海賊王の子供による海兵譚   作:ふくふくまる

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第32話 処刑の真実

 

 

 

「エーース〜〜〜〜ッ!!!助けに来たぞーーーッ!!!」

 

  

 ルフィが空から降ってきた。

 インペルダウンの囚人達を大量に引き連れて。

 しかも運良く凍っていない湾内の海面部分に落ちた。

 

 そんな信じられない光景を私だけでなく、海軍も白髭の海賊達も呆然と見ている。彼の参戦によって海軍側にどのような影響を与えるかは未知数だ。

 

 また彼は私がゴールド・ロジャーの娘でありエースの双子であるという事実を知っている。

 将来ルフィが海兵になった時、私やエースの出自がばれないようフォローさせるつもりでガープさんが伝えたのだ。現状完全に裏目に出ているそれに、ガープさんも同じことを思ったのか頭を抱えている。

 

(でも………もし世間にバレるのであれば、そのきっかけがルフィならマシかもしれない)

 

 エースや私を海賊王の子供だと知りながら慕ってくれた無邪気な彼なら、他の人間にバラされるよりもずっと良い。

 バラすとしても悪意は何一つないだろう。あの子なら仕方ないかと諦められる。

 

(……………あれ?)

 

 けれど意外にもルフィは私の出自について口にする様子はなかった。

 懐から取り出した双眼鏡でルフィや彼の周りを観察していると、革命軍のイワンコフは暴れているし、クロコダイルは白髭に喧嘩を売ってる。

 ルフィは何故か七武海のハンコックと仲良さげに話して……話して………

 

(何で鍵なんか貰ってるんだ………?)

 

 海賊海兵問わず攻撃をしかけ、あまつさえルフィに鍵(おそらくエースの手枷の鍵)を渡している女帝に呆然とする。

 

 え、二人ってどういう……?ていうかこれ戦争が終わったら七武海から外されないか?大丈夫なのか………?

 

「あの、センゴク元帥。報告します」

「何だ今忙しいんだが!?」

「モンキー・D・ルフィの様子を見るに、海賊女帝ハンコックからポートガス・D・エースの手枷の鍵を渡されたようです。念の為手枷の鍵穴部分を封じた方が良いかもしれません」

「次から次へと一体何なんだ!!」

 

 そしてセンゴクさんが小電伝虫でクザンさんを呼ぶ。

 頭をかきながらヒョイっと処刑台にやって来た大将にセンゴクさんの代わりに伝えた。

 

「お忙しいところ申し訳ありません。ポートガス・D・エースの手枷の鍵穴部分を氷で凍らせていただくことはできますか?」

「用心深いね。はいよっと」

 

 鍵穴を埋めるように凍らせたそれに「ありがとうございます」と礼を言う。サカズキさんのマグマで溶接した方が良いと思ったが………あの人だとエースの手ごと溶かしてしまいそうだ。

 簡単に解除できないだろうか、念のため確かめているとクザンさんはまだ残っていたらしく私に声をかけてきた。

 

「君さあ、一体何したわけ?」

「………………何、とは」

 

 上から私とエースを見比べてクザンさんが「んー…」と唸る。センゴクさんは小電伝虫に指示を飛ばしているようで、クザンさんの様子に気付いてないようだった。

 

「……………今回、ポートガス・D・エースの処刑人に選ばれた理由として、アンタを次世代の英雄に担ぎ上げるためのプロパガンダでもあるんだよな」

「政府からはそう聞いています」

「んー…おかしくねえか?あの『英雄』ガープさんの孫にそんな汚れ仕事させるかね?次の英雄として担ぎ上げるための絶好の機会ではあると思うんだが………少なくともエリートにそんなことさせる必要はないんじゃねえの?」

 

 それに私は言葉を失う。

 そんな私に彼は淡々と続けた。

 

「君、もしかして政府に弱みでも握られてるんじゃない?それかガープさんと血が繋がってなくて、生まれに問題あるとか」

 

 「サカズキに聞いたら余計な詮索はするなって言われたよ」と何とでもないように言うクザンさんに立ち尽くす。

 

(確かにそうだ…………)

 

 罪人の処刑は英雄の誕生としての要素として仄暗い。

 世界政府がもし私を『英雄』として担ぎ上げたいのなら、こんなことではなくもっと違ったやり方をするんじゃないだろうか。

 それこそ何も出来ないエースの首を刎ねさせるのではなく、白髭の名のある海賊達を討伐させようと現場に投入させるんじゃ………。

 

 それを思った瞬間、ある可能性に辿り着いて凍りつく。

 

 きっとサカズキさんは私の生まれがスラムだから政府はこんな処刑をやらせるのだと思い、クザンさんをいなしてくれた。

 

 けれど、違う。

 世界政府はもしかして、私が海賊王の娘だと知って、こんなことをやらせているんじゃないだろうか。

 

「…………あらら。アン大佐は分かるけど、どうして火拳まで動揺するんだろうね」

 

 エースの顔も俯いている。

 しかし見聞色の覇気で察知すれば、彼もひどく動揺していた。エースも私と同じ可能性が頭に過ぎったのだろう。

 

「もしかしてさあ、君達恋人同士なんじゃない?」

「………………」

「無視は良くないんじゃないの?まあ、こんなことになって落ち込むのも分かるけど、処刑失敗ってことだけは勘弁してよね」

 

 クザンさんの言葉に否定する気力も湧かない。彼が本当に私達を恋人同士だと勘違いしているのか。それとも真実まで知ってしまっているのか、見聞色の覇気で探ろうとももう思わなかった。

 

 黙り込む私にクザンさんは大きく溜め息を吐いて立ち去る。

 

(私達は、一体どこまで…………)

 

 海賊王の子供だからという理由で、どこまで命を弄ばれるのだろうか。

 そんなに、そんなに罪なんだ。海賊王の血が流れているということが。

 

 その事実に私もエースも打ちのめされてしまった。

 

 するとその時、処刑台から離れた海賊船の方で男達の絶叫が飛んでくる。

 ハッと顔を上げれば、そこには白髭の胸に剣を刺す男──大蜘蛛スクアードの姿があった。

 

「親父………ッ!!」

 

 エースの息が詰まる。

 もうこれ以上、エースを生かしておくことの方が彼を苦しめるんじゃないか。

 

 大蜘蛛スクアードから語られるゴールド・ロジャーにされた仕打ちと、今回の戦争は白髭海賊団とエースの命の引き換えに他海賊は討伐されるという海軍との茶番の詳細。

 

 海軍側にそんな事実はない。

 おそらくセンゴクさん辺りが説得力のある中将以上の部下を使って、嘘のリークをさせたんだろう。

 

 白髭は海賊側の自爆によって致命傷を受けた。

 海軍側の勝利を意味付ける一撃を加えられた。

 

 配信されていた電伝虫はクザンさんによって凍らされ、あと残すはエースの処刑のみとなる。

 

(これだけ世界政府に利用されて尚、私は………)

 

 未だにエースを殺そうとする自分が怖い。海軍に染まりすぎて、上からの命令にもう背けない。戦争によって傷付く海兵達を前に『こんなことをしたくない』と言うことは決して出来なかった。

 それにもう、覚悟は決まっているはずだから。

 

 しかし次の瞬間、マリンフォード中の大気にヒビが割れた。

 白髭の怒りは全て海軍に向いていた。

 

 

 

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