猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第123話・答え

「──俺の中のグレイドラゴンが⋯⋯?」

 

 幼女から、グレンデルの思惑を聞かされた。  

 彼の狙いは、所謂(いわゆる)「意識の一本化」だったという。

 「別々の意識」であっても、結局それが存在するのは1つの脳。

 俺の行動と思考に対して、向こうが全く同じ思考をしない限りは、“完璧な全力”は出せないのだという。  

 つまり、俺が今まで100%の力で行っていたつもりの事も、実際は70%や50%⋯⋯

 いや本当は、たった20%程の結果だったのかもしれない⋯⋯と、そういう事らしい。

 

「今後の鍛錬で、君と君の中のコの意識を同調させる⋯⋯

 若しくは、肉体ごと上手く分離する策を練っていたんだけど⋯⋯」

「⋯⋯あの子は、もう、いないのか?」

「いや。消えてしまった訳ではないし、いつかは戻ってくるのは確実だ。けれど⋯⋯」

「それが、いつになるかは分からない?」

 幼女は、首を縦に振る。

 ⋯⋯グレンデルの事も、あの子の事も、思う事は多い。

 だが、無事に戻ってくる。その事実さえあるのであれば、俺が立ち止まっている場合ではない筈だ。

 

「──じゃ、あの子が帰ってくるまで、俺は俺のやるべき事をやるとするか。

 ギルルとの鍛錬の途中だった事だし、戻るとするぜ」

「⋯⋯!! やっぱり、君はそういう所が素敵だ♪」

「ハッ。まぁそうかもな〜」

 

 ⋯⋯心配は、要らない。あの子は強い。

 俺は知っている。俺に真の危機が迫った時、助けてくれたのが、いつだってあの子だった事を。

 この世界に来た日も、ガムナマールの群れと戦った日も、テュラングルと戦った日も。

 

 あの子が、生半可だった俺の代わりになってくれた。

 あの子が、未熟だった俺に力の使い方を教えてくれた。

 

 ⋯⋯グレンデルが言っていた事も、今では分かる。

 人間の俺に代わって、魔物のあの子が危機を遠ざけてくれていたんだ。

 必要な時に、不必要な手加減をしない様、俺が感じる筈の負の感情を背負ってくれた⋯⋯。

 そう。いつだって、あの子が──

 

「⋯⋯フッ」

 

 お前を信じてる。

 だから、いつか絶対に帰ってこい。

 

 

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「──行くぞ」

 

 エスキラは、自信に満ちた表情で踏み出す。

 魔王城へ赴く。それについては、無論の事 緊張している。

 だがしかし。彼の背後には、人類の最強格が続いている。

 ただでさえ、その立ち姿だけで迫真の闘気を放つ者達だが、今日は更に特別だ。

 

 【最強】セシルガ・ネストール。

 彼が背に担ぐのは、一振の太刀である。

 上質、高貴、至高、究極⋯⋯。如何なる言葉を並べても、その一振を表すには届かない。

 木の鞘と鋼の刃で完成されたその太刀は、“頑丈”で“鋭利”である事だけが取り柄だ。

 全長も、人斬りの為としては大きいが、巨大な魔物を想定すると少々物足りない様にも見える。

 だが、十分であった。

 人類最強の男が扱い、壊れないという性能だけで──。

 

 【最響】セイリス・アルクラーン。

 彼女が背に担ぐのは、まるでギターの様な道具である。

 白を基本としたソレには、薄い桃色の装飾が細部に施され、一つの芸術品程の美しさを誇っていた。

 光に反射して華やかに煌めくその道具は、()()()()()()

 それの本質は、味方への支援だ。⋯⋯が、魔物を殴打する武器としても使うのが彼女である──。

 

 【最強】セシルガ・ネストール。

 彼が身に付けるのは、適当そのものの防具だ。

 そこら辺の村でも購入できる様な、魔物のなめし革と質の悪い鉄で造られた⋯⋯兎に角、安物である。

 本人としては、『俺の場合、クエストなんて直ぐに終わるしなぁ』という思考の元で装備するモノだ。

 無論だが、彼は強い。強いので、大抵の戦闘は被弾無く終わる事になる。

 逆に“そうでは無い戦闘”では、一撃掠る程度で防具など意味をなさない程なので、結局は安物でいいという事らしい──。

 

 【最響】セイリス・アルクラーン。

 彼女が身に纏うのは、美麗かつ可憐な装備である。

 肩、肘、膝⋯⋯。それぞれの部位をピンポイントで防御しつつ、可動部位には布を使う事で機動力を確保。

 防具としての役目を果たしつつ、それでいて見張るのが、それが放つ圧倒的な絢爛(けんらん)さである。

 白の薄い布地、薄い緋色の布地、更に桃色の布地。

 三種の布が重なる事で見事なコントラストを生み出し、更には各関節を守る防具までもが美しい。

 ロゼ色のプレートにはツタの模様が描かれ、ただでさえ目眩がする程の美貌であるセイリスを引き立てていた──。 

 

「なぁ、白厳。危ねぇからお前は残ってろよ」

「いいんです いいんです。戦いに行く訳ではないんですから」

「そう入ってもねぇ。私としても心配よ? ホント」

「お2人共⋯⋯。いやはや、深い心遣い感謝します。

 ですが、私が必要となる場面は、確実にあるでしょう」

 

 相も変わらずスーツと中折帽を身に付けた男は、丁寧に断りを入れる。

 大城(おおしろ) 白厳(はくげん)。日本人である。

 彼の最たる点は、人心の掌握⋯⋯というと人聞きが悪いが、一つ間違いないのは、「多く」に好かれている点である。

 それが、この男が魔王城に余裕すら持って赴ける所以だ。

 

 

 

 つまるところ、その「多く」の中に含まれるのは、“人間だけではない”⋯⋯という訳なのであった。

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