猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

111 / 218
第110話・穏便に済ませよう

「──だから、な? 今回の件については、俺達ゃ関係ねぇんだって」

 

 机に片肘を付き、魔王ゼルは掌に顔を乗せる。

 呆れ気味に溜息を着いた彼は、気怠げな表情を正面の老人に向けた。

 

「関係ないだと? 魔王にも冗談が言えるとは驚きだ。

 神だ、悪魔だ、猛紅竜だなどと、“今の話”をこの私に信じろとでも言いたいのか?」

「あ? なんだよ、分かってんじゃねえか」

「このッ、貴様ァ⋯⋯!!」

 

 ブチ抜かれたアーチ窓を背景に、エスキラの額に青筋が入る。

 次の瞬間には拳を突き出す勢いのエスキラだったが、彼もまた人類のトップの1人。

 一度の歯軋りで感情を抑え込んだ後、彼は改めて魔王へと向き合った。

 

「──ほざくなよ? あれだけの被害を出しておきながら、『人類との戦いは望んでいない』だと?

 そちらから仕掛けてきておいて、黙って見逃すとでも思っているのか⋯⋯!!」

「いや、だから、そもそも俺達は何も──

 ⋯⋯チッ。あぁクソが。下手(したて)になって聞いてりゃあ、テメェこの野郎」

「まぁ〜まぁ! “穏便に済ませよう”って言ったでしょ!

 2人とも子どもじゃないんだから、ね?」

 

 エスキラと魔王の間に、幼女が割って入る。

 長い付き合いがあるゼルはさておき、この場に見合わない存在にエスキラは口を噤んだ。

 酷く困惑する様子のエスキラは、額を覆ってため息をつく。

 魔王と幼女。両者を交互に見比べたエスキラは、静かに煙草へ火を付ける。

 そして1口だけ吸った後に、ようやく口を開いて疑問を投げかけた。

 

「⋯⋯この際、その小娘が何者なのかは問わん。

 だが、魔王ゼルよ。仮に貴様の話が真実であるならば、我々人類に協力を求める理由は何だ?」

「ハッ、やっと“話し合い”ができるな。いいぜ、答えてやる。

 まずは訂正からだ。俺ら(魔王軍)お前ら(人類)が『協力する』ってのは間違いだぜ。

 この話は、あくまでも『休戦』の申し入れだ。

 俺達が事を終わらせるまで、お前らは静か〜にしてくれればいい。ここまでは分かるな?」

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯。⋯⋯⋯⋯むう。

 その話を、私に信用させる程の証拠は?」

「──それに関しては、私から話すよ。

 と言っても、ここでどうこう説明をするよりかは、“実際に見た方が早い”っていう提案な訳だけど」

「実際に⋯⋯? まさか、貴様らの根城に顔を出せとでもいうのか!?」

 

 そのまさかだよ。と、幼女はエスキラに笑みを浮かべる。

 “莫迦莫迦しい”という台詞を放ちそうになるエスキラだったが、それに先んじて魔王が口を開いた。

 

「お前が信用するかしないのか、ぶっちゃけそれはどうでもいい。

 いざとなったら、人類を潰した後に俺らは行動を始めればいいワケだしな。

 ⋯⋯だが、お前も上に立つモンなら分かんだろ?

 互いに手間は取りたくねぇ身だし、ここは一つ“仲良しごっこ”をしようじゃねえの」

「⋯⋯く、見通してくれる」

 

 クールかつ不敵な笑みの魔王に対し、エスキラは煙草を吹かす。

 ちりちりと微かな音だけが聞こえる部屋の中で、魔王と幼女は静かにエスキラの返答を待った。

 

 

 

 

「⋯⋯では、段取りから聞かせて貰おうか──⋯」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。