「──ちょッ⋯⋯タ、タンマ!」
「駄ァ目だッ! 昨日、『もっと上げる』つっただろーが!!」
尻尾を引っ掴み、ティガは俺をブン回す。
どうにかして振り
高速で振り回されていては、身動きもヘッタクレもないのが現状だ。
(やばい、頭に血が上って意識が⋯⋯ッ)
景色が歪み始める中、俺は必死に頭を回転させる。
⋯⋯いやまぁ、マジで身体ごと回転させられているワケなんだが。
「いくぜオラァッ!!」
「ちょちょッ、ちょっと待っ──」
俺の身体が、ヌンチャクの様に振り回される。
上から下、右から左。アッチとコッチが物凄い勢いで入れ替わる。
口や鼻からは勿論、耳や目までも大量の血が吹き出しできた。
(──し、死ぬ⋯⋯!!)
どうやら俺は、少しばかり浮かれていたらしい。
“昨日は炎装を使って逃げ切れたから、今日は炎装ナシで逃げ切ってみよう!”
なーんてチャレンジをするには、流石に早過ぎたらしい。
「ほッ!!」
──ドゴオォォォンッッ!!
背中に、大きな衝撃が伝わる。
そりゃあ、ヌンチャクといえば、“叩き付けて”使う武器だ。
ブンブンされている最中で、薄々こうされる事は気付いていたぜ。
⋯⋯勿論、その場合の対策もな。
「──おおっ?♡」
「⋯⋯ったく、殺す気かよ」
炎装形態への移行、これ一択だぜ。
まぁぶっちゃけ、“こうするしか無かった”ってのが正解だが。
⋯⋯さて。済んだ事はいいとして、こっからどうするべきか。
パワープレイでは及ばないのは分かりきってるし、頭を使う必要があるな。
問題なのは、“拘束されている”という点。そして、その“拘束力”がハンパないという点だ。
⋯⋯となると、やるべき事は
「ンググ⋯⋯ッ!!」
「あぁン?」
精一杯、俺は身体を反らせる。
それはもう、地面に付く後頭部が更にめり込んでいく程に。
幸い、ティガは俺の行動を不思議がって追撃をしてこない。
ならもう、やるしかないぜ⋯⋯!!
「うあぁッッ!!」
圧縮したバネを弾く様に、全力で身体を跳ね上がらせる。
その結果、“その場から動けない尻尾”は、“高速で動く身体”に着いてこれず⋯⋯
──ブチンッッ!!
「ヘェ⋯⋯自分から尻尾を
「〜〜ッッてぇ!!」
物凄い激痛が、尻尾の切断面から伝わってくる。
なんなら、転生してから経験した痛みの中でもトップかもしれない。
それに、一向に血が止まる気配も無いが⋯⋯はて?
まぁ今は、余計な事を考えている場合じゃないな。
“炎装形態時に追った深手は、回復が遅い”とだけ覚えおこう。
「──さァ続きを始めるぜ、紅志。
今の度胸があるんなら、もっと上げても良さそうだ」
「⋯⋯ハッ。次はなんだ? 殴り合いか?」
呼吸を整え、俺は逃げる為に姿勢を低く構える。
未だに頭はぐにゃあ状態だし、尻尾もめっちゃ痛いが⋯⋯また捕まっては元も子もない。
大丈夫。昨日は逃げ切れたんだから、今日だって同じ成果を上げらるさ、俺。
「──はい、そこまでぃ!」
「「??」」
唐突に、幼女が俺達の間に割って入る。
ここ最近は“研究”とやらで忙しいらしく、姿を見ていなかったが⋯⋯何事だ?
「そろそろ、修行のレベルを上げよっか。
──ティガ、ゼルは今どこに?」
「ボスなら、今は“蓮”に会いに外してる。⋯⋯何の用だ?」
「いや、少しギルルを借りたくてねー⋯。
まぁ、忙しいなら仕方無い。勝手だけど、ちょっとあのコを呼んできてもらえる?」
「はぁ? メンドクセーから、自分で行けよ。
寝てるアイツを起こすのが、どんだけダリィか知ってんだろ?」
ボリボリと頭を搔きながら、ティガは踵を返す。
何故か、あのデカパーカーの少年に用がある様だが⋯⋯。
“蓮”とかいう人物も、ソイツにわざわざ会いに行く魔王も気になりすぎるぜ。
「あ〜幼女? 色々聞きたいんだが、まず“蓮”ってのは?」
「う〜ん、そうだねぇ。ちょっち面倒な話になるけど─⋯」
⋯─まず、蓮っていうのは君と同じ転生者だね。
強いよ〜? 簡潔に言うなら、“私やゼルと同類”って感じだ。
そんだけ強い彼だから、私が力を失ってからは“色々”やってくれてるんだ。
主に、力を失う前の私がやっていた“アレコレ”だね。
⋯⋯んん? そこも気になるって? 物好きだなぁ。
まぁ、
あ、ここら辺っていうのは、“この星”を含めて“太陽系”の事だね。
──まぁ、細かい事はいいとして。
対オーガにおける、“現状”を君に教えておこう。
前にも話したと思うけど、オーガはこの世界とは別の“他の世界”に、私から奪った力の大半を使用した。
他にも、ここらの銀河系をぐちゃぐちゃにしたり⋯⋯。
いや。正確には、そのぐちゃぐちゃな状態が元の姿なんだけどね。
私の力で、少しづつ“矯正”してたんだけど⋯⋯って、話が逸れちゃったか。
──兎に角、色々カバーする必要があったんだ。
私がやってた色々な事や、オーガが行った悪事の数々をね。
そこで協力してくれたのが、テュラングルを筆頭とした“ドラゴン族”、“転生者”、“魔王軍”だ。
ドラゴン族と一部の転生者達が、“他の世界”で悪さする連中の相手を。蓮が、“ここら辺”の調整を。
そしてゼル達が、この星の調和を取り持ってもらう事になったんだ。
⋯⋯とはいえ、蓮1人に任せる事も出来ないから、今日みたいにゼルが手伝いに行ってるんだ─⋯
「⋯─ん? ちょっと待てよ。
転生者って、俺以外はオーガに操られるんじゃなかったのか?」
「全員では無いって話だよう。
転生者にも“色々”いるからね。──本当に色々、ね」
「⋯⋯⋯⋯。」
「まぁ、私が言うのもなんだけど、転生者達に協力を頼む気はなかったんだけどね〜。
⋯⋯彼らとしては、ケジメのつもりなのかも」
う〜む、事情があるってワケらしいな。
しっかし、俺以外の転生者か。会ってみたいぜ。
同郷ってんなら、色々前世での
「まぁ、小難しい話はまた今度にしよう。今は君の事だ」
「あぁ。⋯⋯それで、俺は今度はギルルにシバかれるのか?」
「う〜ん♪ そうかもねぇ〜??
⋯⋯でもまぁ、紅志好みな展開だと思うよ?」
「俺好み? それって──」
その時、魔力感知に反応が現れる。
ここら一帯での魔力感知は、極端に制限されてしまうが⋯⋯例外もある。
それは、相手側がアホみたいな魔力を持っている場合だ。
コッチの狭い感知の範囲にですら、影響を及ぼす程の⋯⋯
「おい、お望み通り連れてきたぜ?」
「あいよー、サンキュー♪ 今度、手合わせの相手でもしてあげるよ」
「おっ、マジか? 得したぜ。
オラっ! ギルルてめぇ、そろそろ起きろコラッ!」
「──ぅーん⋯⋯」
ティガにおんぶされるギルルは、まだ寝ている様子。
こうして見ると、とても魔王軍幹部とは思えない、幼げのある顔をしているが⋯⋯。
まぁ実際は、めっちゃ強いんだろうな。
「ほ〜ら、起きてギルル!
言う事聞いてくれたら、美味しい物食べせてあげるから」
「⋯⋯ホント? じゃあやる」
幼女の言葉に、ギルルが顔を上げる。
なんか⋯⋯もしかしてだけど、幼女って幹部達を
自分より強いヤツが、言われた事にホイホイ従ってるの、かなりヤなんだが⋯⋯。
「──で、これから何をするんだ?」
「んふふ〜? 実・技・訓・練♪
紅志には、このギルルを相手に試合をしてもらう。
1発でも入れられたら、課題はクリアだ♪」
⋯⋯えっ、なにそれは。
めちゃくちゃ俺好みな訓練じゃねーか!!
やっぱりよぉ、戦う為の修行なら、戦いで強くなった方が良いに決まってるぜ!!
「──じゃあ、細かい事はいいよね?」
幼女の問いに、俺は静かに笑った。
「当然ッ!!」