猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第150話・突破口

「──出来たあーーっ!!」

 

 魔王城に、幼女の叫び声が響き渡る。

 反射的に目と耳を塞いだ俺は、ゆっくりと声がした方向へと振り向いた。

 地面が揺れるレベルの大声だったが、一体何が『出来た』というんだろうか⋯⋯??

 

「出来た 出来た 出来た!! 紅志はどこーっ!?」

「お、おーい。ここに──」

 

 慌てた様子の幼女に、俺が手を振った瞬間。

 『いたぁ♪』と大きく口角を上げた幼女が、いつの間にか俺の目の前まで移動していた。

 いや、本当に目の前。目の前に目があるくらいに近い。

 なんなら眼球と眼球がくっつきそうな近さで、幼女が俺を覗き込んでいる。

 いやガチ怖い。なんなんコイツ。

 

「──出来たよ、紅志♪」

「あぁ。そう。よかったな。よしよし。⋯⋯で、何が?」

「オーガの! 転送能力を! 突破する“鍵”が! だよっ!」

「⋯⋯!!」

 

 おぉ、遂に。

 物理的にオーガを打倒する手段が、ここに来て完成したか。

 幼女からすれば、5万年も掛かった目標達成の第一歩⋯⋯。

 そりゃあ、テンションも上がって当然だな。

 

「──具体的には、紅志の中にある“神の力”に、『転送能力を解除する指示』を書き加える感じだね。

 どんな能力であれ、それを発動している本人の意思と、それによる力の操作よってONとOFFが出来る筈だ。

 だから、オーガの転送能力に対して、君の中の力で『展開状態をOFFにするという指示』を作り出し、オーガ本人の能力に“誤認させる”ってワケ!!」

 

 得意げに説明し、幼女は鼻息を荒げる。

 小難しい内容の話だが、つまりは強制的にオーガの能力を引っペがすって感じだろうか?

 能力頼りのオーガが相手なら、その能力を失った瞬間の顔が楽しみだ。

 ⋯⋯が、まだ大きな懸念点が残っているな。

 

「その“誤認させる”って手段自体が、転送能力で無効化される可能性はあるんじゃないか?」

「ノンノン! そこら辺は、ちゃんと考えているよ〜。

 あの転送能力は、()()()()()()()()()()()()()()()でしょ?

 その理由は、オーガの能力が“神の力”と魔力等の“その他”を判別して、転送するかしないかを決めているからだ。

 恐らくは、もっと詳細な判別の基準があるだろうけど⋯⋯

 兎に角、“神の力”を持っていれば、あの能力への干渉が可能なんだよ。

 で、その上で、能力を強制的に停止させるってワケだ」

 

 ⋯⋯あぁ。成程、そういう事か。

 つまり、オーガの転送能力に対しては、オーガ自身の力であれば“外側”からでも干渉が可能という事だな?

 確かに、“神の力”なんてモノは唯一無二だろうし、自分自身の力を判別するもなにも無いって話か。

 

「──紅志の中の“神の力”。それを限界まで薄〜く引き伸ばして、君の肉体と魔力に張り巡らせる。

 同時に、張り巡らせた“神の力”には、さっきの『転送能力を強制停止させる指示』を与えておく。

 それによってオーガの転送能力を突破し、直接攻撃を可能とし、そして撃破。ここまではオーケー?」

「一つだけ、気になる点がある。その『転送能力の強制停止』さえ済めば、俺がオーガと戦う必要は無いんじゃないか?」

 

 俺の疑問に、幼女は少し俯く。

 言葉の先を詰まらせる彼女に、俺は『続きは?』という視線を送った。

 幼女が表情を曇らせた理由なんて、簡単に想像が付くしな。

 意地悪だと言われたら言い返せないが、このタイミングなら幼女にはちゃんと続きを言って欲しいぜ。

 

「⋯⋯オーガとの直接対決は、紅志にしか出来ない事なんだ。

 君の中にある“神の力”っていうのは、ごくごく僅かでね。

 紅志の中の“神の力”は、君の肉体と魔力を『転送の強制停止能力』で覆うだけでギリギリなんだよ。

 つまり、オーガの能力の間合いに入った君の肉体と魔力だけが、転送の無効化をできる感じだ」

「おっけい。それさえ分かったんなら別にいい」

「⋯⋯え? いや、でもホラ、大変な思いをするかもしれないんだよ?」

 

 はいはい、やっぱりな。

 幼女の事だから、俺の身を案じてくれていたんだろうが⋯⋯

 見くびってもらっちゃ困る。オーガと戦う為に俺がどれだけ鍛錬を積んだのか、一番知っているのはお前だろうに。

 

「──俺は、あの星廻龍に認められたグレイドラゴンだぜ?

 オーガみたいなジジイを相手に、負ける様な男じゃねえよ」

「フフ、君は随分と変わっ──。⋯⋯いや、元からだね。

 優しく、大胆不敵で、前向き。何も変わらない、紅志らしい紅志だ♪」

「お前もな。いつも笑顔で、それでいて明るい」

「⋯⋯ありがとう。君がこの星に生まれてくれて、本当に良かったと思ってるよ」

 

 俺の胸に手を当てる幼女が、静かに微笑む。

 その時の顔は、いつもの天真爛漫な笑みとは違い、どこか切なさを含んでいる様に見えた。

 

 幼女の手から、金色の光が俺へと流れ込んだのだった。

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