猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第134話・人魔会議②

 兎にも角にも、全員が持ち場に戻った。

 かなり危ない場面だったが、やはりハクゲンという男の影響力は大きい様だ。

 人類側は勿論の事だが、此方側まで彼の言葉が響いているとなると⋯⋯

 幼女が彼の名を知っていた点も加味して、ある程度の付き合いがあると考えていいだろう。

 

「──話を戻そう。まずは、セイリスさんの意見についてだ。

 初めに、冒険者を含めて、人類に戦力の提供を依頼するつもりは無い。と言う事から伝えておくね」

「なに? そりゃねぇぜ。俺ぁやる気マンマンで──」

「セシルガ、アンタちょっと黙ってなさい」

「⋯⋯話を続けるね──⋯」

 

 

 

 ⋯──実を言うと、戦力については幾らか余裕があるんだ。

 最近、新種の魔物として扱われている「黒異種」っているでしょう?

 アレの正体は、オーガが作り出した偽物の生命体なんだ。

 姿や形はオーガ次第の連中だけど、直近では特に人型の黒異種が成長を見せている。

 そして先の襲撃で、人型の黒異種⋯⋯。まぁ、()()(なら)って、仮に黒異人(コクト)と呼ぶ事にするけど⋯⋯

 その黒異人(コクト)の上位種と思われる個体を、複数目撃したんだ。

 それぞれに差はあるようだったけれど、最低でも一体で街一つを壊滅される程の連中だったね。

 

 ⋯⋯まぁ、ここだけ聞けば厄介な奴らなんだけど、そいつらの“成り立ち”を考えれば、案外コッチに有利なんだ。

 上位黒異人(コクト)は、どうやら他の黒異種を吸収できる能力があるらしくてね。

 私が戦った中では、通常の黒異種10〜15万体分の強さを持っている奴が1番だったかな。

 兎に角、上位黒異人(コクト)っていうのは、少数精鋭を主軸とした連中らしいんだ。

 勿論、一般の冒険者では敵わないけど、“私の仲間”からすれば、多少質が高かろうが数が相手よりやり易い訳だ。

 

 ──で。

 ここからが本題なんだけど、この星の全体にいる黒異種は、せいぜい3万体程度。星全体の黒異種を吸収した所で、上位黒異人(コクト)まで到達しないんだ。

 そこで私が目をつけたのが⋯⋯まぁ、信じるかどうかは任せるけど、こことは別の「世界」の戦場だ。

 オーガが生み出した黒異種っていうのは、幾千幾万、数多ある「世界」で暴れ回っているからね。

 それで様子を確認してみたら、いくつかの「世界」で黒異種による被害が減少している傾向があったんだ。

 つまりは、私達の「世界」⋯⋯もっといえば、この星にピンポイントで戦力を“凝縮”したという訳だ。

 その結果、他の「世界」で戦っていた仲間達に、大きな余裕が生まれてね。

 手が空いたから、この星に戻ってこれる様になったんだ──⋯

 

 

 

「⋯──ここまではオーケー? 何か聞きたい事はある?」

 

 話を終えた幼女は、両手を腰に当てて尋ねる。

 セイリスは困った表情をして、セシルガは頭をボリボリと掻いて口をへの字に曲げる。

 人類のトップ達が話の内容に困惑する中、白厳は飄々とした表情のままだ。

 まるで、始めから今の話を知っていたかの様な──。

 と、俺の疑念が顔に浮かぶより早く、エスキラが静かに溜息を零して口を開いた。

 

「⋯⋯まぁ、今更だ。『別の世界』や『仲間』とやらの話を聞く気は無い。──ただ、」

「ただ?」

「本当に、我々人類による協力の必要性は皆無と?

 ⋯⋯いや。こう言ってはなんだが、我々もオーガに返すべき大きな借りがある。

 セイリス君の意見も分かるが、私としては寧ろ闘志を燃やしてる者の方が多いと思っている。

 彼らとしても、此度の雪辱を果たすべく戦いたい筈。この戦いでは、大いに役に立つと考えているのだが⋯⋯」

 

 エスキラの台詞に、会議室は静かになる。

 まぁ彼の言い分は分かる。借りを返したいという点でやる気が出るのは、俺もそうだしな。

 ⋯⋯ただし、だ。セシルガの様に実力が伴っているならいいとして、ただ単にやる気があるってだけじゃなぁ。

 闘志が高まっていようが、実力がそれに比例する訳では無いし、前回の襲撃の二の舞って可能性がなぁ。

 

「──1つ、提案があります」

 

 静寂を破り、ハグゲンが手を挙げる。

 視線が集まる中、彼は一呼吸置いてから話を始めた。

 

「次に襲撃が予想される範囲。そこの地図上の縦と横に等間隔で線を引き、各ブロック毎に分けるのです。

 その上で、縦線と横線の交差地点にそれぞれ人員を配置。

 彼らには魔力感知の展開に専念して頂き、反応があれば、反応の強さに合わた戦力を投入する⋯⋯と。そんな所で如何でしょうか?

 相手次第では、冒険者達でも対応可能な場合がありますし、士気の高さを活かせるかもしれません」

 ハクゲンの提案に、幼女が頷く。

 対してエスキラは、疑問があるのか唇を固めながら腕を組んだ。

 彼の様子に気付いたハクゲンは、その要因を本人に尋ねる。

 少し考える素振りを見せた後、エスキラはハクゲンへと向いた。

 

「──それなら、街の周囲に人手を集めておけばいいのでは?

 襲撃時に重要なのは、如何に迅速な対応が可能なのかで⋯⋯」

「いえ。それでは、全ての街に人員を置くことになります。

 流石に人手が足りなくなってしまう。それに、前回の襲撃で襲われたのは、街だけでなく街道や路線も被害に遭いましたし⋯⋯

 各ブロックに安定した戦力供給を求めるなら、それぞれの中間地点に人員を配置すべきです」

「ううむ⋯⋯そうか、成程」

「──強いて言うなら、“襲撃を受ける可能性”・“襲撃を受けた場合の被害レベル”・“現地冒険者の実力”等で街や村を区別。

 それらを内包するブロックの“想定被害レベル”に応じた戦力を、魔力感知の展開者の傍に配置する等の対応策も練れます」

 

 っはぁ〜⋯⋯頭良さそうな事いってんなぁ。

 まぁ個人的には、エスキラの言い分が正しい気がするが。

 ハクゲンが言う“想定被害レベル”が割り出せるなら、ソレが高い街や村の傍に人員を置くべきだってな。

 ハクゲンの作戦では、“敵を感知”し、“味方に伝達”して、“味方が現場に向かう”⋯⋯なんて段階が必要だ。

 現場に向かう奴の速度次第では、手遅れになってしまう可能性もある。

 ⋯⋯まぁ現状、その現場に向かう奴っていうのが、“幼女の仲間”か“魔王軍の誰か”である訳だし、そういった意味では俺の懸念は杞憂に終わるだろうが。

 

「──俺からも、1ついいか?」

「ゼルさん、貴方から? 何でしょう?」

「あァ。まぁ、大した事じゃあねぇんだがな? 今回の会議をするってなった時に、俺ぁそこのジイさんと“段取り”をいくつか付けてきたんだよ。

 その“段取り”っつうのは、“前の襲撃の黒幕は、魔王軍である事にする”って内容だ。ソッチの方が、人間共は話を進めやすいからな」

 

 ⋯⋯え、そうだったのか?

 そんなの、この会議の本来の目的である、「人類との休戦」と真逆の内容じゃないか。

 ゼル達はいいとして、人類側はこれを発端に攻めてくるかもしれないぞ。

 

「──つまり、裏では休戦、表では臨戦態勢になる訳だ。

 ⋯⋯言いてぇ事は、分かってくれるよな? 白厳」

「ええ。街の防衛に当たる際は、人類と魔族の共闘は避けたい、でしょう?

 臨戦態勢でありながら、魔族が人類と手を組んでいると知れれば、魔王としては面子に関わると」

「そうだ。流石だなァ♪」

 

 す、スゲェな、ハクゲン。

 僅かとはいえ、魔王の“圧”に真っ向から言葉を返せるとは⋯⋯

 俺なんてチビりそうだったぜ、マジで。

 

「──おおよそは、話が纏まったね」

「あぁ、俺は問題無い。オメーらは? どうだ?」

「「「「ありません、全く」」」」

 

 ゼルの問い掛けに、グレンデル達は口を揃える。

 まぁ自分らのボスが問題無いって言ったのなら、その部下が異論を挙げるなんてのは無礼極まる行為か。

 ⋯⋯さて。此方は纏まった様だが、人類側はどうだろうか。

 

「では、会議を進めましょう。──エスキラさん、セイリスさん、何か意見はありますか?」

「おいおい、俺には聞いてくれねぇのかよ?」

「どうせアンタは興味無いでしょう? 全く。⋯⋯取り敢えず、私からは無いわ」

「私もだ。白厳、会議を次の段階へ進めてくれ」

 

 ⋯⋯どうやら、満場一致らしいな。

 不穏な空気もだいぶ緩和された事だし、俺も気を抜けるぜ。

 ⋯⋯それはそうと、足が痺れてきたな。イテテ。

 

「──それじゃあ、ここら辺で重要な話をしておこうか」

 

 そう言って、幼女は立ち上がる。

 彼女は、『神と、その役割について』という語り出しから言葉を続けた。

 その時点で、幼女が何の話をしようか検討がついた俺は、表情が変わらない様に堪えた。

 ⋯⋯まぁこういう云い方はアレだが、“一度失い、二度と戻らないと思っているモノ”が、戻ってくるとなればな。

 エスキラ達がどんなリアクションするか、ぶっちゃけ楽しみだぜ。

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