猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第131話・人と魔と

 ──“それ”は、突然であった。

 ⋯⋯いや。やはり、突然では無かったかもしれない。

 例の草原で自己鍛錬に俺が励んでいると、ティガとアインが何処かへ高速で飛んでいったからな。

 ある意味では、それが“予兆”だったとも言える。

 だが⋯⋯。あぁ、やっぱり、突然起こった出来事だったな。

 ただでさえ魔力濃度の高い魔王の領域に、途轍もなく強い魔力反応が現れたのは。

 その内、2つはティガとアインの反応である事は分かる。

 しかし、彼ら以外にも複数人⋯⋯。特に、ティガ達と同じく2つの強大な魔力反応が感じられた。

 そして、その4人の魔力のせいで認識しずらいが、更に2つの魔力反応ある様だ。

 

「──お〜い、紅志〜」

 

 魔力感知に意識を絞っていると、幼女が此方へ歩いて来る。

 ティガ達の件を彼女に伝えると、どうやらそれに関して俺に用事があるとの事。

 状況の詳細を尋ねてみると、幼女は困った様な表情で説明を始めた。

 

「ホラ⋯⋯前にさ、面倒事を避ける為に、人類の偉い人と話してくるって言ったじゃない?

 そこでさ、私は一つその“偉い人”に提案したんだよ。

 コッチがソッチを信頼させる証拠を見せるってね」

「成程。今日はそのソッチ側が証拠を見に来た訳か。

 ⋯⋯となると、ティガ達は彼らの出迎えをしに?」

「まぁ、そうだねぇ。──ちょっぴり、睨み合いになってるっぽいけど」

「あぁ⋯⋯通りで、向こうで魔力が荒れてんのね⋯⋯」

「そうそう。もーホント、勘弁して欲しいよ」

 

 やれやれといった様子で、幼女は溜息をつく。

 まぁそりゃあそうだろうな。平和的に話を進める為の第1歩が、睨み合いだなんて。

 しかも、コッチ側からは魔王幹部でもバトルに積極的な2人が出迎えに行ってしまっている。

 まぁそもそも、最初から最後まで穏便に行けるとも思えないが⋯⋯出だしからソレだと、俺も気が滅入るぜ。

 

「──兎に角だ。今日は重要な会議をするんだけど、紅志にも参加して欲しいんだ。

 まぁ、参加するだけで、特に何かをして欲しいって訳でもないから気楽にいこう♪」

 

 ⋯⋯気楽に、ねぇ。どうだかな。

 こういうシチュエーション、苦手なタイプなんだよな俺。

 まぁサラリーマン時代は、重要な会議に呼ばれる程の立ち位置では無かったのはあるが⋯⋯

 それでも、プレッシャーには弱い点は自覚しているぜ。

 こう、自分より“上”の相手複数人に見られているとな、テンパっちまうんだよな。

 ⋯⋯ええい。ここは覚悟決めろ、燗筒(かんとう) 紅志(あかし)

 出来るだけ口を開かず、極力動かず、徹底して空気になるのだ。

 

「──会議の内容は、大きく2つ。

 オーガについての情報共有。今後の都市襲撃の可能性と、それに対して対応策の提案だ」

「⋯⋯ん? さっきの俺達の話を信用させる証拠ってのは、いつ出すんだ?」

「うふふん。そんなモノ、実際には無いよ」

「⋯⋯なに?」

 

 眉を(ひそ)める俺に、幼女は説明を始める。

 そして彼女の台詞の真意を知った時、俺は思わず笑ってしまっていた。

 その表情は呆れも含んでいたが、それ以上に驚愕があった。

 幼女の人類への信頼。それに対する驚愕が。

 

「──俺が言うのもなんだが、どうしてそこまで人間を信じれるんだ?

 必ずしも、幼女の言った通りになるとは限らないだろ?」

「いいや、大丈夫だよ。人間に関しては、一応紅志より詳しいつもりだからね♪」

 俺の疑問に、幼女は自信ありげに答える。

 大きな波乱を予感する中、俺は魔王城へと足を踏み入れる。

 魔王城・最上階、【狡知の間】と呼ばれるそこには、魔王ゼルが部屋の最奥にて座していた。

 そして、彼の右後方。手を後ろで組んで姿勢よく起立するのは、久し振りに見たグレンデルであった。

 

「──グレンデル」

「⋯⋯なんだ?」

「今更だが、アンタに礼を言っておきたかった。ありがとう」

「⋯⋯⋯⋯。⋯⋯フン」

 

 静かに視線を逸らし、グレンデルは鼻を鳴らす。

 どうやら、いつも通りの様子だ。いや、安心したぜ。

 ⋯⋯さて。アイツについても色々思案したい所だが、それは今ではない。

 今から行う会議では、人類の今後⋯⋯。ひいては、俺の今後に途方も無く大きな影響がある筈だ。

 意識を最大限に集中させて望まなくてはな──⋯

 

 

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「──2人で出迎えだなんて、中々気が利くじゃない。

 わざわざ倒しに行く手間が省けて助かったわ」

「あ"? こちとら3、4万年の喧嘩不足で死にそーなんだわ。やるかコラ、あァ?」

 

 ゼルやアリアが準備を整えた一方。

 アリアの予想通り、セイリスとティガは睨み合っていた。

 ティガの後方で腕を組んでいるアインヘルムも、目の前の人間達へ向けて殺気を放つ。

 老人が1人。中年が1人。そして、黒いスーツ姿の男が1人──。

 

「よォ! 誰かと思ったら、白厳じゃねえか!」

「なにィ? マジか、お前まで来てたのかよ!!」

「──お久しぶりです、お二人共。ゼルさんは相変わらずで?」

「「おうよ!!」」

 

 唐突に、ティガとアインヘルムの態度と表情が変わる。

 まるで、親しい友人とでもあったかの様なリアクションに、セイリスやエスキラは呆気に取られた。

 

「な⋯⋯白厳! 君は魔王の手下とまでも知人なのかね!?」

「えぇ。公表は避けていましたが⋯⋯この際です。

 彼らの紹介でもしながら、魔王城へと向かいましょうか」

「あ、貴方って人は⋯⋯困った人ね本当に」

「フフフ、恐縮です」

 

 それぞれがそれぞれの反応を見せる中、唯一動じていない人物がいた。

 人類最強の称号を持つ男、セシルガ・ネストールである。

 少なからず、白厳の“友人関係”に驚いているのはあるが、それも言葉として出る程ではない。

 何故なら、どんなイレギュラーも彼にとっては大抵がでどうにかなる話だからである。

 無論、実力行使に至る場合もそうだが、今回の様な場合でも、今までの人生経験から動じる事は少ないのだ。

 

「──テメェとは、初めて会うな。名前は?」

「セシルガだ。セシルガ・ネストール。一応、【最強】って呼ばれてる。

 まぁ、今の所は人類の範疇に収まってるぜ。この称号はな」

 

 アインヘルムの質問に、セシルガはクセを付けて返答する。

 

 ──今の所は人類の範疇に収まっている──

 

 まるで、いずれは魔族をも超えるとでも言う様なその台詞。

 意図を理解したアインヘルムとティガは、静かに殺気を放った。

 侮辱こそされていないものの、セシルガの台詞はティガ達の怒りを買ったのである。

 当然だ。自らが心の底から信用し、絶対的な忠誠を持った存在、魔族最強の男・魔王ゼル。

 彼に対して目の前の人間の男は、“その内 超える”と言うニュアンスの台詞を放ったのだ。

 

「──ハッ。この場に来たのが、グレンデルじゃなくて良かったぜ。

 もしもアイツが今のを聞いていたら、確実に誰かしら死んでいただろうな」

「違ぇねぇ。⋯⋯だが、俺達の目的は、テメェら出迎えだ。

 余計な手間を掛けるつもりはねぇ。着いてこい」

 

 同時に手を煽り、ティガとアインへルムは背を向ける。

 次の瞬間、セシルガ達は青の結界に包まれ、結界ごと浮かび上がる。

 ティガとアインヘルムを先頭に、人類達は魔王城へと高速で向かうのであった。

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