猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

129 / 218
第128話・外から。

「⋯⋯⋯⋯。」

 

 只管(ひたすら)に暗く、只管に静かな場所で、俺は意識を集中させる。

 全身に揺らめく蒼炎、やや荒い息遣い、心臓の鼓動音──。

 あらゆる音が喧騒となる程の静寂の中、俺は集中を最大限まで研ぎ澄ましていた。

 

「ッ!!!」

 

 その瞬間、俺は姿勢を大きく下げる。

 回避による残像が消えぬうちに、背後から小さな魔力弾が発射された。

 超高速で直進するソレは、先程まで上半身があった空間を通過。

 遅れてやってきた突風が俺の背中を叩き、魔力弾の計り知れない威力を物語った。

 

「──3連続で回避に成功。上々だな」

 

 その声と共に、周囲の暗闇が()()()

 上部から差し込む光の先から、ティガが下へと降りてきた。

 

「いいな、この鍛錬。またやりたいぜ」

「おう、いいぞ。いつでも付き合ってやる」

 

 額の汗を拭い、俺は腰を下ろす。

 極度の緊張から解放された俺は、空を仰いで深呼吸をした。

 先程まで行っていた鍛錬は、魔力感知の強化を目的としたモノである。

 視覚と聴覚、ついでに嗅覚を遮断する空間の中で、いつ・どこから来るか分からない魔力弾を感知して避ける⋯⋯。

 単純だが、コレが中々やり甲斐がある鍛錬だ。

 

「次やる時ァ、魔力弾の速度を倍にして、サイズも同じくらいデカくしとくぜ」

「ハハ、勘弁してくれ。まだ死にたくねーよ」

 

 軽く談笑を交わし、ティガと別れる。

 ここ最近は、幹部が相手の鍛錬がめっきり減った気がする。

 その代わり、以前に幼女とアインから受けた“現状の炎装の完全覚醒”の課題に重きを置いている状態だ。

 内容としては至ってシンプルで、“一日中 炎装形態をキープする”というものだ。

 端的な話が、肺活量を上げる訓練と同じだろうか。

 兎に角、息を止め続ける。兎に角、肺を拡張する。

 そんな感じで、炎装を使用し続ける事で、炎装の能力を生み出す体内器官を育成するのが目的だ。

 ⋯⋯まぁ現状としては、炎装の継続は半日も持たないんだが。

 

「スゥ⋯⋯」

 

 前に金翔竜を倒した草原まで歩き、俺は息を吸う。

 やはり、ここは良い場所だ。風と草がそよぐ音だけが、心地良く耳に入ってくる。

(──炎装の完全覚醒。それを達成するには、“魔力の循環”が要となる筈⋯⋯

 しかし、一体どうやれば真似が出来るんだ?

 空気中の魔力を吸収するなんて、考えた事も無かったな)

 思考を巡らせ、風に吹かれる。

 現段階の俺が難儀している点は、体外での魔力操作についてであった。

 “内から外”ならば分かる。魔法や炎装がソレだからだ。

 ⋯⋯だが、“外から内”となると話は別だ。

 あまり気にした事は無かったが、そういえば魔法で使用する魔力は自前だったか。

 炎装もそうだが、使用する魔力は自分のを、というのが当たり前だった手前、かなり参ってしまうな。

 

「ンン〜⋯」

 

 ゴロリと地面に寝転がり、俺は唸る。

 だが、空を見上げて流れる雲を眺めていると、不思議と気分が落ち着いた。

 ⋯⋯それにしも、ポカポカのいい陽気だ。

 こうして草原に寝転がってると、リーゼノールで虎徹と出会った日を思い出すな。

 昼寝して、起きたらアイツがいた。

 あぁ。そういえば、持ってきていた果物を殆ど食われたんだっけ? ハハ、懐かしいなぁ。

 

「⋯⋯⋯⋯。」

 

 ──眠くなってきたな。

 思えば、いつからか熟睡なんてしていなかった気がする。

 色々な事が身に迫って、責任感を背負って、たまにソレに耐えて──。寝れない夜もあったっけ。

 初めの頃⋯⋯。転生してからしばらくは、逆によく寝ていたっけな。

 なぁんにも頑張る気なんて無かったし、着の身着のまま自由に生きていたなぁ。

 ⋯⋯やれやれ。幼女もオーガも、いがみ合ってないで一緒に昼寝でもすればいいのに。

 分かり合えないものなのかねぇ、やっぱり。

 

「⋯⋯ん、」

 

 まぁ俺は俺のやる事をやるだけだな。

 ただ、今だけは少し寝たい。

 そう、気ままに。好きな様に。

 

 (──結局、あの日の虎徹ってどこから来たんだ? 

 今は、元気にやれているんだろうか?)

 睡魔に身を委ねる直前、ふと疑問が浮かんでくる。

 まぁありがちだな。虎徹なら、元気にやってる。

 それでOKだ。

 

 おやすみ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。