第139話・“魔力の循環”
──2つ、であった。
現状の俺の課題である、『魔力の循環』。
それに重要なのは、“魔力が逃げない領域”と“発散した魔力への干渉”の2つだったのである。
発散した魔力を周囲に留め、その上で再度魔力を吸収する。
⋯⋯うむ。
しかし、俺は考えた。“重要”と“必要”は、別問題ではないかと。
確かに、一度発散した魔力を周囲に留めた方が、再回収がし易いというのはある。
だが、現状の俺にとって、その“魔力が逃げない領域”を生み出す事は至難の業。
ならば、そう。いっそ捨ててしまえばいいのだ。
そもそも“発散した魔力への干渉”が出来れば、魔力の再回収は少なからず出来る。
まぁ“魔力が逃げない領域”があれば、発散した魔力の再回収がしやすい=効率が良いというのは事実だ。
⋯⋯が、やはり無理なモノは無理と割り切るのも大切だと思うワケで。
「──⋯⋯ふっ。」
軽く息を吸い、一瞬だけ息を止める。
そしてゆっくりと吐きつつ、目を瞑って意識を絞った。
魔力感知に全神経を集中させるが、感知対象は俺自身だ。
指先一つ動かすだけでも、筋肉や骨や神経がどんな風に連携しているか分かる。
血の流れですら、音が聞こえそうな程に明確に感じ取れる。
ただ生きているだけでも、身体は案外騒がしいものだ。
「⋯⋯よしっ」
魔力感知を慣らしていき、展開範囲を徐々に広げる。
徹底して、自分の周囲1メートルだけに感知を集中させた。
⋯⋯やはり、答えは魔力感知だったな。
魔力の循環。その仕組みは、魔力感知に酷似している。
それに気付いた時点で、テュラングルに修行に付き合ってもらったが⋯⋯
「──ふッ!!」
炎装を発動し、俺は両足を肩幅に広げる。
これといって両手の持ち場も無かったので、拳を握りつつ軽く脇を締めて適当な構えを取った。
うむ。傍から見ると、きっとアレだ。戦闘民族が気を溜める時のポーズだ。
──魔力感知を極限まで凝縮、
炎装で発散する魔力に感知を同調、
自分の魔力に“戻って来る”という性質を付与──
一つ一つ、魔力操作を丁寧に行う。
テュラングルから教わったのは、“魔力への指示”だった。
正しくは“指示”というより、流れに規則性を付けるという技術だ。
魔力感知で発する魔力の波は、感知の展開者に帰ってくる。
通常は、何かに衝突して跳ね返ってくるのが感知による魔力の波の動きだ。
しかし。何にも衝突する事無く、感知の最大展開範囲に到達すると、波は自動的に展開者に戻ってくる性質がある。
その性質を、炎装によって発散する魔力に付与する事で、俺は魔力の循環に成功した。
⋯⋯まぁお陰で、魔力の循環中は魔力感知が使えなくなってしまうデメリットも生まれたが。
「⋯⋯ははっ」
だが、そんなデメリットなんてどうでもいい。
こんな、笑ってしまう程に革新的な能力を身に付けられたんだからな。
炎装で発散した魔力は、感覚で約30%も還元されている。
エネルギー消耗の大幅な減少で、炎装の持続時間が延びたのは間違い無いだろう。
あー、ホント。楽しいぜ、 成長するってのは。
「──ん?」
ふと、足元に違和感を覚える。
炎装形態の俺の影には、いつもよりも“何か”が多かった。
両肩からそれぞれ伸び、肩甲骨辺りに戻って──。そう、輪を描く形の炎の揺らぎがある。
⋯⋯あぁ。そうか、成程。
炎装で発散する魔力は、再び俺に戻ってくる。それは、炎の形となって目に見える様になっているのだろう。
こうして見ると⋯⋯なんか。オーガを相手にする俺が云うのもなんだが、神々しいな。
まるで、
「ふう、こんなモンかな」
炎装を解き、俺は構えるのをやめる。
仁王襷の様な炎装⋯⋯。うーむ、まぁ【
普通に生活するだけなら問題無いが、戦闘の最中も継続するというのは現状では不可能だろう。
無論、オーガとの決戦までには身体に馴染ませておくつもりだが、その決戦もいつかは分からないし⋯⋯
取り敢えず、今この【炎輪形態】を戦闘で使うとすれば、相手が止まった時くらいしかタイミングは無いか。
──強いていうなら、エネルギー消費のコスパが良い点を活かして、逆に一気に魔力を燃焼する手はあるかもな。
通常では数秒で魔力が尽きる出力の炎装でも、【炎輪】なら10秒以上持つかも知れないし。
⋯⋯フフフ、わくわくが止まらないぜ。
まぁ兎に角、今はこの形態に瞬時に移行するのと、形態の長時間維持を目標に鍛錬するかね。