猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

78 / 218
第77話・狂乱、銃口、銀竜

 

 

「──お゛ぁあ゛あ゛ッッ!!」

 

「チィ⋯。なんだ、お前は」

 

 

鬼気迫る形相のヴィルジールから、バルドールは距離を取る。

この時、攻撃を受けそうだった訳でもないバルドールが、ヴィルジールから離れた理由は1つ。

 

彼のその“狂気”が、あまりに不気味過ぎた為だ。

 

 

「ハァ゛─ッ!ハァ゛─ッ!」

 

 

顔面に血塗れにし、肩で呼吸をするヴィルジール。

彼は、全身の至る所に傷を負い、最早戦闘の続行は既に不可能に近い容態である。それでも尚、彼を立ち上がらせるのは、彼の中の“執念”だった。

 

──『ゼクス最強』と呼ばれる男がいる。

その男、ファリド・ギブソンは、明確に『その名』に恥じぬ実力の持ち主だ。そんな彼を打ち負かしたのは、生後1年にも満たない魔物。つまり、銀槍竜である。

 

そして、その銀槍竜が“圧倒的格上だ”と認識している相手が、バルドールという名の男。『ゼクス最強』ですらないヴィルジールが、『ゼクス最強を倒した魔物』よりも『更に格上』の相手を前に未だ立ち続けているのは、奇跡の様な話だった。

 

“この男を殺したい”

“銀槍竜を、自分だけの獲物としたい”

 

彼の中で、“それ”は焔が如く渦巻く。

激しい痛み、肉体の悲鳴、己の理性すらどうでもいいと、彼は立ち上がり続けていたのである。

 

 

「──もうやめろよッ!」

 

 

その時、ヴィルジールの背後から怒号が響いた。

自身が生み出した血溜まりの中で、彼はゆっくりと振り返る。

視線の先には、額に血管が浮き出た銀槍竜の姿があった。

 

 

「よく分かんねぇけど、アンタもう死んじまうぞ!!」

 

「⋯⋯⋯おぉ。銀槍竜、いつから此処にいたんだ?というか、迎撃戦は終わったのか?⋯⋯あれ。お前、身体燃えてるぞ?」

 

「は、はぁ⋯!?」

 

 

酷い出血が原因か、ヴィルジールは記憶が混濁していた。

独り言の様に言葉を発する彼は、無気力に首を動かす。正面に視線を戻した彼の先には、バルドールが立っていた。

 

 

「──テメェ、どこいってやがった」

 

「⋯⋯。⋯少し、煙草を吸いにな」

 

「舐めやがって⋯⋯ぶッ殺してやる⋯!!」

 

 

ヴィルジールは、構える。

先程から、ずっと戦っていたバルドールの事すらも忘れて。

 

 

「死ねえ゛ぇ゛え゛え゛──ッッ!!」

 

 

吐血しながら斬り掛かってくるヴィルジールに、バルドールは溜息を零す。半歩分だけ下がったバルドールは、静かに口を開き、そして。

 

ヴィルジールへ、銃を模倣した右手を向けた。

 

 

「──☾邪悪な矢(ベゼ・ファル)☽」

 

「⋯ッ!?」

 

 

直後、銀槍竜は駆け出す。

その刹那に、彼らは蒼白い光に包まれたのであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。