紅色の鳥居が、地面に縫い付けるが如く俺に伸し掛る。
拘束対象によってサイズが変化するのだろうか? 俺の図体を抑え込むのにピッタリの大きさだ。
❨
魔力が使えないとなれば、俺を含むこの世界の大抵の生物は脱出不可能となるだろう。
厄介極まりないどころか、実質的に確殺技といっても過言ではない技なのだという。
『⋯──でもまぁ、対策はもう済んでるから安心してよ♪』
『対策?』
『以前、オーガの強制転送を解除する能力を
『へえ⋯⋯ちょっと詳しく聞いておきたいな。どんな能力があるんだ?』
『まず一つが超速再生。紅志が一定以上のダメージを負った際に自動で発動する。二つ目がさっきのやつ。“門”の能力を逆に封じるついでに、それを形成する魔力をブンどって紅志のものにしちゃう』
『ブンどる⋯⋯』
『後はまぁ、そうだねぇ。紅志に任せた
──ギシリ⋯⋯、ベギギ⋯⋯、
俺を拘束していた門──どうやら神明鳥居の形状だ──が、すすり泣くように軋む音を上げる。
そして粉砕。律儀に木材と同様の物質を生成して門を形作っていたらしく、繊維に沿って簡単に破壊出来た。
まぁといっても、門から吸収した魔力によって身体が強化されたからこそ破壊も出来たワケなんだが。
「ぐぬうう⋯⋯あの小娘⋯⋯!! どこまで儂を不愉快にするつもりなのじゃ⋯⋯!!」
大気を揺らす程の怒りを顕に、オーガは頭を掻き毟る。
ただでさえジイさんだというのに、ストレスを感じたからって頭をガリガリするだなんて⋯⋯ハゲちまうぞ??
「⋯⋯戯れは終いじゃ。かの
「へえ、救世神ね。世界を破壊しようとしているジジイがよくそんな──」
ふと、違和感を覚える。
次の瞬間。俺の左腕がストンと地面に落下した。
何事かと振り向く。
腕の切断面の背景に、深い斬撃痕が刻まれた大地を見た。
オーガへと振り返る。
ここでようやく、俺は腕が斬り落とされた事実を理解した。
「ぐあ⋯⋯!?」
「ふむ、見誤ったかの。真二つにするつもりじゃったが⋯⋯」
自身の右手に握る刀剣を眺め、独り言をするオーガ。
純白に煌めく刀身、十字形で金色の鍔、やや長めな柄──。
絢爛さこそ無いものの、刀から放たれる神々しさと威圧感は殺気となって伝わってくる。
⋯⋯不味い。オーガが得物を出してくるとは想定していなかった。
どういう訳か腕の再生が極端に遅いし、傷口の痛みも凄まじく激しいな⋯⋯。
身体の部位を一つ失った程度、これまでなら無表情でもギリギリ堪えられた筈だが⋯⋯?
「──まぁよい。次の一太刀で斬り捨ててくれるわ」
俺の疑念を
それと共に、彼の姿も変貌を始めた。
纏う純白のローブが陽炎の様に揺らめき、日本の着物と似た様相へと変化。その衣の端々に金色の勾玉模様が出現した。
金色の
元のギリシャ神話系の姿と比べると、今のオーガは日本神話に登場しそうな見た目をしているな。
「我が神具“
深く腰を落としたオーガが、ゆっくりと刀を構える。
鋒を正面に向けた刀剣が、地面と平行になるような──俺の記憶が正しければ、霞の構えというやつだ。
⋯⋯少し意外だったな。オーガが物理的な戦闘をするような相手だと思っていなかった。
あのセラフが“俺より強い”と言うだけある。さっきから胸の鼓動と手汗が止まらないぞ⋯⋯
「ム⋯⋯何を笑っておるのじゃ?」
「いや、ちょっと思う事がな。呆れたというか、でも楽しみというか⋯⋯」
うん、思わずニヤけ笑いが零れるな。
こんなにも早く
⋯⋯さて、最高到達点の更新といきますか。
「──やるか」