──
──燗筒 紅志⋯⋯己を呪うがよい⋯⋯。
──いずれ世界の災いとなる者よ⋯⋯!!
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決着は着いた。俺達の勝利だ。
ゼルが「オーガの反応が完全に消失した」とアリアに伝えている。
戦場の跡地では、不完全燃焼だと愚痴を零す者や、それならばと喧嘩を売る者や、さっさと帰路に着く者や⋯⋯
実に様々な反応があった。だが、この決戦に対する感想の多くは「退屈」という旨のものであった。全く恐ろしい連中だ。
リゼさんから聞いた話だと、ヴィルジールは既に傷を癒され
例の黒竜三匹も大事は無く、ついさっき雷の様な龍──エレクという名前らしい──と追いかけっこをしていた。
戦闘中、リゼさんとテュラングルを妨害したあの黒龍については、今後ドラゴン族で裁判のようなものにかけるらしい。
知能が高いとはいえ、魔物の中でもそういった考えというかやり方というのがあるのは驚きだったな。
転生者の面々とも話がしてみたかったが、“事後処理”や“後始末”やらの話題で持ち切りで会話に混ざれなかった。
どうやら、元凶であったオーガを倒せばめでたし、という訳でもないようだ。
まぁそりゃあそうか。根源を断ち切ったから全て解決なんて都合が良すぎるだろう。
⋯⋯しかし、それでも、これ以上の被害はもう生まれないと考えれば結果としては十分であろうというもの。
きっと世界は、今日という日を境に大きく変化していくのだろうな。
これにて皆がハッピーエンド。⋯⋯はてさて。そんな中で、俺はこれからどうなるかなぁ。
「──疲れた?」
「ん、まぁぼちぼちってトコだな」
胡座をかいて空を眺めていると、アリアが歩いてきた。
各方面への報告や連絡は済んだのだろうか? 俺の事なら、別に後回しにしてくれて構わないんだけどな。
今はしばらく、色んな事をゆっくりと考えて整理する時間が欲しいし。
「⋯⋯浮かない顔だけど、何か考えてる?」
「ああ、ちょっと色々とな。これからどうするかとか、どうなるかとか、何をすべきかとか。
⋯⋯そうだ。結局、俺の力はもう完全に消滅したって解釈でいいのか?」
「その件については少し長くなるから──よっこいしょっと、お隣失礼。まぁ、一からじっくり話そっか──⋯」
⋯──魔力は、所有者によって必ず違いがある。DNAのようにね。
特に、“魔力の質”が一定以上の者においては、魔力自体に何らかの特性が現れたりするんだ。
例えば氷を操るリゼちゃん。あの子なら、その魔力は冷気のような働き・作用を持っている。
そして、テュラングルなら火炎。紅志の能力である炎装も、彼の魔力を貴方が取り込んだ事で発現したよね?
本来なら、例えばエネルギー補給の為に魔力を摂取しても、その魔力は摂取した者の側に適応する。
だけど、自身より質の高い魔力を吸収すると、した側がその魔力に適応する為に変化するんだ。
──魔力を能力に変換する器官。
この魔力変換器官の事を、人間の研究者は【
その【魔創器】。紅志なら魔力を炎装という能力に変換していたそれを、私の力が変化させてしまったんだ。
テュラングルの魔力に紅志が影響を受けた時よりも、遥かに大きな“書き換え”をね。
紅志はオーガとの決着をつける時、あの魔力によるエネルギー砲を──えっ??
あぁ、ビームねビーム。ふふふ、間違えないようにするよ。
で、そのビームを最後の一撃として選んだでしょ? それも多分、ありったけをぶつける勢いで。
あの選択はさ、紅志にとって膨大な私の力を放出する為に、【魔創器】を完全に書き換える事に繋がったんだよ。
一時的に紅志に私の力を融合させる以上、そうならないよう対策は組んでたんだけど──
いや、これは言い訳だね。紅志の力が失われる可能性があったのなら、私がもっとちゃんと考えるべきだった。
ようやく目の前に訪れたオーガとの因縁、その決着に、私も目が眩んじゃったのかも。
⋯⋯ん、気にしてないって?
紅志、そういった気遣いなら⋯⋯。──いや、貴方の事ならそれが本心なんでしょう。
ふふ、また救われちゃったよ。ありがとう。
話を続けよっか。
私の力をビームとして出力全開で放出するにあたって、紅志の【魔創器】はそのビーム
膨大な私の力を放出するには、それを支える紅志の肉体が総動員される必要があった訳だね。
それで⋯⋯なんだけどね。ここからが肝心なんだよ。
私の力によって、紅志の炎装を生み出していた【魔創器】はビーム用へと書き換わった。
そしてその上で、あの一撃の出力に書き換わった紅志の【魔創器】が耐え切れなかったんだ──⋯
「⋯──つまりは、【魔創器】の魔力回路が
「それっていうのは、つまるところ⋯⋯俺はもう、再起不能って事なのか⋯⋯??」
「いいや、それは明確に否定しておく。少し時間をくれれば、私やアインで元通りにするよ。
なんなら、前よりパワーアップさせよっか? この戦いでの紅志への報酬の一つとしてさ」
「あー⋯⋯なるほど、そう来たか。ちょっとそれは一旦保留にさせてくれないか?」
俺の返答に、アリアは首を傾げる。
まぁ言わんとする事は分かる。頑張った見返りは欲しいだろうと、力が使えなくては不便だろうと、そんな具合だろう。
けど⋯⋯まず第一に、見返りなら既に貰ってるんだよな。
魔王城での鍛錬の日々は、強い肉体だけでなく多くの技術や知識を得させてくれた。
この世界へ転生した俺を奴隷や手駒の様に扱うのではなく、あくまで自由意志を尊重したやり方で導いてくれた。
これ以上の見返りなんか、求める必要すら無い。
それに──力が使えなくなったのも、案外悪くないと思っているんだよな。
そりゃあな、“元通りになる見込みがある状態”にまでは回復させて欲しいよ。
だが、それ以上はいい。
また一から再出発すると考えてみるとさ、結構ワクワクしてくるんだよ。
今までの経験を踏まえた上で切るリスタート、それによってどれだけ成長できるのか。
フフ⋯⋯早く後始末とかが終わってほしいなぁ。
「⋯⋯まぁ、紅志は紅志のやりたいように、ね。何か相談とかあれば、いつでも付き合うから声を掛けてよ♪」
「あぁ、分かった。それなら早速──」
「あっ、ゴメン。最後に一つだけ。
「あのコ⋯⋯?」
ちらりと、アリアが目線で俺の後方にいた人物を差す。
輝くような薄緑と金色のオーラを纏い、その背にはオーガと似た煌めく
少し違うのは、オーガの光背が紋様が彫られた円形であったのに対して、
純白と金色の装束に、透き通るようで眩いごく淡い緑の髪、そして繊細かつ鮮明な虹色の瞳──。
背格好10〜14歳程に見えるその少年の特徴は、俺が聞かされていた「真なる神」のそれと一致していた。
「君が燗筒 紅志くんだね。アリア達から既に話を聞いているよ。全ての『世界』を代表して言おう。──ありがとう」
「紅志にはもうフィリップの話はしているよね? このコがその⋯⋯って、固まってるけどどうかした?」
「えっ?? いや?? 大したことはないんだけどな??」
うん、いやホント、別になんだけど??
気になるもんは気になるから?? まぁ知的好奇心というやつで聞いてみるんだけど??
「⋯⋯彼氏いる?」
「「えっ??」」
アリアとフィリップ君の間の抜けた声。
そんな声も素敵だね。持って帰ってもイイかしら。
真なる神というだけあってホント美少年だわこのショタっ。
「あ、あの、紅志くん? なんか、その、全身を舐めるような視線はなん⋯⋯ですか?」
「えっと、紅志? 大丈夫そ?? 今のご時世、そういう嗜好は中々キビシーぜ?」
「知ったことか。治外法権だよ治外法権。というか神なんだから俺より歳は上だろ」
先に言っておくが、俺はショタコンではない。
俺はただ、若くて可愛い男の子の、幼げな顔とかほっそい腕とか腰とかに愛着が湧くだけの一般人だからな。
おっ、引いてる顔も魅力的。後ろから抱き上げて耳を甘噛みしてもいい?
「目がビキビキ⋯⋯こわい⋯⋯」
「フィ、フィリップ。大丈夫、アリアおねーちゃんが守るからね。と、兎に角、話があるから少し落ち着いてさ、ね?」
アリアの背に隠れるフィリップにスマイルを向けつつ、その場に座った俺は一先ず話を聞くことにした。
何故かは不明だがフィリップは怯えた様子で、今後の世界について話を始めるのであった。