猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第65話・王都防衛迎撃作戦【開戦】

 

 

「──全く!この数ヶ月間、何をしておったのだ!」

 

「救助が遅すぎるぞ!これだから冒険者は使えん!」

 

 

王都北側・都外研究施設(跡地)にて。

白衣姿の老人たちは、唾を飛ばしながら怒鳴り散らしていた。

自らに施される回復魔法すら鬱陶しそうに、彼らは救助に当たる者たちを睨む。

 

 

「は?黙りなさいよ。自業自得でしょう?」

 

 

ギロリと、シルビアは睨み返す。

まぁ、睨み返すといっても、殺気満々で放ったソレなのだが。

 

 

「ひっ⋯!」

 

(⋯⋯はぁ、全く)

 

 

一瞥(いちべつ)で研究員達を黙らせたシルビアは、内心で溜息をつく。

『自分らのせいで、王都が危機なのも知らずに』と、籠る怒りを鎮め、彼女はさっさと全員の回復を済ませた。

 

 

「さ、行くわよ。──アンタ達、ご苦労さま」

 

 

ギルド職員への引渡しへ向かう直前、シルビアはある者達へと振り返る。彼らは、研究員達が実験に向かう際、護衛として付き添っていたツエンの冒険者達だ。

 

 

「「「は、はい⋯!!」」」

 

 

ツエンの青年達は、表情を明るくして返事をする。

シルビア達の後からついて行く彼らは、尊敬している先輩に認知された事で、密かに盛り上がりをみせるのであった。

 

 

(──さて。『向こう』はどうなっているかしら⋯)

 

遠くを見据え、シルビアは一人思案する。

今はまだ、任務を優先すべき状況だ。そう自分に言い聞かせる彼女は、刻一刻と迫る開戦に胸をざわつかせる。

 

彼女は、『戦場』へ向け、静かに視線を送るのであった──⋯

 

 

 

NOW LOADING⋯

 

 

 

 

⋯──王都東側、約3km地点。

『絶対防衛ライン』と決定されたその場所にて、ツエンの精鋭50名は、炎・氷・雷・風、といった様々な魔法を発射寸前の状態で待機していた。

 

遠くの空には、既に黒い斑点の様な姿が見受けられる。

空を覆う飛行型の魔物達に、ツエン達は冷や汗を流し、固唾を呑んだ。

 

そして、彼らの先頭。

そこには、黒紫の長髪を風に靡かせ、静かに瞼を閉じるアイリスの姿があった。視覚を含めて、全ての感覚を遮断する事で、『魔力感知』に意識を絞っている状態である。

 

加えて、彼女は感知の範囲を前方に限定。

その感知可能距離を大幅に拡張していた。

 

 

(──そろそろ、()()わね⋯)

 

 

ツエン達は、未だ魔物の群れを目視すら出来ていない。

しかし、この場でアイリスだけは違った。ゼクス内における『感知範囲』の平均が50m〜100mに対して、現状の彼女のソレは約1000m。実に、1kmもの感知範囲を有していた。

 

つまり、いち早く前線の様子を察知できるのである。

 

 

「全員、用意をして!私の合図があり次第、一斉発射よ!」

 

 

アイリスは、素早くツエン達に号令をかける。

『まるで津波じゃないのよ!』という心の声を押し止め、彼女も迎撃魔法の生成へ入った。

 

そして、その直後。

 

 

──ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ⋯⋯

 

 

遠くから、砂煙を巻き上げて、軍勢が出現した。

 

 

 

 

 

 

 

「────撃ってッッ!!」

 

 

アイリスの合図に、一斉に魔法が放たれる。

炎の柱、氷の槍、雷の棘、風の刃⋯⋯。それらが埋めつくす空は、これが開戦の証とは思わせぬ程に美しく、軌跡を描いた。

 

そして。

 

一際速く、そして眩く煌く銀色の雨があった。

その内の、一閃。ファーストキルを取ったソレを皮切りに、魔物の軍勢に強力な魔法が降り注ぐ。

 

軍勢の動きが、完全に停止した。

 

 

「──撃て、サンクイラ」

 

「はい」

 

 

桜色の髪を持つ少女から、1本の矢が放たれる。

上空へ向け放たれた矢が、落下に切り替わるその瞬間。

 

花火の様に、それは爆ぜた。

挟撃部隊、出撃の合図である。

 

 

「しゃアッ!お仕事の時間だぜッッ!!」

 

 

──愛槍をブン回す男。

 

 

「ハハァッ!!楽しませやがれよッ!!」

 

 

──大槌を担ぎ上げる男。

 

 

「全く。手間が掛かりそうだ」

 

 

──武器を片手に、眼鏡の位置を直す男。

 

 

「⋯⋯やるか」

 

 

──そして、緋黒の両剣を構える男。

 

 

王都防衛迎撃作戦。

その序章が、開幕した。

 

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