猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

203 / 218
第202話・戦い方

──ガキンッッ!!

 

 豪快な音が響き、無数の金色の破片が粒子となって消える。

 よし。三本の槍のうち、ひとまず両刃槍(パルチザン)の破壊は完了だ。

 残るは後ろから高速で追尾してくる三叉槍(トライデント)と⋯⋯

 

「おっと、」

 

 半身に構えて躱したこの戦斧槍(ハルバード)か。

 ⋯⋯斬撃の風切り音が少ししか聞こえなかったな。当たっていれば、脳天から尻尾の先まで一刀両断だったろう。

 防御力がウリの炎装(炎輪)形態でいて尚、ここまで警戒させられるとは。ヴィルジールの両剣といい、セラフのランスといい⋯⋯

 最近、立て続けに炎装の異常防御力を突破されて自信なくなってきたぜ。

 

「──フン。アルノヴィアが貴様に仕込んだのは、虚勢の張り方と逃げ足の速さじゃったか。合点がいくわ」

 

 上空に陣取るオーガが、悪態をつきながら指を振る。

 直後、背後から迫る三叉槍(トライデント)の速度がぐおんと急上昇した。

 俺は真横の地面に刺さる戦斧槍(ハルバード)を足場にして蹴り、その場から大きく離脱。三叉槍(トライデント)の突きを回避した。

 まぁ斬撃と刺突であれば斬撃の方が脅威だし、警戒すべきは本来そちらなのだろうが⋯⋯。

 いかんせん、同じ負傷レベルならば斬られるよりも刺される方が痛いんだもの。

 肉体の損傷における痛み具合は、刺された時の方が()()が深いからな。

 多少大袈裟に回避したところで、ダメージを負って神経を削がれるよりはマシだろう。リスクヘッジってやつだ。

 断じて“痛いからビビっている”というワケではない。ビビってなどないのである。

 

「オヌシがいつまで逃げ惑っていられるか、そんな事に興じるつもりはない」

「⋯⋯!!」

「早々に片をつけてやる──❨慈悲の雨(ファルシア)❩!!」

 

 オーガを中心として、ごく小さなエネルギー弾が広範囲に炸裂する。

 無数に降り注ぐ光球は、まるで金色の豪雨かの様に美しく、そして恐ろしい。

 煌めきが辺り一面を覆い尽くす中、自身に向かってくる光球を打撃で相殺してゆく。 

 ちっ、キリが無いな⋯⋯。こうなったら、強引にでも攻撃を中断させてやろう。

 ⋯⋯おっ、()()()()()がコチラに向かってきているな。有効活用しておこう。

 

「ほっ! と⋯⋯」

 

 背後から薙ぎ払われた戦斧槍(ハルバード)を姿勢を低くし躱すとともに、刃の裏側に張り付く形で移動する。

 そのまま弾除けとして利用し駆け回りつつ、オーガの側面に回る事に成功した。

 ふとオーガの様子を窺ってみると、俺の姿を見失っているように──

 っと。そう勘違いさせてコチラの油断を誘う演技をしているのか、あのタヌキジジイ。

 

「はあッ!!」

 

 昇〇拳ヨロシク、拳を突き上げ頭上の戦斧槍(ハルバード)を粉砕する。

 無数の破片が飛び散り、両刃槍(パルチザン)と同様に金色の粒子となって消滅する──その直前に。俺は破片を一つ手に取った。

 えー、こほん。四番ピッチャー、燗筒(かんとう) 紅志(あかし)君。大きく振りかぶってえ⋯⋯

 

「ふんぬッ!!」

 

 投げたあーー!! そしてストラーーイク!!

 オーバースローで放った破片(ボール)が真横から迫っていた三叉槍(トライデント)を木っ端微塵に粉砕ーー!!

 

「チィ、小癪な真似をする奴じゃ。ならば⋯⋯!!」

「うおっ⋯⋯!?」

 

 咄嗟に構え直し、俺は飛連拳(ひれんけん)を打ち放つ。

 広範囲に拡散していた❨慈悲の雨(ファルシア)❩の光球を、あんの野郎⋯⋯俺に集中させてきやがった。

 くっ、飛連拳の手数ではこれに対抗し続けるのは厳しいか。

 『不知火(しらぬい)』の射程圏からも外れている。無理やり距離を詰めるのも難しいな。

 

「死ねぇぇい、燗筒 紅志!! 来るべき新たな時代への贄となるのじゃ!!」

 

 オーガが叫ぶと、❨慈悲の雨(ファルシア)❩の勢いが更に増す。

 このまま決める気のようだが⋯⋯。いやしかし、待てよ。

 『不知火』での肉薄が難しいとは思ったが、アイツも接近される事は無いと(たか)を括っている様子に見える。

 であるからこそ、ここはどうにかして急接近によって意表を突きたいところだ。

 

「ふ──ッ!!」

 

 『不知火』を使って地面を蹴り、高く跳ね上がる。

 地上の俺から上空のオーガまでの距離は、目測で100メートル程度。

 射程距離が30メートル弱で、本来は正面に向かって使用する『不知火』では届く筈も無く、俺の身体は失速を始めた。

 故に、こうする。

 首を丸めるように地面に向け、二本角に魔力をチャージし、そして思いっ切り⋯⋯!!

 

──ギュオオオオオンッッ!!!

 

 〘火威矛(ビーム)〙をブースターとして使用し、勢いよく加速。

 荒れ狂う❨慈悲の雨(ファルシア)❩を一瞬にして抜けると、上空にいたオーガから「むう!?」と驚愕する声が聴こえた。

 俺は〘火威矛(ビーム)〙を中断し、逆さの長座体前屈のような体勢から揃えた両脚を前に振り抜く。

 そしてぐるんと身体を起こしてみると、目の前には──少しばかり見下ろした所に──オーガの狼狽えた姿があった。

 

「あ、❨絶対防(アレクサン)──」

「ぬぅああッッ!!」

 

 踵落としを脳天に打ち込み、オーガを地上に叩き落とす。

 今アイツが使おうとしていたのは❨絶対防御(アレクサンダー)❩か。出される前に攻撃出来てよかったぜ。

 ⋯⋯ふふふ。コレもソレも、リゼさんにオーガとの戦い方をレクチャーしてもらった成果か。

 俺としても、“王の庭”であれだけミッチリ扱かれた甲斐があるというものだな。

 

「小童ァ⋯⋯貴様ぁぁ!!」

 

 パシン! と、オーガが両手を強く握り合わせる。

 あれは⋯⋯前に幼女を相手に使おうとしていた能力か?

 ゼルの介入によってその全貌を見る事は出来なかったが⋯⋯

 

「──❨羅刹封門(らせつふうもん)❩!!」

 

 オーガの声が響き渡った刹那、一つの影が俺を包んだ。

 そして現れた、重圧と重量に全身が押し潰されそうな感覚。

 唐突に現れたそれに、思わず唸り声を上げる。

 同時に俺の脳裏には、ある日の幼女との会話の記憶が蘇っていた。

 

『⋯──オーガの能力には、いくつか面倒なのがあってさ』

『面倒な能力? どんなのだ?』

『まぁ、一概には言えないんだけど⋯⋯。なんか空から門を降らせてくるヤツがあるんだけど、食らうと魔力の制御が出来なくなっちゃうっぽいんだよね』

『なんだそれ、やば。食らったら終わりじゃないか? それ』

『そう、終わりなんだよね。落下速度も早いし、単純に拘束する力も高いから、抜け出そうったって楽にはいかない。少なくとも、回避も脱出も紅志には厳しいかなぁ』

『マジか⋯⋯。幼女はどう対処してたんだ?』

『私? 私は食らった事ないよう。なんせ伝説の星廻龍だからね♪──⋯』

 

 

 

 俺が食らったコレって、幼女が言ってたアレじゃねーか!!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。