猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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105話〜106話の間の話となります。


第107話・もう1人の神。

「──ごめんなさい」

 

 帰ってきた幼女は、俺に向かってそう言った。

 直前に、『全ての人は救えなかった。救えたのはごく一部だけだった』という旨の説明を受けた後の事だった。

 

「何人、死んだ⋯⋯?」

「私が把握している限りで、5万人以上。

 ⋯⋯だけど、多分、もっと多くいる」

 

 ⋯⋯分かっていた事だ。

 分かっていて、ちゃんと理解して、覚悟を決めていた筈だった事だ。

 オーガが、俺を匿う幼女を誘い出す為に、民間人に手を出す事は予想出来ていた。

 そして、必ずどこかで犠牲者が出る事も⋯⋯

 

「⋯⋯⋯⋯。」

 

 ⋯⋯⋯⋯⋯。

 

 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。

 

 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯。

 

 

 ⋯⋯本当に、分かっていたのだろうか?

 自分のせいで、自分がこんなにも弱いせいで、無数の犠牲者が出てしまう事を。

 何にも知らない人々が、突如として日常を焼き尽くされる事を。

 何が理解して、だ。何が覚悟を決めて、だ。

 結局俺は、何処かで苦しい思いをする奴らを、直接見る事もせず、こうして“そうなった”と聞くだけだ。

 

 俺は、まるで分かっていなかった。

 何も理解していなかったし、しょうもない覚悟を決めていただけの、約立たずだったんだ。

 ⋯⋯そもそも、覚悟ってなんだよ。

 “他人が苦しんでいるのを、見て見ぬふりをする覚悟”ってか? 笑えるな。

 アリア達が救出を頑張っている中、俺は何してたんだよ。

 せめて、1つでも成果を挙げれたか? 少しでも早くオーガが倒せる様になりでもしたか?

 

 俺は⋯⋯

 

 俺は⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 

「──なんの為に、こんな事を⋯⋯」

 

 俯き、俺は自分の影を見つめる。

 こんなに小さい奴が、一体何を成し得るというんだろうか?

 アリア、ゼル、ティガ、ギルル⋯⋯。こんなにも大きな奴らがいるのに、手が出せないオーガ。

 それを、俺が倒すだって? バカバカしい。

 それを達成するまでに、どれだけの人々が巨大な悪意に飲み込まれるってんだよ。

 

「──紅志、」

「⋯⋯⋯⋯なんだ」

「私は、最善を尽くした。今この瞬間、他の世界で戦っている人達も、きっと最善を尽くしている。

 それでも、助けられなかった生命は数え切れない。

 けどね? “最初から何もしなかった今日”と、“可能な限り命を救ってきた今日”っていうのは、違うんだよ」

 

 うるさい。

 そんな事は分かっている。分かりきっている。

 当然だろう。アリア程の存在が最大限の努力をしてきたんなら、そりゃあ助けられた命は多いんだろうさ。

 だが──

 

「俺は、お前じゃない」

「紅志、君ってコは──。⋯⋯いや、そうだったね。

 君は、最初からそんなだった。

 我儘(わがまま)で、頑固。おまけに、悲観主義者」

「⋯⋯そうだ。その通り──」

「だけど! それと同じくらい、楽観主義者でもある。

 結局の所、それはその時のシュチュエーションによるって感じだ。

 つまり、“ゲンキンな奴”だね♪」

 

 ⋯⋯??

 さっきから、なんだ?

 幼女のテンションが妙だぞ。

 俺を怒らせてやる気を出させる、という訳でも無さそうだが⋯⋯?

 

「そんな君には、“対話よりも対価”だ。

 君が頑張り続けれる様な、取っておきの情報をプレゼントしよう♪」

「⋯⋯とっておき、ね。

 まぁどちらにせよ、オーガを倒さなければ行けないのは事実だし。鍛錬を欠かすつもりは無かったが⋯⋯その情報っていうのは?」

「うん。勿体ぶるのもアレだから言っちゃうね。

 “ある目標”を達成すれば、死者の蘇生が可能なんだよ」

 

 ⋯⋯⋯。

 

 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯。

 

 ⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯うん? なんだって??

 死者の⋯⋯えっ!? 生き返りが可能って事か!?

 おいおいオイオイ!! なんでもっと早くソレを──

 

「『なんでもっと早く言わなかった』⋯⋯と。言いたい気持ちは分かる」

「じゃあ、なんで⋯⋯」

「話すと長くなるからね。

 ⋯⋯あ、『早く言わなかった理由』の方じゃなくて、『死者の蘇生が可能になるまでの説明』の方が、ね。

 折を見て話すつもりだったけど⋯⋯たった今、その時が来たって感じだ」

 

 ⋯⋯ははっ、なんだよコイツ。

 死んでも生き返るってんなら⋯⋯。

 いや、それ以上先は駄目だな。“鍛錬に専念出来た”だなんてのは、誰かが死ぬのが前提になってしまう。

 それは、外道の考え方だ。絶対に許されるものではない。

 ⋯⋯しかし、ゲンキンな奴か。

 全く持って、その通りだったぜ。

 

「──さて、長話に付き合う準備はいい?」

「⋯⋯勿論だ」

「うんっ。じゃあ、始めようか。

 オーガとはまた別の、“もう一人の神”について──⋯」

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