猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第138話・冬の音

 ──人魔会議から、1週間後。

 ついに、二度目の黒異種襲撃が発生した。

 幼女の読み通り、今回の襲撃地域は絞られており、また白厳考案の作戦によってその被害は大きく軽減されていた。

 課題であった人類と魔族の連携についても、幼女のお陰で簡単に乗り越える事が出来たらしい。

 “インカム”の様に機能する魔法を全員に付与し、音声のみで遣り取りする方法で事無きを得たんだとか。

 しかも、遠隔での情報通達を可能とした事で、当初の予定より速やかな行動が実現できたらしい。

 俺は、魔王城での鍛錬があって襲撃の迎撃メンバーには含まれなかったが⋯⋯

 迎撃を行ったティガやアインの話では、そりゃあもう面白かったと言う。

 

 彼らから聞いた事で特に印象的だったのは2つある。

 1つが、【神将(しんしょう)】と名付けられた、上位黒異人(コクト)の存在だ。

 通常の黒異種とは比べ物にならない強さで、出現した場合は魔王幹部級が対応に当たったとか。

 ⋯⋯そう、魔王幹部“級”。

 つまりは、ティガやアインに匹敵する様な奴が複数名居た、という訳だ。これが、2つ目の印象に残ったポイントだ。

 以前から、幼女が『仲間』と表現していた連中の事らしいが、それが話を聞いただけで恐ろしい。

 まずドラゴン族の奴では、周囲に街が無かったのをいい事に、火山地帯を氷漬けにした者がいるらしい。

 他にも同様の理由で派手に地形を変えた奴ばかりだ。

 ある大陸は今後1000年は雷が降り注ぐ事態になったり、ある大砂漠は一夜で海の底に沈んだり⋯⋯

 幼女の別の仲間。転生者の方は、比較的落ち着いていたらしいが、それでもソレかぁとなるレベルだ。

 なんでも、地上に宇宙空間を創り出した奴とか、島を片手で持ち上げてブン投げた奴とか、コレだけバケモンがいる中、刀一本で戦った奴とか⋯⋯

 しかも、ソイツが1番成果を挙げたらしいし⋯⋯兎に角、見渡せばキリが無い。

 

 しかし、最も肝心なのは、これだけの奴らが揃っても、オーガの撃破は出来ないという点だ。

 やはり、“受ける攻撃を別世界に転送する”という能力のせいで、手出が出来ないのが現状らしい。

 幼女曰く、『研究は順調。次の冬にはオーガをビンタ出来るようになる』との事だが⋯⋯

 丁度、俺がこの世界に来てから1年が経つ頃だろうか。

 生まれた場所であるリーゼノール周辺は12月が春〜夏頃だったが、ここら辺は真逆らしい。

 ここら辺の方が、日本の四季の周期と似ているっぽいな。

 ⋯⋯と。いやいや、そんな事はどうでもいい。

 つまりは、俺は次の冬までにオーガを超える強さでなければならないという話だ。

 オーガ自体の強さも知らないし、都合良く1対1になるとも限らないから、そりゃあ闇雲に強くなるしかないが⋯⋯

 ぶっちゃけ、かなり不安だ。

 もし俺が死んだら、この世界はどんなるのだろう? そう考える日も多くなった。

 弱音を吐いている場合ではないのは百も承知だが、背負わされているモノが巨大すぎる手前、ネガティブにもなる。

 

 だが、同時に。

 どこか胸躍る自分がいるのも事実だ。

 鍛錬の成果をぶつけれるからか。目的を達成した時の賞賛を考えてか。更にその先を見越してか──。

 ⋯⋯いや、理由はなんだっていい。俺は前に進むしか無い。

 それなら、楽しく、前向きに歩みたいものだから。

 

「──しゃあッッ!!」

 

 声を張り上げ、俺は歩を進める。

 強くなる。それだけを道標に。

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