猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第125話・飛拳 Ⅰ

「──行くぜ」

 

 アインの、その一言。

 そこから、戦いは始まった。

 

「ッ!」    

 

 俺は息を呑む。  

 瞬き1回にも満たない間に、アインが目の前まで接近していたからだ。

 踏み込みすら大して行わかなったというのに、恐ろしい脚力である。

 ⋯⋯だが、見える。

 凄まじい速度の前蹴りだが、今なら余裕を持って躱せる。

 十分に反応出来るし、存分に思考も出来る⋯⋯!!

 

「⋯⋯、」

 

 左脚を軸に身体を逸らし、前蹴りを躱す。

 そう⋯⋯まるで、飛んできた紙飛行機を避ける様に。

 あぁ、本当に、色んな事がよく感じ取れる。

 

「油断すんな!」

「ん、」

 

 アインは、突き出した右脚を即座に地に付ける。

 前蹴りという攻撃から、大股の踏み込みという状態に変更した様だ。

 ⋯⋯となると、俺とアインの位置からして次に打ってくるのは──

「フッ!」

「おっと、」

 

 やはり、前掃腿(それ)か。

 本来は大きな予備動作が必要な技だが、流石は魔王幹部。

 動きの切り替わり時に、全く()()が見えないぜ。

 

──バチンッッ!!

 

 足の薙ぎ払いをバク転で回避しつつ、尻尾を打ち込む。

 防御や回避をして、そこから反撃に転じる⋯⋯。それでは間に合わない。

 同時だ。“守”と“攻”を同時にこなさなければ、アインには届かない。

 ⋯⋯いや、正確には──

 

「んっんー、惜しいなァ」

 

 それでも、届くかどうかだ。

 事実、アイツは俺の尻尾を片手で受け止めた様だし。

 だが、焦りは無い。俺だって、今が当たる程アインが(ぬる)い相手では無い事を知っている。

 蒼炎をモノにして尚、俺にとってアインは格上だ。

(──俺の戦い方は、()()()()()()()。なら、やるべき事は一つしかないな)

 徹底した接近戦の継続。そこに“勝ち筋”がある筈だ。

 断言できる。特に、アインの様な格上が相手ならば。

 

「──ッ!」

 

 低く、深く。俺は肉薄する。

 顎の真下に地面を感じる程の低位置。そこから、俺は次の一手を繰り出すべく動いた。

 左の拳を固め、勢いそのままに突っ込み、そして、

 

「ぬァッ!」

 

 掛け声と共に、()()()()()()

 左拳を引く動きで注意を逸らし、右肩の突進(タックル)──。

 ⋯⋯はは。流石に、擦りくらいするかと思ってたぜ。

 

「ホォ、面白い技だな?」

 

 俺の右肩を、アインは右膝で受け止める。

 思い切り衝突したというのに、彼は片足でその場に留まっていた。体幹が強い⋯⋯という次元の話では無いな。

 まぁ問題無い。攻撃に使ったのは肩だけで、どっちの拳もまだフリーだ。

 

「せいッ」

「お、」

 

 ガクンと、アインの身体が傾く。

 俺が右肩を右側に動かし、アインの右膝を弾いたからだ。

 これで、即座には距離を取れなくなった筈。隙ありだ。

(──と、云うワケでもないか)

 アインが弾かれた勢いを利用し、その場で回転。

 それと同時に、俺はアインの回転と同じ方向・同じ速度で動く。

 僅かに目を見開くアインに、俺はすかさず拳を突き出した。

 

「⋯⋯いいねェ!」

 

 片足立ちの状態で、アインは上体を後ろに逸らす。

 躱されてしまったが、俺は気分良よく口角を上げた。

 恐らく先程のアインは、俺に弾かれた力を利用して回し蹴りを打つ気だった。⋯⋯と、俺は察知した。

 以前のギルルと戦闘では、アインのフィギュアスケーターみたいな回転蹴りが印象的だったからな。

 仮に打たれてしまっては厄介だし、自ら動いて回転を潰す手を打ったってワケだ。

 まぁ賭けだったが、上手く読みが当たってよかったぜ。

 そんな不安定な体勢では、回避する動きにも制限があるだろうしな⋯⋯!!

 

「──あぁン?」

 

 金属生成を行い、アインの全身を固定する。

 眉を(ひそ)め、あからさまに嫌そうな顔を浮かべるアイン。

 フフ。いざ攻撃を食らうとなると、魔王幹部でも──

 

「フンッ!!」

「⋯⋯!?」

 

 アインを覆っていた金属が、粉々に破壊される。

 最大硬度で拘束したつもりだったんだが⋯⋯。金翔竜の時といい、自信無くすぜ。

 

「⋯⋯一手、遅れたな?」

 

 拘束を解除したアインは、大きくバックステップする。

 不敵な笑みを浮かべる彼に対して、俺は静かに口を開いた。

 

「──いや、こっからだ」

「⋯⋯ホォ?」

「⋯⋯⋯⋯。」

 

 ──俺は、“物理格闘が主軸”だ。

 だからこそ、相手は接近戦での俺に注意を払う。   

 特に、俺が徹底的して距離を詰めてくる場合なら、きっとこう考えるだろう。

 

『近距離では厄介だ』。

『距離を取った方が有利に戦える』。

『距離が取れれば、厄介では無くなる』。

 

 ⋯⋯俺は、相手の慢心や油断を狙い、それを利用する事で、どんな強敵だろうが倒してきた。

 

「⋯⋯!!」

 

 ()()()()()アインの表情が変わる。

(拘束は無理だった。だが“時間稼ぎ”は出来たぜ⋯⋯!!)

 そう。こうして、拳に最大魔力を溜める時間が確保出来た。

 

「はぁッ!!」

 

 飛拳炸裂。

 アインに向けて、高速の蒼炎の魔力弾を撃ち出した。

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