猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第140話・新技開発【閃】

「──足りない?」

「そ、足りない」

 

 俺の台詞を、アインはそのまま繰り返す。

 疑問を顔に浮かべながら首を傾げる俺に、アインはゆっくりと腕を組んで言葉を続けた。

 

「炎装による肉体の強化。飛拳での遠距離攻撃。⋯⋯ちっと、物足りないねぇんだよなァ〜。

 近〜中、超長距離、広範囲。そこんトコの攻撃手段が圧倒的に無さ過ぎだぜ、紅志」

「そうか? 飛拳を撃つ時の力加減で、どうにでもなりそうだけどな⋯⋯」

「馬鹿タリィ。格下が相手ならまだしも、同格や格上が相手なら技の数が多い方が有利なんだよ」

 

 説明をしつつ、アインは俺に軽くチョップする。

 ううむ。どうも『技の数が多い方が有利』という考え方に納得がいかない。

 だって飛拳さえあれば⋯⋯

 

「『飛拳さえあれば、大抵のシュチエーションに対応できる』。

 あァ、その考え方自体は間違いじゃねえ。⋯⋯だが、考えてもみろ。全てのシュチエーションに、たった一つの技で対応出来ると思うか?

 もし、その技が圧倒的なモンであるならば、そりゃあゴリ押しで何とかなるだろうよ。

 ──けど、お前の飛拳はどうだ? 絶対的な威力を誇っているか? いついかなる時でも確実に放てる技か?」

「⋯⋯⋯⋯うう、無理だ。反省する」

 

 アインの指摘に、俺は自身の額を叩く。

 言われてみれば、確かに飛拳には絶対的な威力は無いし、どんな瞬間でも撃ち出せる自信も無い。

 飛拳が使えない・使っても意味が無い相手との戦いなら、俺はほぼ全てのシュチュエーションで肉弾戦を強いられる事になる。

 その上 肉弾戦でも俺より強い相手となると、打つ手は完全に無くなってしまうか。

 ⋯⋯成程。そういった点を踏まえて、“様々な状況に応じた様々な技”は持っていた方が良い、って訳だな。

 

「──ンまぁ、近距離技は一旦置いといてもいいか。

 どの道 炎装による身体強化があるワケだし、今後の格闘鍛練で何とかなるだろう。

 残りの候補は、中距離、超長距離、広範囲だが⋯⋯」

「それなら、超長距離と超広範囲をまとめるってのは?

 こう、ド派手に薙ぎ払ったりする感じの⋯⋯」

「ン〜⋯⋯。それもまぁ、悪くはねぇんだがなァ。

 超長距離で肝心なのは“速度”、広範囲で肝心なのは“威力”で、それぞれ違いがあってだな⋯⋯」

「ええと。それじゃあ──⋯」

 

 なんやかんやと話し合い、時間は経過する。

 無論、俺だけの為という訳ではなのだろうが⋯⋯こうして長話に付き合ってくれるのは嬉しい。

 心から応援されている様で、コッチも俄然やる気が出るというモノだ。

 

「⋯──まぁ、物は試しってヤツだな。やってみろ」

「あぁ、いっちょやってみるぜ」

 話し合いの末に出た“案”を、早速実践に移す。

 『取り敢えず速度は置いておく』という話で纏まった“ソレ”だが、出力次第では速度の上昇(超長距離への対応)も可能なんだとか。

 しかし。今の俺の力量では、一定以上に出力を上げるのは困難──というか不可能──だと言う。

 

「⋯⋯⋯⋯ッ」

 

 上半身を、振りかぶる様に後ろに逸らす。

 魔力を操作し、その多くを“頭部”へと移動させた。

 

 ⋯⋯俺は初めっから口から火を吐くのが苦手だったが、それもその筈。そもそも俺はグレイドラゴンだ。

 炎を生み出せる器官が体内に出現しても、肉体の方が炎を吐き出せるモノでは無い。

 だからこそ、俺の中の炎は“真似”をしたんだ。

 炎の能力を身に付けるより前からあった、金属を生成する能力を。

 その金属生成の能力は主に肉体の皮膚から発現する。

 ある時は、攻撃の為に鉤爪や尻尾の先端に。またある時は、防御の為に全身を覆って──。

 

 それを、炎も真似した。

 そして、その結果が炎を装備する能力。炎装だ。

 

「おっ」

 

 無意識に、俺は声を発した。

 炎装と同じ要領で操作した魔力が、想定以上に想定通りの動きを見せたからだ。

 本当はドラゴンっぽく口から放ちたかったな、的な思考を巡らせつつ、俺は右脚を大きく前に踏み込んだ。

 俺の頭部に生えた、矩手(かねて)に曲がる二本角。

 それの両先端から、双角の中間に向けて魔力を集中させる。

 そして、高密度に魔力が凝縮したその(恐らく球体)を、上半身を振り下ろすと同時に一気に解放。

 その直後、

 

──ギュオオオオオオオンンッッ!!

 

 弦楽器の様な、美しさすら覚える音が響き渡る。

 全身が揺れる程の爆音ながら、俺は思わず聞き惚れた。

 また、見惚れた。白色を芯として、外側にかけて紅色に眩く輝くその閃光に。

 次の刹那に脳裏に過ぎったのは、いつかのテュラングルが俺に放った技だった。

 つまり⋯⋯そう、恐らく全少年のロマンである──

 

「ビームだぁ!! アイン見ろ! ビームだぜ!」

「お、おう、そうだな。⋯⋯ガキみてぇにはしゃぐヤツだな」

「はーーっ!! すっげぇ!!」

「あー⋯⋯まぁ、ビームっつうよりかは、もっとこう⋯⋯

 “魔力の拡散範囲”が広いし、使ってる魔力の割に威力が散らばって──。⋯⋯あォ、聞いてねえなコレ」

 

 何か言っているアインをスルーし、俺はビームに見入る。

 これを俺自身が放っているなんて、流石に興奮してしまう。

 ⋯⋯まぁビームと呼ぶには、少しばかり()()()()()様にも見えるがな。

 直線というよりかは、魔力が扇状に広がっている感じだ。

 もっと細くてスタイリッシュな方が良かったが⋯⋯まぁそこは今後の鍛錬次第だな、ウン。

 

「まぁ、取り敢えずは候補として挙げておくか」

「え、候補? いやいや、採用採用。即採用」

「分かったから黙れ。──今は“現状のお前が扱える技”の学習が先決だ。他にも使えそうな技があれば、色々挙げてけ」

「よしきた。俺の得意分野だ。100個くらい挙げるぜ」

 

 アインの言葉に、俺は前のめりで返答する。

 何故だか呆れ顔で溜息をつくアインを後目に、俺は今までに無い速度で脳を回転させた。

 思い付いた順にソレを口にするが、案を出せば出す程 俺の思考は加速するばかりであった。

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