時は遡る。
それは、銀槍竜がギフェルタを立って数日経った頃まで──⋯
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「ゴホッ、⋯おぉ、また火が出た」
道端の雑草に引火したソレに、俺は土をかぶせて鎮火する。
テュラングルに角を食わされて以降、俺はこんな調子がずっと続いていた。どうにか自由自在に扱えないか模索中だが、コレが分からない。⋯なんなら、悪化している気がする。
「虎徹が焼き鳥になっちまうのも時間の問題だな、こりゃ」
「⋯ピッ?」
頭に乗る虎徹を撫でつつ、俺は歩を止める。
見上げると、太陽が真上から照りつけていた。
「そろそろ昼飯にするか⋯」
台車の後ろに回り、荷物を漁る。
朝食は通りがかった川で採った魚だったので、昼はガッツリと肉で行こう。⋯さてさて、歩いてる途中で採れた素材と調味料を取り出してと──⋯
「⋯──ふう。食ったな」
昼飯を済ませた後、俺は地面に寝そべった。
やはり、食後はダラダラと過ごすに限る。いつベルトンに到着出来るか分からないが、まぁこのくらいの休憩はいいだろう。
焦りは禁物、急がば回れってヤツよ。
「⋯⋯⋯ごほっ」
ボッ!と、視界が火の粉に包まれる。
こいつめ、ヒトが優雅に寛いでいるというのに⋯⋯。
やれやれ、真面目にどうしたモンか。
練習も何も、口から火を出す方法が分からないしなぁ。ただ咳をしてみても出せないし⋯⋯う〜む。
「ん⋯?」
頭を捻りながら、ゴロゴロとしていたその時。
俺の目に、空高く輝く太陽が入り込んだ。目が痛むのも忘れてソレを見つめた俺は、直後に飛び起きた。
「太陽だッ!」
気が付いてしまった。
『口から』火を吹く、以外の方法もあるのではないかって!
それこそ、魔法の様に『体外で』発生させてみる手もあるかもしれない!上手く出来る様になれば、生活も便利になるし!
「やってみるだけの価値は、ある⋯!!」
そうして、意外なきっかけから俺の修練は始まった。
2本の角に火が灯った事から始まったそれは、ベルトンに着くまでの約1ヶ月で、劇的な進化を見せた。
要領としては、金属生成と同じだったのが幸いだったか。
まぁ本来、俺の肉体であるグレイドラゴンは、火を扱う魔物ではないので、初めこそ苦労したが⋯。尻尾の先端から付け根、指先から肘⋯そして肩と、全身の炎上箇所はドンドンと増えていった。
──だが。
いい調子だと思ったのも束の間、俺はある事に気付いた。
「⋯コレ、結局不便じゃね?」
と。
そうなのである。
練習を重ねる度に炎上箇所が増えるので、日常生活が豊かになるもなにも無いのだ。寧ろ、下手に森の中とかで使った日にはとんでもない大火事を引き起こしてしまうだろう。
まぁそんな答えに至っている頃には、火の『放出』と『収束』の制御がほぼ出来てしまっていたが⋯⋯。
問題があるとすれば、結局口から出る火の扱いが完璧ではいってトコだ。1番使いやすそうな火の出し方だと思うんだが、中々どうして難しい。⋯と言っても、すでに咳は収まったが。
後の課題は⋯⋯
「⋯うーん、やべぇな」
周囲を見渡し、俺は頭を抱える。
久々に魔物に襲われたので、この『炎を纏う状態』を使ってみたはいいが⋯、なにやら様子がおかしい。『その状態』では、何故か肉体の膂力が格段に上がっていたらしく、周囲の地形を派手に変えてしまった。
踏み込み時に生まれた、巨大なクレーター。
単なる咆哮によって吹き飛んだ、周囲の地面と植物。
たった一発のパンチで、血の霧だけを残して消えた魔物。
そして、その一撃の余波で消滅した、後方の山の頂点⋯⋯。
呆気に取られる光景ではあるが、不思議と疑問は無かった。
そりゃあ、あの馬鹿強いテュラングルから貰った『魔力が集中してる角』を喰らったんだ。このくらい出来る様でなくては。
「⋯⋯しかしまぁ、『これ』を使っての戦闘は、いざと言う時まで封印だな」
うむ、これが最善策だろう。
下手に周囲に被害を与えては、冒険者の標的まっしぐらだし。
まぁ『この状態』の修練自体は今後も継続しようと思うがな。
何があるか分からん自然界だし、強くある事に越したことはないよな──⋯
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⋯──銀槍竜は、その後も『炎を纏う形態』について、調整と分析を続けた。そして、それに際して『炎を纏う形態』の呼び名に関しても、日々頭を捻った。
彼が注目したのは、全身が炎上している時の『感覚』。
『炎を纏う形態』は、皮膚から直接炎が出ている訳ではない。
『その形態』の発動は、まず『身体から魔力が溢れ出る』事から始まる。発動には魔力を大きく使用する為、勝手に溢れ出てるのだ。
──そして。
その『身体から溢れる魔力』に覆われた肉体は、形態の発動中は凄まじい強度を得る事に、銀槍竜は気が付いていた。仮に、それを鎧に例えた時、鎧の更に外側が炎上している事にも。
初め、その形態を炎の鎧と書いて『
改めて彼が着眼したのは、『鎧の上から身につける炎』という点だった、即ち、“防御”が安定した事による、“攻撃”についての一面についてだ。
鎧を『身に付ける』と表現するならば、武器は『装備する』のだと、銀槍竜は思い至る。まさに、炎を装備した【その形態】は火力特化であり、武器として使用する能力だからだ。
これらの事から、銀槍竜は『炎を纏う形態』に名を付けた。
文字通り、『炎』という武器を、全身に『装備』した形態と書いて──⋯
「⋯──【
「褒めんなよ。照れさせて油断させる気か?」
銀槍竜が突き出した拳を、バルドールは受け止めていた。
互いの呼吸音が聞こえる程の距離の中、両者は嗤う。
ただ、その一方で。
バルドールの頬には、僅かだが擦り傷が生まれていた。
「落胆せずに済んだか?」
「⋯⋯イイね。遊ぼうぜ」
バルドールは、頬をつたる血を舐め取った──