──ズドンッッ!!
重い打撃音と共に、小山程もある大岩が崩壊する。
まだまだ精度は甘いが、『技として完成した代物』を見て、俺は思わず震えた。
木っ端微塵になった大岩から50m以上離れた場所で、自身の拳を見つめる。
酷使に次ぐ酷使のせいで、俺の腕は拳から肘にかけてボロボロになっていた。
炎装も使えない程に魔力が減っているが⋯⋯まぁ今回の『成果』に比べれば、この程度どうって事無いか。
⋯⋯自分で云うのもなんだが、俺ってもしかしてスジがいいのかもしれない。
「──魔力での格闘について学び、その日の夜にはモノにする⋯⋯。成程、アリアが気に入るだけあるぜ」
「ティガ。⋯⋯起こしちまったか?」
「バカ。俺ら魔族に睡眠は必要ねぇんだよ。ギルルみてぇな“特別”もいるが、アイツもこの程度じゃ起きねぇ」
「そうか。ならよかった」
ティガの話を聞き、俺は胸を撫で下ろす。
実は、今回の鍛錬は俺が勝手にやっていた事だった。
以前、幼女に“ちゃんと休め”的な事を言われたのは覚えているんだが、どうもジッとしているのがもどかしくてなぁ。
こうして魔王城を抜け出して、ギルルとの鍛錬場まで来たワケだ。
「格闘での魔力の使い方。本来は、もっと無意識に⋯⋯
言っちまえば、本能的に使える様になんのがベストなんだがな」
「そうなのか?」
「──例えば、目の前に高速で何かが飛んできたら、身体は勝手に瞼を閉じる。
そんな感覚で、防御の際には自動的に被弾部位へと魔力が集中して硬化する。
攻撃の際には、相手をブン殴る拳に魔力が集中する⋯⋯的な感じで、な?」
「要は、慣れって事だな。実践あるのみだぜ」
地面に座り、俺は水分を補給する。
アインへルムが魔法で作ってくれた水なので、飲むだけで魔力の回復まで出来る優れモノだ。
魔力の質が高いと、使う魔法の魔力密度も自然と上がるらしいが、こりゃあいい。
⋯⋯どれ、もういっちょいっとくか。
「フッ!」
「お、炎装か。随分、蒼い箇所が増えたらしいな」
「あぁ。鍛錬の成果が、目に見えて出てきてるぜ。
⋯⋯ただ、魔力の消耗が大きくなったのが難点だが」
ソレに関しては、アインへルムや幼女に今度相談しよう。
特に幼女には、以前に炎装の燃費の悪さを指摘されたし。
その時に、自分の周囲から魔力が逃げ出せなくなる技術がどうこうとか聞かされたしな。
「──さてと、」
集中。ひたすらに集中だ。
魔力感知を最大にし、自分だけに使う。それを意識しろ。
血液、筋肉、そして神経⋯⋯。身体の中を巡る魔力を、くまなく感じ取るんだ。
例えるなら“氣”。
物質的な形状ではなく、もっと深く、広く、濃く──。
魔力の“氣”を感じ取れ。
「⋯⋯⋯⋯。」
強く踏み込み、拳を引く。
それと同時に、魔力を拳へと凝縮。
拳に、炎装が蒼く煌めいた、その刹那──
「ハァッ!!」
一撃。
巨大な拳の形をしたソレは、音速を超えて真っ直ぐと進む。
進路上にあった大岩5つを貫き砕いた後に、静かに消失した。
「⋯⋯⋯⋯く、」
拳を突き出した体勢のまま、俺は固まる。
それは、ある予感が原因であった。
数時間に渡って、同じ動作を続けていた俺の身体。
ティガが来る直前の一撃と、それを大きく上回った今の一撃⋯⋯。
僅かに回復した事実に甘んじ、加減を誤って放ってしまった、『今の技』。
限界に近かった肉体にとって、それは自傷行為にも等しく⋯⋯
──バギンッッッ!!
予感は的中。
派手な音を立てて、身体が
全身の骨が折れる音に続いて、あらゆる箇所から激しい流血を確認する。
体内の魔力の殆どは、血液と共に血管を流れている。
ならば、それを高速で動かす事は、同時に血液を動かす事にも直結する。
まだ体内の魔力操作が未熟である俺は、血管の強度など頭に無くこのザマ⋯⋯という事らしい。
「オイオイ、まさか死んでぇねえよな?」
「⋯⋯っは」
「あン?」
「──ハハハッ! ちょーーいてぇーーッ!!」
あーッ。全く馬鹿みてな痛さだぜ。
⋯⋯でも、不快じゃあない。
──技の威力に、肉体がついて来れない──
最高じゃねえか。上等だぜ。
使えこなせる様になるまで、こんな痛み何度でも味わってやるよ。
⋯⋯成長の実感。どんだけ素敵なんだよ、全く。
「ったく。バカだぜ、紅志」
「すまん。つい楽しくなっちまって⋯⋯」
「ハッ、お前ってヤツぁよお。最高だぜ」
「ハハハ⋯⋯」
ティガに担がれながら、俺は笑う。
最低限ではあるが、技が完成した事実に。
魔法ではなく、金属生成ではなく、炎装の様な身体強化ではなく、『俺の技』だ。
ホント、いい歳こいてテンション上がっちまうぜ。
⋯⋯技の名、か。どうしたもんか。
“拳を飛ばす”から『
“貫き砕く”事から『
ここは思い切って『
あぁッ。楽しいったらありゃしない。
まだまだ強くなってやるぜ⋯⋯!!