【黒異種】⋯異例の、複数が統一した呼称の種族。
ドラゴン種や人獣種等と違い、骨格や能力が全くの別物であるにも関わらず、奇妙にも多くの類似点が見受けられる未知の魔物達である。
現段階では、竜型と獣型の2種類のみ確認されている。
しかし、学者達の間では未だ発見されていない系統が存在するとされており、黒異種の研究には多くの課題が生じている。
これにより、冒険者ギルドは調査団を設立。
各国の有識者・学者らと共に、黒異種解析に尽力をしている。
現在は、王都・クローネで決行予定である、魔軍迎撃作戦でのサンプル回収が最優先事項である──⋯
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「──で、どうする気?戦力差は3400よ?」
シルビアは珈琲を一口飲むと、コチラを見て尋ねた。
俺が返答するより早く珈琲へ視線を戻したのは、予想外の美味しさだったからだろう。
「まぁ⋯どうにかなるだろ。ゼクスと俺で24人だし、1人辺り100体くらい倒せば」
「いや、アンタがアタシ達と変わらない働きでどうするのよ、銀槍竜。1000体くらい、パパっと蹴散らしてちょうだい」
「無茶言うな」
王都・クローネ、西側商店街。
庶民向けの、ちょっとした雑貨や日用品を扱う店が並ぶその通りのカフェで、俺とシルビアは駄弁りながら寛いでいた。
というのも、以前から思っていた『珈琲の楽しみ方を増やす』という目的の為に市場に来たはいいが、広すぎて目当てである砂糖やらミルクやらが中々見つけられなくてなあ。
結果から言えば買えたんだが、ちょっと疲れたのでこうして一休みしているってワケだ。
⋯⋯。
ただ⋯⋯⋯⋯⋯
「⋯⋯⋯⋯いつまで着いてくんだよ、アンタ」
「釣れね〜コト言うなよぉ〜。1回だけでいいからさぁ〜、俺と
コイツに付き纏われてるんだよなぁ、昨日の会議後からなぁ。
確か、ファリド・ギブソンとかいう名前だった気するが、この男はマジでヤバい。ずーっと近くにいるんだもん。怖すぎる。
昨日なんて、俺の部屋にノック無しで入って来たかと思えば、『今度の作戦で背中を預ける相手だし〜、信頼できるか確かめさせてくれよぉ〜』だってさ。
しかも、眠いから今度にしてくれ〜って適当にあしらったら、一晩中部屋の前で待機してたっぽいし。なんなんコイツ、マジで。
「なぁ〜銀槍竜ちゃあん〜!」
「誰が銀槍竜ちゃんじゃい!」
まるで酔っ払い。
俺の首に腕を回したファリドは、そのまま崩れるように体重を掛けてきた。周囲の視線がハンパなく痛いが、俺からすればそれどころでは無い。更に悪い事に、この現状の要因となる人物が、実は『もう1人』いるのだ。
「いいじゃない。悔しいけど、アタシじゃアンタの全力は引き出せなかったし⋯⋯。見てみたいわ、
「オッ!いいねぇ、
とまぁ、この通りシルビアまでも肯定派なのだ。
いやいや、そこは止めて欲しいぜシルビア姉貴。
「頼むぜファリド。また今度で、な?」
「いつ!いつだ!」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯いつかだ」
「なんだとぉぉーー!?」
のらりくらりと躱す⋯ともいかず、俺に覆い被さったファリドは駄々をこね続けた。流石に不快感を覚えた俺は、自分の魔力へ干渉を始める。しばらく拘束し、その間にトンズラしようと考えたからだ。
だが、ここで動いたのがシルビアだった。
彼女の、次に放ったセリフは、俺の心理を大きく揺るがせる事になる。
「じゃあ、アンタはどうして戦いたくないのよ?」
「⋯⋯え?」
──どうして戦いたくないのか──
迎撃戦が控えているから?
列車での旅で疲れているから?
ファリドに恐れをなしているから?
(⋯違う)
そう。
考えれば、全部違うのだ。
即ち、戦いたくない理由など無かったのである。
「⋯おッ♪」
「あらあら⋯」
俺は、嗤っていた。
それが魔物としての本能によるものだという事は、言うまでもないだろう。冷静に考えてみれば、ギフェルタを立ってから約1ヶ月間⋯⋯ロクに戦闘などしていなかったかもしれない。
今まで、『迎撃戦が控えている』と、自分に言い聞かせていたが⋯⋯やっと思い出せた。
「──言っておくが、ファリド・ギブソンは負傷の為、迎撃戦不参加⋯⋯なんて事になっても知らないからな?」
「く〜〜ッ!!お前、マジで最高だぜ!」
「⋯⋯決まりのようね」
俺の意図を理解したファリドは、満面の笑みで立ち上がる。
その様子を見ていたシルビアは、静かに、そして眩く目を輝かせた。
S2個体【銀槍竜】VS【
滾る両雄の、前哨戦が始まろうとしていた──