猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第64話・迫る、本番

「──ほら、早く早く!」

 

「待ってちょうだい。荷物、多いんだから!」

 

 

母娘と思わしき2人が、魔道列車へと乗り込む。

彼女らだけでは無い。王都内ほぼ全て人々が、列車への乗車を開始していた。迎撃作戦が始まる王都から『万が一』を考え、避難する事を選択したのである。

 

 

「⋯フン、いらぬ心配だ。我々が対応に当たるというのに」

 

 

腕組みをしつつ、ハクアは眉を(ひそ)める。

続々と列車に乗り込む人々を見て、不快感を覚えている様だ。

 

 

「まぁ、しょうがないじゃない。戦えないもの、彼らは」

 

小刻みに足を揺するハクアの隣に、ニナが並ぶ。

腰に片手を当てる彼女は、避難する人々を眺めると、静かに笑みを零した。

 

 

「──ニナちゃん、何笑ってるの?」

 

 

ニナの傍らから、サンクイラがひょっこりと顔を出す。

笑みを浮かべるニナに疑問を持った彼女は、後ろで手を組んで尋ねた。

 

 

「⋯いえ。ちょっと、楽しみになってきてね」

 

「ええ!ニナちゃん、バーサーカー!」

 

「──ハッ。戦いが嫌いな冒険者なんているワケねェだろ」

 

 

ズシンと大槌を担ぎ、ソールがニナ達の後ろに立つ。

静かに冒険者を語る彼もまた、ギラついた笑みを浮かべるのであった。

 

──そして、

 

 

「あら、珍しい事もあるのね。ソールの意見に頷けるなんて」

 

「いやいや、シルビアさん。ソレ、失礼ですから⋯」

 

 

シルビア、シュレンも続いて合流。

彼らは、来たる迎撃戦に向け、己を滾らせていた。

 

 

「⋯⋯ヴィルジールは、来るのか?」

 

「さぁね。⋯まぁ、アタシは彼を信じるわよ」

 

 

集まったメンバーを見て、ハクアがシルビアに尋ねる。

彼の質問に表情を曇らせたシルビアは、少しだけ間を置いてから返答した。

 

実は、ここ最近。

特に、銀槍竜とファリドの試合が終わってから、ヴィルジールが他人との接触を避けている傾向があるのだ。

 

理由こそ不明なままだが、迎撃戦の決行は既に直前。

他ゼクスメンバー達は、戦力の離脱を警戒していた。

 

 

「──あ〜ら、あらあら!いよいよ捨てられちゃったわねぇ!シルビア!」

 

 

軽く俯くシルビアに、甲高い笑い声が降り掛かる。

彼女が舌打ちをしつつ振り返ると、その先には、手ぐしで大袈裟に髪を()くアイリスの姿があった。

 

 

「⋯何よ、アイリス。喧嘩売りに来たの?彼は仲間を大切にする人だというのは知っているでしょう?当日は、ちゃんと来るに決まってるじゃない」

 

「はぁ〜?『仲間』ぁ?『アタシ』じゃなくて〜?」

 

「あ。アンタ、ブチ殺すわね」

 

 

取っ組み合いを始めた彼女達を見て、ハクア達は顔を覆う。

やれやれと溜息を零し、彼らは仲裁に入ろうとした。

 

だが、その直後。

彼女達の背後から、大勢が此方に向かってくるのを確認する。

ハクア達はシルビアらをスルーし、足早にそちらへ合流した。

 

 

「おうおう。スゲェな、あの女共。俺も混ぜて──」

 

「貴様はコッチだ、ファリド」

 

 

先頭にいたファリドは、シルビア達を見るなり目を輝かせる。

『お前にまで暴れられては、たまったもんではない』と、ハクアはファリドの後ろ襟を掴んで牽引。混乱を回避した。

 

 

「えぇー。いいじゃねぇかよ、インテリ眼鏡君よぉ」

 

「黙れ。いい訳ないだろう」

「⋯へぇ?じゃあ、止めてみるか?」

 

「俺が出来ないとでも⋯?」

 

 

ハクアは、自身の肩に腕を回したファリドを睨む。

あっちもこっちも不穏な雰囲気が漂い、サンクイラとシュレンは目を回す。

 

そんな2人を背景に、ニナはシルビア達の仲裁に入る。

しかし、両者の間に割り込んだ瞬間、顔面にアイリスの肘、腹にシルビアの正拳をモロに受ける結果となった。

 

あっという間に三つ巴の完成である。

 

 

「──ゴホン。話してもいいかね?」

 

 

ゼクス達の状況を見かね、ギルバートが咳払いをする。

ゼクス達は、呆れた声色で言葉を掛けられた事で、一瞬にして態度を改め、姿勢を正した。

 

 

「⋯いつからここに?」

 

「ファリド君達に続いてな。⋯⋯大丈夫かね?」

 

 

焦りを隠しつつ質問するシルビアに、ギルバートは片眉を吊り上げる。髪はぐしゃぐしゃ、顔面アザだらけな状態で、よく他の事が気にかけれるな、と。

 

しかも、よく見れば、そんな状態の者が3人もいる。

更には、冒険者と言えど、全員が喧嘩や暴力とは無縁そうな女性ではないか。

 

 

(──全く。冒険者に血の気が多いのは、今も昔も同じだな⋯)

 

少しばかり思い出に浸り、ギルバートは鼻で溜息をつく。

その様子にゼクス達はハテナを浮かべたが、当のギルバートはそんな彼らを意に返す事無く、話を進めた。

 

 

「では。各員の初期配置の再確認と、作戦展開時における役割分担の把握を旨とした、()()()()を執り行う」

 

 

会議の開始と共に、魔導列車が発車した。

 

 

 

 

 

【王都防衛迎撃作戦における、各ゼクスの配置】

 

 

『挟撃部隊・西側』

 

ファリド・ギブソン:【狂突(アクセル)】の異名を持つゼクス最強の男。

凄まじい突破力と、巧みな槍術で、強力な牽制が期待される。

 

ヴィルジール・バディスト:経験が豊富で、統率力に優れる。

戦闘能力も高く、火力としても優秀。

 

サンクイラ・ロレタード:弓の扱いに秀でた支援役。

機動力が高い為、前衛無しでも十分な活躍が見込める。

(※魔軍の停止を確認次第、後方部隊に向け合図を送ること)

 

ハクア・クレン:知識量に優れた、ゼクスの管制塔。

行動に迷った時は、彼に指示を乞うのも手だろう。

 

その他、6名:ゼクスの精鋭メンバー。

 

 

『挟撃部隊・東側』

 

ソール・ギャイアル:ファリドと同じく、牽制力がある。

体力が極めて多く、安定した火力で活躍を期待される。

 

ニナ・ソルディ:“瞬間の想定力”に特化した人物。

状況の把握処理が早い。武器の特性上、近〜中距離で戦える。

 

シュレン・バナフ:機動力こそ無いが、対複数では優秀。

使用する薙刀の刀身は、魔力の吸収の能力が備わっている。

 

(シルビア):戦闘センスが抜群で、判断能力も高い。

合流戦力として、戦況を把握してから参戦するのが望ましい。

 

その他、7(+1)名:ゼクスの精鋭メンバー。

 

 

 

【同作戦時における、各ゼクスの役割】

 

( )内の人物は、王都魔術兵器研究所職員の保護に向かう為、迎撃戦当日は防壁北門から出撃。

 

それ以外は、東門から出撃。

当日午前6:00までに現地にて集合。装備の確認を怠らぬよう、待機しておく事。

 

 

 

【同作戦時における、ツエンの配置・役割】

 

 

『後方部隊』

 

アイリスと共に、王都東側3kmの地点で待機。

アイリスによる指示に従い、遠距離魔法一斉発射。

合図があり次第、攻撃対象を上空の魔物へと限定する様に。

 

 

 

 

 

 

【同作戦時における、銀槍竜の配置・役割】

 

 

『後方、及び即応戦力』

 

アイリスと同様、広範囲且つ遠距離攻撃が可能な為、後方での火力支援が望ましい。

 

しかし、『上空の魔物が片付いた』、若しくは『前線の状況が悪化した』状況の場合は、配置場所を離れても構わない。

 

 

 

 

 

 

「⋯──以上。当日に向け、各々気を引きしめる様に⋯!」

 

「「「「「はいッッッ!!!」」」」」

 

 

会議の締めくくりに、檄を飛ばすギルバート。

ゼクス達による力強い返事を一身に浴びた彼は、ただ静かに頷く。

 

王都・クローネ。

その全てを護る為の戦いが、始まろうとしていた──

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