猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第207話・天を駆ける雲

──バヂヂヂッ!!

 

 青白くスパークする三体の巨大水蛇が、唸り声の様に電撃を(ほとばし)らせる。

 雷か、思えば初体験だな。ゲームでも漫画でも強属性として扱われるような代物だ、厄介だろうな。

 しかもそれを、物理攻撃がロクに効かない水蛇が纏っているときた。

 あの帯電水蛇に拘束された上に、また落雷攻撃なんてされてみろ。流石にちょっと厳しいぞ。

 ここはやはり、作戦そのままオーガ本体を狙っていこうか。

 

「⋯⋯ふう」

 

 炎迅(えんじん)を解き、炎輪へと形態を変化させる。

 ここにきて魔力の温存? いやいや、そんな訳じゃない。

 そもそも炎迅とは、その能力の根幹である炎装の⋯⋯言うなればレベル上限が解放された事で発現できた()()だ。

 ゲームで例えるなら、“あるレベルまで上がると習得できる魔法”が炎迅、“以前から習得していた魔法”が炎輪だとして。

 この二つの魔法の間にあるのは、優劣の上下関係ではなく、使用するMPの量でもなく、用途の違いだ。

 習得に必要なレベルに違いはあれども、同じレベルであるならば“後者の魔法”は最新環境でも問題無く使えるって訳よ。

 そして今この瞬間は、炎迅よりも炎輪の方が現状への適正がある筈だ。

 さっきのあの落雷は、俺を狙った攻撃ではなかったから直撃せずに済んだものの⋯⋯

 正直なところ、俺の反応速度と身体能力でアレを避けるのは不可能だろう。

 しかし。どうせ躱せないのなら、速度は捨てて防御を上げ、被弾上等で戦略を組むまで。

 勝負はここからだ。

 

「──行くか」

「「「ーーーー!!!」」」

 

 オーガへと駆け出した俺に、帯電水蛇達が一斉に牙を剥く。

 ⋯⋯凄いな。まるで本当に生きているような威嚇の仕方だ。

 先程もオーガが手を振る合図に反応して攻撃してきた感じに見えたし、あの水蛇達は自律型なのだろう。

 セラフ以外の神将達といい、さっきの亀の化け物のといい、オーガは生物を模した能力を多く持っているようだ。

 

「ふんッ!!」

 初手は飛連拳(ひれんけん)。行く手を阻む水蛇達を全て散らす。

 巨体に空けた穴を通り抜けて、このままオーガに──っと、また神玉(しんぎょく)が防御に出てきやがった。しかも三つ。

 これまでの攻防で、接近戦では分が悪いと判断したのか?

 くそ、プライド高いくせして変に判断力は冷静さを維持してるの腹立つな⋯⋯。

 あーもう! 全部の神玉を弾き飛ばしたと思ったら、水蛇の再生が完了してるじゃねーか!

 ンのヤロー、次に引っ捕まえた時はボコボコにしてやるぞ。

 

「「「ーーーー!!」」」

「ぬう──ぅらぁあ!!」

 

 〘火威矛(ビーム)〙を薙ぎ払い、取り囲んできた水蛇を両断する。

 ⋯⋯効果は薄いようだな。断面が即座に接着して元通りになりやがった。

 飛連拳で全身を攻撃した時の方が、まだ再生に時間は掛かっていたぞ。

 

「「「ーーーー!!」」

「うおっ、」

 一斉の雷撃が三方位から迫る。

 ⋯⋯あれ? 思ったより遅いぞ。オーガの落雷と比べると、炎装すら使わずに躱せそうな速度だ。

 しかも、攻撃範囲こそ広いが稲妻が枝分かれる間隔が広くて全然当たらない。おっしゃラッキー!

 

──バヂィィーーーーンンッッッ!!!!

 

 直後の落雷に、俺はモロに直撃した。

 思わず空を見上げると、先程と同様に暗雲の隙間から四足獣──技名からして麒麟(きりん)か──が次々と出現していた。

 ⋯⋯それも、控えめに見積もっても毎秒1〜2体のペースで。

 あぁ、くそ。ちょっと考えればすぐに分かっただろーが俺のバカ。

 取り囲んだ上での範囲攻撃、ワザとらしく空いた安全地帯、まんまとそこに逃げ込んだ俺!

 完璧に誘導されやがって、なにがラッキーだよアホ!!

 

「❨天駆雲麒麟(てんくうきりん)──白尽(はくじん)❩!!」

 

 手を掲げたオーガが、空高く叫ぶ。

 ゾッとした。全ての麒麟に睨まれたような気がして。

 

「⋯⋯っ!!」

 

 無意識に、俺は炎迅形態へと移行していた。

 避け切れる自信など無かったが、一個の生命としての意識が炎迅が最適解であると弾き出していたのだ。

 あれは⋯⋯ダメだ。被弾上等とか言っている場合じゃない。

「「「ーーーー!!」」」

「うおっ⋯⋯!?」

 

 このタイミングで、水蛇による強襲だと⋯⋯!?

 不味い、上空への警戒が解けないっつうのに!! くそっ、このッ、邪魔だ!!

 水蛇を消し飛ばすべく飛拳を連打する。──が、その効果はほぼ皆無であった。

 オーガの神玉五つが、水蛇を防御すべく飛び回ったからだ。

 その結果、与えた被害は1体の水蛇を霧散させる程度に留められた。どころか、神玉も俺の妨害を開始した。

 更には水蛇による雷撃が神玉に当たると、電流の方向を俺へシフトさせて攻撃してくる始末。

 

「チッ、嫌がらせばっかりしやが──うッ!?」

 

 上空へ警戒を置きながら回避に専念していると、突如として足元から全身に電撃が走る。

 見やると、先程に霧散させた水蛇が小型で無数の蛇となって俺の右脚に絡み付いていた。

 くっ、足が痺れて思うように動かせない。上空を警戒するあまり、足元が疎かになっていたか⋯⋯!!

 

「このッ、クソジジイ!!」

「これで終いじゃな。死ねい、燗筒(かんとう) 紅志(あかし)

 

 苛立ちのあまり、俺がなりふり構わずオーガへ突撃しようとした──次の瞬間。

 オーガが、今まで掲げていた自身の手を振り下ろした。

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