猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第114話・偽神、愈々

 ──いつからだったか。

 人々が。あれ程までに愛していた人々が、醜い猿の様に見え始めたのは。

 愛せるだけを愛し、与られるだけを与え、護れるだけ護った。

 それでも尚、人間達の欲望は底知れなかった。

 あまつさえ、自身が居なくなったと知れば、他の者に縋る。  

 まるで、その相手が神であるかの如く。

 

 “きっかけ”は、いつでも不意を打ってくるものだ。

 些細な事から始まるそれは、いつしか取り返しの付かない事態にまで発展する。

 

 何をしても、何が起きても、何をされても。

 もう二度と自分の目指した世界が、景色が帰ってくる事はない。

 ならば、もはやそこに必要性は無いのではないだろうか。

 下らないと感じた盤遊びをひっくり返す様に、またやり直せばいいのではないだろうか。

 私は、盤上の駒ではない。私こそが、世界の総ての頂点に立つ存在であるのだ。

 

 ──これで終わりよ──

 

 あぁ、そうだ。

 星廻龍(せいかいりゅう)よ。これで全てが終わるのだ。

 旧(ふる)き世界は、もう必要無い。

 さらばだ、星廻龍。

 

 ⋯⋯さらばだ、アリア。

 

 

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「──オーガ様」

「ン⋯⋯。なんだ?」

 

 虚無空間にて。

 オーガを覚ましたのは、1人の男であった。

 『神将』と名付けられたその存在は、以前アリアに滅せられた者と()()()()である。

 

「先の“浄化”にて、星廻龍アルノヴィアが身を潜める範囲が割り出せました。いかが致しましょう」

「⋯⋯いや。もう暫く様子を見る。下がれ」

「承知致しました」

 

 男が下がった後、オーガは静かに目を瞑る。

 “悪い夢でも見た様だ”と、彼は溜息を零した。

 

「──燗筒(かんとう) 紅志(あかし)」

 

 ふと、アリアと共にいた男の顔が浮かぶ。

 自身がこの星に転生させた人物が、自身に刃向かってくる。

 その事自体は経験があった上、対応策も整えていた。

 だが、それをアリアに打破された現状。明確な命の危機が迫っているオーガは、ごく僅かだが思う所があった。

 

 憤怒か憎悪か。動揺か困惑か。焦燥か。

 はたまた、また別の“何か”であるのか──。

 それはオーガ自身にも分からなかった。

 

 ただ、一つだけ確かだった事がある。

 その“何か”は、どこか心地良く、それでいて苦い様で甘い様で⋯⋯

 遙か昔にも感じた気がする、懐かしい感覚であった事だ。

 

「⋯⋯潮時か」

 

 紅玉が着いた杖を手に、オーガは扉へ手を伸ばす。

 音を立てて開いた扉の向こう側。一寸先も見えぬ暗闇に、オーガはその姿を溶かしてゆく。

 秒針が、ゆっくりと音を立てるのであった──




文字数制限のせいで、書き足す羽目になった⋯⋯(´・ω・`)
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