猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第188話・“覚醒”+α VS “狂神”②

「「「──ぐわっはぁーーっっ!!」」」

 

 ポン! コウ! ツー! と、黒竜三匹がテンポよく地面に叩き付けられる。

 まとめてギオスに襲い掛かった結果、まとめて返り討ちにされたのである。

 

「くそう!!」

「つよい!!」

「いたい!!」

 

 飛び起きるなり、ワチャワチャと騒ぐ黒竜達。

 そんなバカ三匹組には、ギオスですら首を傾げて追撃を仕掛けなかった。

 次の瞬間。彼の動きが止まった隙を見逃さず、ヴィルジールが背後から斬り掛かった。

 直後に殺気を察知したギオスは、素早く首を180°回転させてヴィルジールの姿を確認。

 首から下を振り向かせると同時に、極小の火球を無数に投げ付けた。

 

──バチバチバチバチッッ!!!

 

 例えるなら、殺傷能力のある爆竹の様に。

 激しく炸裂した火球が、ヴィルジールの視界を奪うと共に、彼の身体に無数の火傷を創り出した。

 

「舐めんなッ!!」

 

 しかし怯まず、ヴィルジールは突き進む。

 そして両剣を振りかざした男に、ギオスがハイキックによるカウンターを入れようとしたタイミングで──

 

「「「〘瞬殺・無敵絶技・圧倒絶大黒竜刃〙!!」」」

 

 黒竜達が、翼に魔力の刃を形成してギオスに飛び掛った。

 ギオスが物理攻撃を仕掛けた事で、転送能力が解除された隙を狙った攻撃──という訳ではない。

 “攻撃するなら大勢で一気にやったほうがいい!”といった、もっと単純な思考によるものである。⋯⋯が、

 

「ギャアッ!!?」

 

 その単純さが、ギオスに悲鳴を上げさせた。

 彼の脇腹に、僅かな切り傷を付ける事に成功したのである。

 そして、この瞬間だった。

 ヴィルジールが、神将の転送能力を掻い潜る新たな方法に気が付いたのは。

 

「成程、そういう事か⋯⋯!!」

 

 目を見開くと共に、男の口角が上がる。

 黒竜達の攻撃に巻き込まれぬ様、攻撃を中断して飛び退いたヴィルジールだからこその「発見」だった。

 「ヴィルジールの攻撃」に発動したギオスの転送能力は、本人が攻撃を中断したと同時に解除されつつあった。

 そして直後にやってきた「黒竜達の攻撃」には、能力が“完全に解除されてから再発動”という順序があったのである。

 つまり、先程の遣り取りにてヴィルジールが発見したのは──転送能力の「再発動に要する時間(インターバル)」であった。

 

「おいっ!! ポンコツ!!」

「なんだ」「うるさい」「黙ってろ」

「いいからコッチ来い!! オメーらだってコイツぶっ飛ばしてぇだろ!!」

「なにか」「あるのか」「作戦が」

 

 三匹で目を見合わせ、ヴィルジールに駆け寄る黒竜達。

 “意外と話は通じるんだな”と彼らを眺めつつ、ヴィルジールは三匹に説明を始めた。

 

「──よく聞け。まず、あのクソ厄介な能力のせいで俺達は攻めあぐねているな?」

「おうおう」「そうだな」「めちゃクソ厄介だ」

「だが、俺は気付いた。アレの突破方法にな」

「なんだ」「早く教えろ」「もったいぶるな」

 

 ゴニョゴニョと話す一人と三匹を後目に、ギオスは呼吸を荒らげる。

 生まれて初めての「痛み」と、そこから分岐する様に現れる「恐怖」や「憤怒」や「困惑」は、彼の思考を固く停止させていた。

 そして、そんな状態から立ち直る間も無く、ヴィルジール達の作戦会議が終了した。

 

「──あの能力を掻い潜るには、一定のタイミングでの攻撃が必須だ。

 誰かが転送能力を発動させ、解除された瞬間に間髪入れず別の奴が攻撃を仕掛ける⋯⋯。

 本当なら一人で完結させたいところだが、今の俺達では力不足だ。今は、連携して戦うぞ」

 

 両剣から双剣に変え、ヴィルジールは低く構える。

 黒竜三匹を背後に付け、男はギオスを鋭く見据えた。

 

「始めるぞ!!」

「「「おうッッ!!」」」

 

 檄を飛ばし、ヴィルジールがギオスに肉薄する。

 彼の少し後に続き、黒竜三匹も勢いよく飛び出した。

 

「フ──ッ!!」

 

 ヴィルジールが、X字に斬撃を放つ。

 まずは、初めの一撃。「陽動の攻撃」を繰り出すと、双剣の刀身がギオスの肉体の手前で姿を消した。

 転送能力の発動を確認し、ヴィルジールは即座にバックステップをする。

 彼と入れ替わる形で、黒竜達がギオスに攻撃を開始した。

 

「「「うおおおオオーーッッ!!」」」

 

 魔力の黒い刃を鉤爪に生成し、ギオスに振り下ろす黒竜達。

 能力が解除される瞬間を狙って「本命の攻撃」を仕掛け、ギオス本体へダメージを与える作戦である──が、

 

「ウギャオア!!」

 

 大きく飛び退き、黒竜達の攻撃を躱すギオス。

 彼もまた、先程の遣り取りで学習したのである。

 “己の能力は完全では無い”。“何らかの抜け穴がある”、と。

 

「ウギルルルル⋯⋯!!」

 

 強い疑念を全面に、ギオスは警戒を始める。

 深い猫背の姿勢で様子を窺うギオスの姿に、ヴィルジールの額に一筋の汗が流れた。

(こっちの狙いには、まだ気付いていないだろうが⋯⋯。あの野郎、見極めに入りやがったな)

 動かない相手を見て、内心で舌打ちをするヴィルジール。

 そもそも今は闘争の最中であり、敵の攻撃を回避するというのは至極当然の判断である。

 だが、攻撃のチャンスは一瞬にも関わらず、加えてギオスが極端な警戒を行っている現状──。

 ヴィルジールの中におけるギオスは、“危険度”よりも“厄介度”の方が圧倒的なものになっていた。

 

「──ポン、コウ! 少し時間を稼げ! ツー! 二人のサポート! 俺は、ヤツの能力に隙間が生まれるタイミングを測る!!」

 

 指示を受けた黒竜三匹が、勇ましく頷く。

 ギオスの言語を解せない知能が幸運となり、作戦を叫んでも即座に対応される事は無い。

 しかし。良くも悪くも、ギオスの知能は空白に近い状態だ。

 「よーいドン!」の時点では大きく遅れを取るものの、一度“学習”をしてしまえば、そこからの成長は凄まじい。

 つまり、ヴィルジールにとってこの作戦は、どちらがより早く相手を見極めらるかの勝負であった。

 

「「──〘黒双竜(こくそうりゅう)弩級弩弓(どきゅうどきゅう)〙!!」」

 

 飛翔した二匹の黒竜が、抱き合う様に互いの翼を重ねる。

 二匹の翼の中央。筒状に空く隙間にチャージされた魔力が、上空へ勢いよく発射される。

 直後、破裂。紫の波紋が空に広がり、そこから無数に形成された魔力の矢がギオスに降り注いだ。

 

「ギャオ!!」

 

 両手を空に掲げ、僅かに吼えるギオス。

 小さな火球を全ての指先に生成し、それぞれからマシンガンの様に火球を連射した。

 魔力の矢と火球の弾丸、威力は互角。衝突の度に紫と緋色の光が眩く炸裂する。

 刹那、ヴィルジールが動いた。

 

「──ッ!!」

 

 背後から、一息に迫る。

 意識が上空に向いているギオスに、双剣を横一閃するヴィルジール。

 左剣の一太刀にて転送能力を発動させ、右剣の二太刀目にて能力の「隙間」を狙った。

(──本命の攻撃。タイミングが遅過ぎなら、当然だが能力の再発動によって無力化されるが⋯⋯)

 右剣の刀身が、ギオスの手前で消失する。

 刃を振り抜くと共に刀身が再び現れるのを確認し、ヴィルジールは素早く距離を取った。

 

「⋯⋯逆に早過ぎても、陽動の攻撃で発動した転送に巻き込まれる恐れがある、か」

 

 深い鼻息をしつつ、ヴィルジールはギオスを観察する。

 遅くても早くても攻撃は無力化される事実に、思わず呆れた笑いが零れた。

 

 ──とある扉があったとして。

 「開いている状態」から、攻撃を受けた際に自動で「閉まる」というのが神将の転送能力の性質である。

 そして、受けた攻撃を無力化し、能力が解除れさつつある瞬間⋯⋯。つまり、「開きかけている状態」の時。

 そのタイミングで攻撃を受けた場合の転送能力は、「一度開ききってから、再び閉まる」という手順を挟む必要がある。

 一見すると、その「隙間」を狙えばいい話ではある──が、実際にそれが生まれる瞬間は極わずか。⋯⋯時間にして、

 

「0.3⋯⋯。いや、0.27秒ってところか」

 

 小さく呟き、双剣を構え直すヴィルジール。

 次の瞬間。ポンとコウの技が微かに途切れたのを見逃さず、ギオスが全身に巻き付く包帯──神器──の操作を始めた。

 更にそれを見逃さず、ツーが魔力のチャージを開始する。

 魔力の矢の雨の隙間を、縫い這う様に伸びる純白の包帯。焼け焦げたその先端が、ポンとコウへと迫った。

 

「させるかッ!! ──〘一大黒竜尖槍(いちだいこくりゅうせんそう)〙!!」

 

 紫の魔力を身に纏い、高速突進を開始するツー。

 ギオスの包帯の数十本を断ち切ると、ドヤ顔でポンとコウに親指を突き立てた。

 

「ギイイ⋯⋯。ウギャオアアーーッッ!!」

 

 黒竜達の連携に苛立つギオスが、新手を打ち出す。

 自身の包帯の先端を炎上させ、炎の刃を形成したのである。

 ギオスの両肩から伸びる、四本の包帯。意思があるかの様に畝ねるそれが、先端にある炎刃の鋒を光らせた。

 

「くあッ!?」

 

 刹那、ツーから派手に血飛沫が上がる。

 脇腹から右肩に入る深い斬撃痕の先には、振り抜かれた炎の刃の姿があった。

 

「「ツー!!!」」

 

 思わず攻撃を中断するポンとコウ。

 しかし。倒れるツーに慌てて飛び寄る二匹を、ヴィルジールが静止しようとした次の瞬間──

 

「ぎゃッ!!」

「あぐッ!!」

 

 バッサリと、翼が斬り捨てられる。

 ポンは、右の翼を根元から。コウは、両翼の半分づつ程度を失った。

 

「クソっ、一歩遅れたか⋯⋯!!」

 

 大きく崩れた陣形に、冷や汗を流すヴィルジール。

 素早く炎刃包帯の切断に向かう彼だったが、直後にその足が停止する。

 通常の純白の包帯が、いつの間にか右足首に巻き付いていたのである。

 それは、先程ツーが断ち切った包帯の先端の部分であった。

 

「ウギャアァァ⋯⋯!!」

 

 低く唸るギオスの額に、いくつもの青筋が入る。

 拘束したヴィルジールに、ギオスは炎の刃を突き付けた。

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