猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第67話・王都防衛迎撃作戦【黒異種】

 

 

一方、その頃。

各ゼクスが戦闘を開始した前線より、1km手前の地点にて。

 

 

「──☾炎槍の雨(フランツェ・レーゲン)☽」

 

 

ゼクス・魔法使い筆頭、アイリス・セレンスティナ。

上空に掲げられた彼女の両手の先に、赤く巨大な魔法陣が形成される。3mは下らないソレから、どんな魔法が放たれるのか。

後方で見守るツエン達から注目が集まった。

 

 

──ヒュウ──⋯ッ

 

 

しかし。

間が抜けた音と共に打ち出されたのは、弱々しく光る一筋の赤い閃光だった。速度こそあるものの、極めて小さなその光は、空を覆う魔物達の隙間を通り抜けてしまう。

 

 

「全員!一旦、魔法を止めて!」

 

 

呆気に取られるツエン達に、更なる衝撃が走る。

後方側の最高戦力と認識している人物が、貧弱そうな魔法を放った挙句、攻撃の中断命令を出したのだ。ツエン達からすれば、驚愕の表情を浮かべるのは当然の反応であった。

 

──だが、その時、

 

 

「全員、アイリスの言う通りにした方がいいぜ」

 

 

既に攻撃を中止していた銀槍竜が、アイリスの隣に立つ。

咄嗟の判断、という形で、ツエン達は攻撃を中止する。その直後、『魔物が喋った』という事実に、彼らは目を見開いた。

 

そして、そんな彼らに。

アイリスの魔法、攻撃の中断命令、喋る魔物の登場で情報過多になっている彼らに、更に追撃が加わった。

 

一瞬にして、空が赤く染まったのである。

 

 

──ゴオォオオォオオォ──⋯⋯ンッッ!!!

 

 

“それ”は、まるで鐘の音だった。

重く響き渡るその爆音は、戦場全体に到達する。それぞれの戦地にて赤い空を見上げる冒険者達は、思わず苦笑いした。

 

 

「──どう?願い事でもしとく?」

 

ゴスロリ風のドレスを揺らし、アイリスは振り返る。

艶やかな黒紫の髪を靡かせながら、彼女は静かに微笑んだ。

 

まるで流星群の様な、巨大な火柱の雨を背景に。

 

 

「「「「えぇえええーーっっ!!?」」」」

 

 

目玉が飛び出る勢いで、ツエン達は驚愕する。

彼らは、『精鋭』としてこの場に集められたメンバー。自身の魔法の技術にも、それなりの自信があった者達だ。

 

だが、この日、この瞬間⋯⋯彼らは思い知ってしまった。

自分達が目標としている人物が、どれ程のレベルに立っているのかを。

 

 

「すげぇな、お前。殲滅力ならファリドより高いだろ、コレ」

 

「ふんっ。当たり前じゃない。私こそゼクス最強よ〜♪」

 

 

鼻を鳴らし、アイリスは機嫌良さげに腕を組む。

何十本もの巨大な火柱が、一瞬にして上空の魔物を消し炭にする光景。それを、彼女はただ眺めていた。

 

 

「──で、どうすんだ?」

 

 

アイリスの隣で、銀槍竜は問い掛ける。

胡座をかきながら空を見上げる彼には、とある疑問が浮かんでいた。

 

 

「このままじゃ、お前の魔法が地上まで来るぞ。ファリド達に巻き添え食らわせる気か?」

 

「あらあら。この私が、その点を考えられない様に見える?」

 

 

落下する巨大な火柱、数十本。

既に上空の魔物の群れの中心部まで到達しているソレを見て、銀槍竜は腕を組む。彼に対し、魔法の発動者であるアイリスは、大きく髪を()いた。

 

数歩前へ歩いた彼女は、僅かに口角を上げる。

遥か上空で眩く光る自身の魔法。それに向け、アイリスは手の平を大きく広げる。銀槍竜含め、後ろのツエン達が首を傾げる中、彼女は邪悪な笑みを浮かべた。

 

 

「──フッ⋯」

 

 

固く、手が握られる。

それを合図としたかの様に、上空の全ての火柱が爆裂した。

球状に膨れ上がる爆発波は、それぞれが全長50mまで肥大化。

飲み込んだ全ての魔物達を消し飛ばし、収束した。

 

 

「はっ!余裕過ぎるわ、ホント」

 

 

腰に片手を当て、髪を大袈裟に梳くアイリス。

開いた口が塞がらない様子のツエン達を他所に、彼女は銀槍竜へと向きを変える。どこからともなく取り出した派手な扇子を扇ぎながら、アイリスは銀槍竜の肩を叩いた。

 

 

「銀槍竜。貴方、前線に行きたがってたわよね?」

 

「⋯いいのか?」

 

「ええ。私の力を見たでしょ?後ろの子(ツエン)達もいるし、大丈夫よ」

 

「そうか?じゃあ、」

 

 

言い終えるより早く、その場から掻き消える銀槍竜。

少々遅れて、『遠慮なく』という台詞がアイリスに届いた。

 

 

「余っ程、嬉しかったみたいね⋯」

 

 

呆れ気味に、彼女は溜息をつく。

持ち場に戻ったアイリスは、改めて上空を見上げた。

 

立ち込める黒煙と、未だ半数以上残る魔物達。

そして、その中には【奴ら】の姿があるのであった。

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