王都・クローネ、特別訓練場。
ベルトンと同様、街の外れにあるその訓練場には
「いい?ルールはさっき言った通り、3点先取した方が勝ちよ」
僅かに風が吹く、訓練場中心。
ベルトンの3倍もの広さを誇る訓練場のど真ん中で、シルビアは改めて確認を取った。ファリドと銀槍竜の試合を、彼女は審判として見届ける事にしたのだ。
「攻撃は、頭と心臓はダメ。⋯要は、
殺してはいけない。
そのルールに、シルビアの両側に佇む者達は嗤った。『殺さなければ何をしてもいい』というのが、このルールの本質と理解したからだ。
「⋯一応聞くけど、どれくらいまでがセーフなんだ?」
だが、これはあくまで『試合』という名目。
大いに乗り気であった銀槍竜も、ここで1度踏み留まった。
「心配すんな、銀槍竜ちゃん!死ななきゃオッケーなんだよ!」
しかし、ファリドがそれを強引に引き込む。
『いいこと教えてやる』という前置きの後、彼は王都の冒険者について、1つ話をした。そして⋯⋯
「成程⋯。それなら、心置き無く戦えそうだ」
「だろ、だろ、だろ?!さっさと始めようぜ!」
ものの30秒で元人間である銀槍竜を説き伏せてみせた。
話に納得した銀槍竜を見て、ファリドは素早く武器を構える。新品のおもちゃを前にした少年の様に目を輝かせ、彼は自慢の槍を超高速で振り回した。
それはもう、一種の狂気さえ感じさせる迫力。
少なくとも、同じゼクスであるシルビアが、高速で動く槍の正確な位置を把握出来ない速度だった。
「シルちゃーんッ!早くしてくれーッ!!」
「はいはい⋯。アンタは?準備はいい?」
旋風を巻き起こすファリドから、シルビアは首を動かす。
反対方向へ視線を移動させた彼女は、直後に飛び込んできた光景に喉を鳴らした。
「──勿論、万端だぜ。
「⋯素敵ね」
銀 槍。
シルビアの視線の先で、竜は己の武器を無数に展開していた。それも、浮かせた槍を背景に、いつでも始められると言わんばかりの低い構えで。
「⋯最後に。何か質問はあるかしら?」
「「ない」」
煮え滾る溶岩が如く、灼熱の闘気を放つ2匹の雄。
最早待ったなしの状況で、両雄に挟まれるシルビアは胸を高鳴らせた。自身の想像の及ばぬ相手達の衝突と、それを最も近くで見届けられる事に。
「では、2人とも。全力を尽くすように⋯!」
「「⋯⋯⋯⋯⋯」」
──言われるまでもない──
2人は、それを構えと態度で示した。
口角をごく僅かに上げ、槍の回転をピタリと止めるファリド。瞳孔を狭め、全ての銀槍の
二言は無い。
戦いが始まる。ただ、それだけである。
「「「⋯⋯⋯⋯」」」
風が止んだ訓練場は、不気味な程に静かであった。
「──始めッッ!!!」