猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第47話・ゼクス集結

 

 

『⋯恐らく、迎撃戦に参加する関係者が揃う筈だ。

そうなれば、何かしらの重要事項を伝えられる可能性も高い。各々気を抜くなよ──⋯』

 

 

クローネギルド、集会所の3階。

特別会議室と呼ばれる部屋で、サンクイラはハクアの言葉を思い出していた。室内には数多くの冒険者達がおり、そのどれもがかなりの手練である事が理解出来たからだ。

 

(うぅ、緊張するなぁ⋯)

 

 

強ばる表情を、何とか元に戻そうと奮戦するサンクイラ。

しかし、彼女の緊張は次の瞬間、突如として驚愕によって塗り潰される事となる。

 

 

「よぉよぉ!ヴィルジール!」

 

とある人物が、大声で自身の隣りにいる男を呼んだ為だ。

 

 

「おう。久し振りだな、ファリド」

 

「お前もな〜ヴィルジール。元気にやってたか〜?」

 

 

親しげにヴィルジールの背を叩いたのは、薄緑髪の男だった。

右サイドを刈り上げており、そこにはドラゴンのタトゥーが。後ろの髪を丁寧な三つ編みにし、散瞳気味の緑眼を持つ男の名は、ファリド・ギブソンだ。

 

 

「ンお?キミがサンクイラちゃんか〜、よろしくね〜」

 

「え、ちょっ⋯⋯どうも」

 

 

チラリと、サンクイラはヴィルジールに視線を送った。

自身の顔面のギリギリまで顔を近づけてくる、このやべぇ男は一体何者なのか、と。

 

この男がファリド・ギブソンという冒険者という事は、サンクイラも知っていた。だがしかし、聞いた話では、優しい雰囲気の頼れる男だと思っていたのだ。

 

「ヴィルジールから話は聞いてるよ〜」

 

「あ、あはは⋯⋯」

 

 

明らかに、どう見ても、変人。

ソールの様なタイプとも違う、サンクイラには少々苦手な相手だった。

 

 

「アナタがファリドなのね?よろしく、シルビアよ」

 

「お〜!シルビアちゃ〜ん、よろしくね〜」

 

 

シルビアが出した助け舟に、素早く乗じるサンクイラ。

ヴィルジールを挟んでファリドの対角線上に移動した彼女は、ヴィルジールの袖口を摘んだ。さながら、迷子になるまいとする娘の様な光景に、シルビアは微笑む。

 

しかし、シルビアは単に割って入っただけでは無かった。

このファリドという男に、強い興味があったのだ。

 

「キミの事も聞いてるよ〜。5ヶ月足らずで『ここ』まで来たんだって〜?」

「あら、光栄ね。あの【狂突(アクセル)】に認知してもらえているなんて」

 

 

狂突(アクセル)】、ファリド・ギブソンに付けられた異名である。

正確には、ファリドが使用する大槍の名なのだが、彼の戦闘スタイルと相まって今では異名扱いなのだ。

 

その戦闘スタイルとは、至ってシンプル。

大槍を構え、敵に、まっしぐらに!⋯突っ込むだけである。

 

脳筋な手段と取れるが、その通り。

火炎も、氷塊も、雷撃も⋯⋯。あまつさえ毒霧や、触れれば即麻痺の棘ですら、強靭な脚力と豪快な腕力にものを言わせて突っ切る。文字通り、一点突破の戦法なのだ。

 

故に狂突、故に『最強の男』なのである。

 

 

「ハン、異名だなんて。そんなものは飾りさ。⋯俺は、俺のやり方で勝ってきただけさ。そして生き延びてきた」

 

「⋯⋯流石、ね」

 

 

変人的な雰囲気から一転、ファリドは真剣な声色で話す。

その様子に、シルビアは思わず胸を震わせていた。()()()()では、惚れたと言ってもいいだろう。同じ冒険者として、『ゼクス最強の男』に。

 

 

「⋯あン?ヴィルジール、俺の親友はどこなんだ〜?」

 

 

と、唐突にファリドは首を回した。

彼が言う親友とはソールの事で、被弾を恐れず魔物に突っ込むという点で、互いに気があっているらしいのだ。

 

「アイツなら下で寝かせてるぜ。ひでぇ酔いだったんでな」

「ぬぁにぃ!!?あんの野郎、この俺をボッチにするなんて許せん!引き摺ってでも連れて来てやるッ!」

 

 

そう言うと、ファリドは勢いよく会議室の扉へ向かった。

『どうせ起きないと思うぜ?』という、ヴィルジールの言葉をスルーし、力強く扉のハンドルに手を掛けるファリド。

 

⋯が、次の瞬間。

 

 

──バタァァァアンッッ!!

 

 

会議室の扉が、うねりながら開いた。

扉の目の前にいたファリドは顔面モロに直撃で、派手によろめく。といっても、ダメージなど受けてはいないが。

 

 

「ンググ⋯⋯誰だ、俺のハンサムな顔に酷いコトしやがったのは?」

 

「あらあら。扉の向こうに気色の悪い魔力を感じたものだから、つい蹴っ飛ばしてしまったわ。ごめんあそばせ〜」

 

 

自慢である黒紫の長髪を、片手で大袈裟に()きながら登場したのは、ゴスロリ姿の少女だった。正確には、ゴスロリ風の防具を身に纏った成人女性(25歳)であるが、そこはツッコんではいけない。趣味とは人それぞれにある物なのだ。

 

 

「俺の魔力が気色悪いだ〜?言ってくれるじゃねぇ──」

 

「アンタの事じゃないわよ、ハゲ」

 

「コレはハゲじゃねえ!」

 

 

小学生の様なやり取りをする2人だが、少女の方はファリドに関心は無い様子。部屋を見渡す彼女は、ある相手を探していた。そしてどうやら、見つけたようだ。

 

 

「いいか?このイカす髪型はなぁ、俺の生き様を表す──」

 

「ソールを呼びに行くんでしょ?会議が始まる前の方がいいんじゃない、ファリド?」

 

「あぁそうだった、いっけねぇ」

 

 

荒ぶるファリドを諭したのはシルビアだった。

ファリドが部屋を出て行き、少女との間に生まれた静寂の中、シルビアはゆっくりと歩を進める。

 

 

「あらあら。また乳房が邪魔そうに育っていること」

 

「うふふ。アナタはこの邪魔な物が無いものね、羨ましいわ」

 

距離が縮まる2名、散る火花(幻覚)。

 

「あらあら。王子様を別の娘に取られているようだけど、捨てられちゃったのかしら?」

 

「うふふ。心配してくれてありがとう。それより、アナタの王子様はいつ現れるのかしらね。アタシ心配だわ」

 

 

立ち止まる足、衝突する視線、漂うドス黒いオーラ(幻覚)。

 

 

「⋯⋯ねぇ、聞こえなかったの?捨てられちゃったみたいね、オバサン♪」

 

「⋯⋯粋がるのも程々にしなさいね、このクソガキ♪」

 

 

本性表した女達は、今や暴発寸前。

彼女達の周囲にいた他ゼクスメンバーは既に距離をとり、巻き込まれないように退避していた。

 

それは、魔物との戦闘時、強力な攻撃の予備動作を察知して予め退避しておく、冒険者ならではの危機回避能力である。

 

 

「あ、あの人って⋯⋯」

 

「お、知ってるのか?サンクイラ」

 

「アイリス⋯⋯アイリス・セレンスティナさんですよね?魔法の扱いなら、ゼクスの中でトップクラスの⋯⋯」

 

「そうだ。歳はお前と1つしか変わらねぇし、色々手本にさせてもらえ」

 

 

手四つ状態のシルビア達を遠目に、尊敬の眼差しでアイリスを見つめるサンクイラ。そんな彼女の頭を、ヴィルジールは父性溢れる気持ちで撫でる。

 

 

「それじゃ、俺は色々会っておきたい奴がいるし、お前も適当に挨拶しとけ」

 

「あっ、はい!分かりました」

 

 

サンクイラと別れ、ヴィルジールは会議室内を回る。

友人なのか、見知らぬ冒険者と楽しげに談笑するシュレン。女性冒険者達の中心で、何やら自慢げに話しているニナ。別の眼鏡の冒険者と、難しい表情で話し込むハクア。

 

久しく会っていなかった仲間との再開を楽しむ彼らを見ながら、ヴィルジールは一頻り歩いた。そして最後に、ボロボロになっているシルビア達の元へ来た彼は、静かに口を開いた。

 

 

「総員集結、だな」

 

「「⋯⋯は?」」

 

 

ヴィルジールの視線の先には、会議室の扉があった。

そして扉の向こうには、ソールの片足を右手に掴んだファリドの姿が。

 

冒険者改め、全ゼクスメンバー23名が集結した瞬間である。

かくして、迎撃戦への体勢が整い始めた王都は、数々の思惑の中で激動するのであった。

 

そして、銀槍竜もまた──

 

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