猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第100話・レベルアップ

「──ちょッ⋯⋯タ、タンマ!」

「駄ァ目だッ! 昨日、『もっと上げる』つっただろーが!!」

 

 尻尾を引っ掴み、ティガは俺をブン回す。

 どうにかして振り(ほど)きたい所だが、相手は馬鹿げた筋力の持ち主。

 高速で振り回されていては、身動きもヘッタクレもないのが現状だ。

(やばい、頭に血が上って意識が⋯⋯ッ)

 景色が歪み始める中、俺は必死に頭を回転させる。 

 ⋯⋯いやまぁ、マジで身体ごと回転させられているワケなんだが。

 

「いくぜオラァッ!!」

「ちょちょッ、ちょっと待っ──」

 

 俺の身体が、ヌンチャクの様に振り回される。

 上から下、右から左。アッチとコッチが物凄い勢いで入れ替わる。

 口や鼻からは勿論、耳や目までも大量の血が吹き出しできた。

(──し、死ぬ⋯⋯!!)

 朦朧(もうろう)としだす意識の中、そんな考えが浮かんでくる。

 どうやら俺は、少しばかり浮かれていたらしい。

 “昨日は炎装を使って逃げ切れたから、今日は炎装ナシで逃げ切ってみよう!”

 なーんてチャレンジをするには、流石に早過ぎたらしい。

 

「ほッ!!」

 

──ドゴオォォォンッッ!!

 

 背中に、大きな衝撃が伝わる。

 そりゃあ、ヌンチャクといえば、“叩き付けて”使う武器だ。

 ブンブンされている最中で、薄々こうされる事は気付いていたぜ。

 ⋯⋯勿論、その場合の対策もな。

「──おおっ?♡」

「⋯⋯ったく、殺す気かよ」

 

 炎装形態への移行、これ一択だぜ。

 まぁぶっちゃけ、“こうするしか無かった”ってのが正解だが。

 ⋯⋯さて。済んだ事はいいとして、こっからどうするべきか。

 パワープレイでは及ばないのは分かりきってるし、頭を使う必要があるな。

 問題なのは、“拘束されている”という点。そして、その“拘束力”がハンパないという点だ。

 ⋯⋯となると、やるべき事は()()()()()()()しかないか。

 

「ンググ⋯⋯ッ!!」

「あぁン?」

 精一杯、俺は身体を反らせる。

 それはもう、地面に付く後頭部が更にめり込んでいく程に。

 幸い、ティガは俺の行動を不思議がって追撃をしてこない。

 ならもう、やるしかないぜ⋯⋯!!

 

「うあぁッッ!!」

 

 圧縮したバネを弾く様に、全力で身体を跳ね上がらせる。

 その結果、“その場から動けない尻尾”は、“高速で動く身体”に着いてこれず⋯⋯

 

──ブチンッッ!!

 

「ヘェ⋯⋯自分から尻尾を千切(ちぎ)るかァ♪」

「〜〜ッッてぇ!!」

 

 物凄い激痛が、尻尾の切断面から伝わってくる。

 なんなら、転生してから経験した痛みの中でもトップかもしれない。

 それに、一向に血が止まる気配も無いが⋯⋯はて?

 まぁ今は、余計な事を考えている場合じゃないな。

 “炎装形態時に追った深手は、回復が遅い”とだけ覚えおこう。

 

「──さァ続きを始めるぜ、紅志。

 今の度胸があるんなら、もっと上げても良さそうだ」

「⋯⋯ハッ。次はなんだ? 殴り合いか?」

 

 呼吸を整え、俺は逃げる為に姿勢を低く構える。

 未だに頭はぐにゃあ状態だし、尻尾もめっちゃ痛いが⋯⋯また捕まっては元も子もない。

 大丈夫。昨日は逃げ切れたんだから、今日だって同じ成果を上げらるさ、俺。

 

「──はい、そこまでぃ!」

「「??」」

 

 唐突に、幼女が俺達の間に割って入る。

 ここ最近は“研究”とやらで忙しいらしく、姿を見ていなかったが⋯⋯何事だ?

 

「そろそろ、修行のレベルを上げよっか。

 ──ティガ、ゼルは今どこに?」

「ボスなら、今は“蓮”に会いに外してる。⋯⋯何の用だ?」

「いや、少しギルルを借りたくてねー⋯。

 まぁ、忙しいなら仕方無い。勝手だけど、ちょっとあのコを呼んできてもらえる?」

「はぁ? メンドクセーから、自分で行けよ。

 寝てるアイツを起こすのが、どんだけダリィか知ってんだろ?」

 

 ボリボリと頭を搔きながら、ティガは踵を返す。

 何故か、あのデカパーカーの少年に用がある様だが⋯⋯。

 “蓮”とかいう人物も、ソイツにわざわざ会いに行く魔王も気になりすぎるぜ。

 

「あ〜幼女? 色々聞きたいんだが、まず“蓮”ってのは?」

「う〜ん、そうだねぇ。ちょっち面倒な話になるけど─⋯」

 

 

 ⋯─まず、蓮っていうのは君と同じ転生者だね。

 強いよ〜? 簡潔に言うなら、“私やゼルと同類”って感じだ。

 そんだけ強い彼だから、私が力を失ってからは“色々”やってくれてるんだ。

 主に、力を失う前の私がやっていた“アレコレ”だね。

 ⋯⋯んん? そこも気になるって? 物好きだなぁ。

 まぁ、()()()()は色々物騒だったからねぇ、それの調整とかだよ。

 あ、ここら辺っていうのは、“この星”を含めて“太陽系”の事だね。

 

 ──まぁ、細かい事はいいとして。

 対オーガにおける、“現状”を君に教えておこう。

 前にも話したと思うけど、オーガはこの世界とは別の“他の世界”に、私から奪った力の大半を使用した。

 黒異種(こくいしゅ)の様な生物を無数に生み出しては、色んな所を攻撃させたりね。

 他にも、ここらの銀河系をぐちゃぐちゃにしたり⋯⋯。

 いや。正確には、そのぐちゃぐちゃな状態が元の姿なんだけどね。

 私の力で、少しづつ“矯正”してたんだけど⋯⋯って、話が逸れちゃったか。

 

 ──兎に角、色々カバーする必要があったんだ。

 私がやってた色々な事や、オーガが行った悪事の数々をね。

 そこで協力してくれたのが、テュラングルを筆頭とした“ドラゴン族”、“転生者”、“魔王軍”だ。

 ドラゴン族と一部の転生者達が、“他の世界”で悪さする連中の相手を。蓮が、“ここら辺”の調整を。

 そしてゼル達が、この星の調和を取り持ってもらう事になったんだ。

 ⋯⋯とはいえ、蓮1人に任せる事も出来ないから、今日みたいにゼルが手伝いに行ってるんだ─⋯

 

 

「⋯─ん? ちょっと待てよ。

 転生者って、俺以外はオーガに操られるんじゃなかったのか?」

「全員では無いって話だよう。

 転生者にも“色々”いるからね。──本当に色々、ね」

「⋯⋯⋯⋯。」

「まぁ、私が言うのもなんだけど、転生者達に協力を頼む気はなかったんだけどね〜。

 ⋯⋯彼らとしては、ケジメのつもりなのかも」

 

 う〜む、事情があるってワケらしいな。

 しっかし、俺以外の転生者か。会ってみたいぜ。

 同郷ってんなら、色々前世での()()()とかもできそうだし。

 

「まぁ、小難しい話はまた今度にしよう。今は君の事だ」

「あぁ。⋯⋯それで、俺は今度はギルルにシバかれるのか?」

「う〜ん♪ そうかもねぇ〜??

 ⋯⋯でもまぁ、紅志好みな展開だと思うよ?」

「俺好み? それって──」

 

 その時、魔力感知に反応が現れる。

 ここら一帯での魔力感知は、極端に制限されてしまうが⋯⋯例外もある。

 それは、相手側がアホみたいな魔力を持っている場合だ。

 コッチの狭い感知の範囲にですら、影響を及ぼす程の⋯⋯

 

「おい、お望み通り連れてきたぜ?」

「あいよー、サンキュー♪ 今度、手合わせの相手でもしてあげるよ」

「おっ、マジか? 得したぜ。

 オラっ! ギルルてめぇ、そろそろ起きろコラッ!」

「──ぅーん⋯⋯」

 

 ティガにおんぶされるギルルは、まだ寝ている様子。

 こうして見ると、とても魔王軍幹部とは思えない、幼げのある顔をしているが⋯⋯。

 まぁ実際は、めっちゃ強いんだろうな。

 

「ほ〜ら、起きてギルル!

 言う事聞いてくれたら、美味しい物食べせてあげるから」

「⋯⋯ホント? じゃあやる」

 

 幼女の言葉に、ギルルが顔を上げる。

 なんか⋯⋯もしかしてだけど、幼女って幹部達を()()()してるのではないのだろうか。

 自分より強いヤツが、言われた事にホイホイ従ってるの、かなりヤなんだが⋯⋯。

 

「──で、これから何をするんだ?」

「んふふ〜? 実・技・訓・練♪ 

 紅志には、このギルルを相手に試合をしてもらう。

 1発でも入れられたら、課題はクリアだ♪」

 

 ⋯⋯えっ、なにそれは。

 めちゃくちゃ俺好みな訓練じゃねーか!!

 やっぱりよぉ、戦う為の修行なら、戦いで強くなった方が良いに決まってるぜ!!

 

「──じゃあ、細かい事はいいよね?」

 

 幼女の問いに、俺は静かに笑った。

 

 

「当然ッ!!」

 

 

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