猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第115話・最三

 ──“三最”。

 それは、全冒険者⋯⋯引いては全人類の中で、“最も優れた三人”の事を指す。

 【最凶】と【最響】、そして【最強】。

 冒険者達の強さの指標であるギルドランク。その頂点の“更に上”に位置する者こそが、“三最”である。

 それぞれが【最】の座に君臨するに相応しく、またそれぞれが、人の域を超えた力を持っている。

 

「──セイリス、セシルガ。よく来てくれた」

「「⋯⋯⋯⋯。」」

 

 ──そして、本日。

 冒険者ギルドの最高責任者(エスキラ)により、2名の三最が招集された。

 片方が男性、片方が女性であるその2名は、静かに用意されたソファに腰を下ろす。

 落ち着いた様子の両者に飲み物が提供され、それぞれが一口した頃。

 俯き気味だったエスキラは、重々しく口を開いた。

  

「⋯⋯話は聞いているな?」

「『魔王軍との休戦協定』、でしょう?」

 

 2人の内、女性が反応する。

 【最響】の異名で知られる彼女の名は、セイリス・アルクラーン。澄んだ青の瞳を持つ、三最の内で唯一の女性である。

 圧倒的な実力も()る事ながら、絶世の美女と称される美貌の持ち主だ。

 

「はっきり言って、信じる信じないの話では無いわね。馬鹿げているとしか⋯⋯」

 

 虹色の光沢を持つ黒髪を揺らし、セイリスは首を振る。

 溜息をする様に放たれた台詞は、エスキラにとって否定のしようが無い程に正しかった。

 “魔王が直接会いに来た”。そして、“人類との戦闘は望んでいないと言った”⋯⋯と。

 一体、誰がその言葉を信じようか? 

 “魔王は敵”。それが、全人類の絶対の共通意識なのである。

 ましてや、日々魔物や魔族と戦っている冒険者。その筆頭達が、こんな荒唐無稽な話など信じる筈も無い。

 エスキラは、何から説明するべきか悩んだ挙句、何から説明するべきか決まらなかったので、兎に角、己が体験した事の全てを話す事にした。

 

 

 

「⋯──それで。つまり、私達は“何もしない”と?」

 

 話を聞いたセイリスは、片眉を吊り上げ困惑を(あらわ)にする。

 終始無言であった隣の男も、話の内容を耳にして表情を変えていた。

 

「“邪魔をするな”。それが、魔王の真意だろう。

 冒険者達を統括する私としては、横腹を思い切り殴り付けてやりたい所だが──」

「⋯⋯もし、その偽神だとかの話が真実だとしたら、それに対処出来るのは魔王達だけ。

 邪魔をした所で、人類が被るリスクが大き過ぎると。そんなとこかしら?」

「⋯⋯ハァ。その通りだ。全くどうしたものか⋯⋯」

 

 要点をセイリスに言われ、エスキラは顔を覆った。

 冒険者とは、人々の守護が存在意義である。

 それを踏まえての魔王の提案。そして、それの信頼性を確かめる為に必要な事⋯⋯。

 押しても引いても、進んでも戻っても。

 エスキラにとっては、どの道ハイリスクには変わりの無い事であった。

 

「──いいんじゃねぇか? 別に」

 

 その時、男が唐突に口を開いた。

 名をセシルガ・ネストールというその男は、一見すると中年。強いて言うなら、青年寄りの中年男性である。

 良く整った顔立ちに、焦げ茶で短めの髪。加えて、同じくブラウンの瞳。

 パッと見では、特段 覇気の様なモノは感じられない男だが、同室にいる他2名は体感していた。

 ──“やはりこの男だ”と。

 

「⋯⋯セシルガ。君の意見は?」

「意見も何もねぇよ。さっきの話の信憑性を確かめるには、魔王ン所にいかなきゃなんねぇんだろ?

 ⋯⋯で、真実かどうか分からない限りは、コッチも動くに動けんと。

 だとしたら、もう行くしかなくねぇか?」

「なに⋯⋯?」

「いざとなったら、敵陣のど真ん中だろうがやるだけだぜ」

「ば、莫迦かね。君という男は──。

 ⋯⋯いや、そうだな。それだけの胆力は、私にも必要なのだろう」

 

 呆れ気味に、それでいて、愉快げに。エスキラは笑う。

 つられる様に、セシルガとセイリスも獰猛な笑みを浮かべてみせた。

 【最響】セイリス・アルクラーン。そして、

 

 

 ──【最強】セシルガ・ネストール。

 人類の最高峰達が、それぞれの武器を担ぐ。

 後に、『最悪の人魔会議』と呼ばれる事態の、その発端が始まった瞬間である。

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