通信の向こうから、全ての元凶が囁いてきた。
七武海サー・クロコダイル。
クロコダイルに襲われただろう海兵やコブラ国王の安否、そして広間に放たれる砲弾が気になる。
『随分と行動が遅いじゃねえか。反乱軍の説得に時間を割いたせいで、この国の王が死ぬぞ』
───それはおそらく考えられない。
海軍側に国盗りを暴かれてしまった現状で、クロコダイルがコブラ国王を殺すメリットは少ないのだ。
ただ彼が国王を人質にとっているのなら、彼から何か引き出したいのか。まだアラバスタに用があるのかだろう。
「貴方の目的は何ですか?もう、この国を奪うだけが目的では無いのでしょう」
『勘が良いな。だが、もう遅い』
そう言って通信が切れる。
切れた通信に冷や汗が流れた。
そしてすぐにイスカ少尉の子電伝虫に繋ぐ。
「イスカ少尉、市民の避難は?」
『完了しております。また街に潜んでいたビリオンズらしき者達はたしぎ曹長の部隊と粗方一掃し終えました。ただオフィサーエージェント達は見つからず………』
「………分かりました。それでは今から貴方達はたしぎ曹長の部隊とともにアルバーナに残っている国王軍の兵士達を避難させてください」
イスカ少尉の戸惑ったような空気が通信越しにも分かる。
それに構わず、先程宮殿に残していた海兵の言葉を伝えた。
「今から一時間後、宮殿広間に砲撃が放たれます。おそらく大規模になると思われますので、いち早く周辺区域にいる兵士達を避難させ、貴方達は大砲の在処と狙撃手を捜索してください」
『砲撃が……!?アン大佐は!?』
「クロコダイルがコブラ国王を人質にとっているので、その救出に向かいます」
国王軍と反乱軍の戦いは止められたものの、事態は更に悪くなっていく。
おまけに七武海が国盗りを目論んでいたことに加え、首都の破壊なんて仕出かしたら海軍の信用は地に落ちるだろう。
そう考えながら、くるりとビビ王女の方へ振り返る。
「ビビ王女。そういうことですので、ここで避難していてください」
「ちょっと待って………ッ!」
「それでは失礼します」
おそらく折れた右足が痛い。
それに無理矢理武装色の覇気を纏わせ、アルバーナへ駆け出した。
◇
「───で、どうすんだ?」
砂漠の真ん中にて、反乱軍の兵達とこの国の王女ネフェルタリ・ビビが取り残される。
そんな中、反乱軍のリーダーであるコーザが横で小刻みに震えているビビに話しかけた。
「ルフィさんのお姉さんだけあって話を聞かないんだから………!広場に砲撃?そんなの、私達も止めに行くに決まってるでしょう」
「だな。それに俺達の方がこの国に詳しい。大砲のありかもすぐ見つかるだろう」
コーザも、そして後ろに控える反乱軍の兵士達も覚悟が決まったような、それでいて晴れやかな笑みでビビの言葉に頷いてみせた。
「ここは私達の国なのよ。私達が守らなきゃ。───諦めの悪さは、あの人達に教わったんだから!」
反乱軍が鬨の声を上げる。
かつてアラバスタ王国で共に過ごした面々が、巨大カルガモに乗った王女の後を追う。
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『すみません!アン大佐!国王軍の兵士達に説明したところ、自分らも砲撃を止めると言って聞かなくて………!』
「え」
『おまけに反乱軍の方とも合流し、大砲と狙撃手の居場所をアルバーナ中で捜索しています!』
「え、え?」
見聞色の覇気でクロコダイルの気配を探す最中、イスカ少尉からの子電伝虫の通信を取れば、そう報告される。
七武海が仕出かしたことは、あくまで海軍及び世界政府が責任を取らなければならない。そんな思いで国王軍と反乱軍に避難するよう言ったのだが………
「……………」
も、もしかしたら海兵なんて頼りにならないし、自分達で何とかせねばと思われているのだろうか。
アラバスタ王国に対する申し訳なさと宮殿に残した海兵達やコブラ国王の安否、そして広場の砲撃等………。折れた右足よりも、胃が捻りあげられたかのようにきりきりと痛んだ。