「───…………」

「あッ!でも貴方は危なくなったらカルーと一緒に逃げて!あれ、海兵に逃げてって言うのは、おかしいわよね……!」

 

 慌てた様子で首を振るビビ王女に思わず苦笑してしまう。

 

 この人の気配は何というか、とても温かい。

 この世界の王族は、もっとこう、高飛車で選民思想の人達が多いのだ。そんな中で彼女のような人がいると思うと一人の海兵として守りたくもなる。

 

 そしてふと、ここに来るまでのことを思い出した。

 

 ここに来るまでチャカという人物に王国軍の中にバロックワークスらしき社員が潜んでいる可能性があると小電伝虫で伝えたのだ。

 すでにバロックワークスの刺青を入れた兵士が複数見つかっているようで、続々と捕縛されているらしい。

 またイスカ少尉はたしぎ曹長と協力して市民の避難を進めており、現在アルバーナの街の外に集められているそうだ。

 

(もし反乱軍が止められなかった場合も考慮して、アルバーナの門に国王軍が配置されているみたいだけど…………)

 

 アルバーナの南門の上に目視では豆粒のような人影しか見えないものの、戦前のひりついた気配を何百と感じる。

 

(もしかしたらあそこの中にバロックワークスの社員が……いるのかな?いないよね?チャカさん頑張って見つけてるって子電伝虫で聞いたし。いや、でもいたらどうしよう。それに反乱軍の中にもきっと社員はいるだろうし………)

 

 そう思いながら不安に思っていると、砂漠の地平線から砂煙が上がるのが見えた。

 

 目視しなくとも気配で分かる。反乱軍が馬に乗ってこちらに向かって来ているのだ。

 その勢いと熱気は津波のように地平線から迫り、空気を震わせるような怒声が埋め尽くす。

 

 狂気。

 

 冷静さを失ったそれが砂煙を立てて、アルバーナへ侵攻しようとする。

 そして次の瞬間、ビビ王女は声を上げた。

 

「───止まりなさい!!反乱軍!!」

 

「止まって!!この戦いは仕組まれてるの!!!」

 

「止まりなさい!!!」

 

 張り裂けそうな声を震わせてビビ王女が叫ぶ。

 目の前に広がる巨大な反乱軍に引くことなく叫ぶ彼女に、私も普段腹から出さない声を頑張って出そうとする。

 

 ───しかしその時、国王軍のいる南門から明確な敵意と大砲が撃たれる音がした。

 

 振り返れば、砲弾が近付いてくる。

 

「………───ッ!」

 

 月歩でそれを足で誘導し、上空へ向かって勢いよく蹴り上げた。

 そして宙に飛んだ砲弾は、まるで花火のように爆発する。

 

 反乱軍は咄嗟にラクダの手綱をひき、立ち止まる。

 上空で放たれた轟音と爆発の光に皆空を見上げる。

 

 辺りは一瞬、静寂に包まれた。

 

 

「止まって!!リーダー!!!」

 

 

 ビビ王女が叫ぶ。

 それに反乱軍の一番先頭にいた、サングラスの男は呆けたように口を開いた。

 

「───お前、ビビか………?」

 

 

 

 ◇

 

 

 

(い、いたーーー!国王軍の中にバロックワークスの社員まだいた!!)

 

 南門に配置されている国王軍の中にバロックワークスの社員(もしくは先走って攻撃をした兵士)がいたことに、未だに心臓がどきどきしている。

 

 砲弾によって奇しくも反乱軍を止められたものの………咄嗟のことで武装色の覇気を完全に纏い切れず、弾をいなした方の足は死ぬ程痛かった。多分折れてるかも………。

 

 そして足を抱えて蹲る私の横で、ビビ王女が反乱軍のリーダーであるコーザさんに説明している。

 

「───って、海兵さん!?足は大丈夫なの!?」

「お、お気になさらず………。それより反乱軍の中にもおそらくバロックワークスの社員がいます。ええと、そこと、そこと、そこにいる人が怪しいです」

 

 ある程度話が終わったのか、蹲る私にビビ王女が目を白黒させて心配する。

 そんな彼女に先程から計画が破綻した焦燥や動揺、また敵意を向けてくる気配を辿り、その者達を指差した。

 

「バロックワークスの社員には、体の一部に分かりやすく刺青が彫られています。今差した人達や………反乱軍にいながらも見覚えのない人達の身体検査をしてみてください」

 

 そう言えば、その周りにいる反乱軍の男達は慌てたように奴らの身包みを剥がし出す。

 もしバロックワークスの社員じゃなかったら本当に申し訳ないが、逃げようとしている時点で確定だろう。

 

 とりあえず足は痛いが、武装色の覇気を纏えば動かせないこともない。

 

「私は先にアルバーナへ向かい、行方不明になっているコブラ国王の捜索をします。なので、ここから別行動になりますが………アルバーナにはまだバロックワークスの社員達が潜んでいる可能性があります。だから、その、ビビ王女のことは………」

「ああ、俺達が死んでも守る」

 

 コーザさんの言葉にほっと安堵する。

 

 コブラ国王の捜索やクロコダイルの捕縛。

 やることが多すぎて、最後までビビ王女を護衛できないのが心残りだが、反乱軍の人達には頑張ってほしい。

 

 その時、子電伝虫がぶるぶると震え出した。

 ちょうど良いタイミングだ。

 

「お疲れ様です。無事反乱軍の説得は成功しまし………」

『アン大佐、大変です!コブラ国王を人質にとったクロコダイルが宮殿へ現れました!また一時間後、宮前広場に巨大な砲弾が……にグァッ!!?』

 

 通信向こうの海兵の言葉が途切れる。

 その瞬間、さっと身体中の血の気が引いた。

 

 そして海兵の声とは違う別の者の声が聞こえてくる。

 

『───やあ、三世』

 

 クロコダイルの声に、頭の中で警戒音が鳴り響いた。

 

 

 

 

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