──いつからだったか。
人々が。あれ程までに愛していた人々が、醜い猿の様に見え始めたのは。
愛せるだけを愛し、与られるだけを与え、護れるだけ護った。
それでも尚、人間達の欲望は底知れなかった。
あまつさえ、自身が居なくなったと知れば、他の者に縋る。
まるで、その相手が神であるかの如く。
“きっかけ”は、いつでも不意を打ってくるものだ。
些細な事から始まるそれは、いつしか取り返しの付かない事態にまで発展する。
何をしても、何が起きても、何をされても。
もう二度と自分の目指した世界が、景色が帰ってくる事はない。
ならば、もはやそこに必要性は無いのではないだろうか。
下らないと感じた盤遊びをひっくり返す様に、またやり直せばいいのではないだろうか。
私は、盤上の駒ではない。私こそが、世界の総ての頂点に立つ存在であるのだ。
──これで終わりよ──
あぁ、そうだ。
星廻龍(せいかいりゅう)よ。これで全てが終わるのだ。
旧(ふる)き世界は、もう必要無い。
さらばだ、星廻龍。
⋯⋯さらばだ、アリア。
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「──オーガ様」
「ン⋯⋯。なんだ?」
虚無空間にて。
オーガを覚ましたのは、1人の男であった。
『神将』と名付けられたその存在は、以前アリアに滅せられた者と
「先の“浄化”にて、星廻龍アルノヴィアが身を潜める範囲が割り出せました。いかが致しましょう」
「⋯⋯いや。もう暫く様子を見る。下がれ」
「承知致しました」
男が下がった後、オーガは静かに目を瞑る。
“悪い夢でも見た様だ”と、彼は溜息を零した。
「──燗筒(かんとう) 紅志(あかし)」
ふと、アリアと共にいた男の顔が浮かぶ。
自身がこの星に転生させた人物が、自身に刃向かってくる。
その事自体は経験があった上、対応策も整えていた。
だが、それをアリアに打破された現状。明確な命の危機が迫っているオーガは、ごく僅かだが思う所があった。
憤怒か憎悪か。動揺か困惑か。焦燥か。
はたまた、また別の“何か”であるのか──。
それはオーガ自身にも分からなかった。
ただ、一つだけ確かだった事がある。
その“何か”は、どこか心地良く、それでいて苦い様で甘い様で⋯⋯
遙か昔にも感じた気がする、懐かしい感覚であった事だ。
「⋯⋯潮時か」
紅玉が着いた杖を手に、オーガは扉へ手を伸ばす。
音を立てて開いた扉の向こう側。一寸先も見えぬ暗闇に、オーガはその姿を溶かしてゆく。
秒針が、ゆっくりと音を立てるのであった──
文字数制限のせいで、書き足す羽目になった⋯⋯(´・ω・`)