超火力を誇る、蒼白い爆発の直後。
バルドールは、自身の周囲に張っていた魔力結界を解除する。
焦土と化した荒野には黒煙が立ち込め、数十m先の光景すら見えない状態だった。
──しかし。
バルドールには、精度の高い魔力感知がある。
例え目視が不可能な状況⋯。仮に、両目を失明した場合でも、感知の範囲内であれば情報の把握はできるのだ。
そして、そんな彼だからこそ。
視界を黒煙が覆っていようと、銀槍竜とヴィルジールがどうなったのかを知っているのである。
「なんのマネだ?」
彼の口から、真っ先に出た言葉はコレだった。
腰に手を当て、片眉を吊り上げるその様子は、彼が大きな疑問に直面している事を意味していた。
「⋯⋯今のは、やりすぎだ」
徐々に晴れる黒煙の中から、銀槍竜が現れる。
彼は、両腕をクロスさせ防御の構えを取っているものの、その全身の殆どが焼け焦げていた。
かつて、火龍の王と呼ばれるテュラングルを仕留めた魔法は、現在の銀槍竜にも効果は大きかったのだ。
「⋯⋯ん?」
──だ が。
ほんの数秒が経った時、銀槍竜の肉体に大きな変化が起きる。
まるで、その身体に傷など無かったかの様に、全身が超回復を見せたのである。
それは、銀槍竜自身ですら意識せずに行った回復だった。
即ち、コレは単なる『肉体の自然回復』であり、本人も初めて知った【
「ただでさえ硬い上に、ダメージを与えても即回復⋯。お前、ホント面白いヤツだな」
「⋯すげぇ。すげぇけど、今はそれどころじゃないぜ。アンタまさか、ヴィルジールを殺す気だったんじゃないだろうな?」
「んん〜どうだかな?⋯マァ、そいつの技量ならば死にはしない威力にしたつもりだな」
黒煙が晴れ、銀槍竜の背後にヴィルジールが現れる。
バルドールが魔法を使用した瞬間、銀槍竜が咄嗟にヴィルジールの前に飛び出した事で生まれた状況だった。
「──銀槍竜」
「何も言うな。何も言わなくでくれ、ヴィルジール。⋯俺は、アンタが分からなくなった」
目元を片手で覆い、銀槍竜はヴィルジールから数歩離れる。
ヴィルジールは、彼に言葉をかける訳でも無く、ただその後ろ姿を眺めていた。
「──で、どうする?」
バルドールは、腕を組んで尋ねる。
銀槍竜はヴィルジールから離れ、バルドールも両者と距離がある状態。この状況下での3人の位置関係は、まさに絶妙なバランスで成り立っていた。
つまり、
「⋯やめだ」
その時、銀槍竜が【炎装】を解除する。
結果、バルドールとヴィルジールの視線は彼へと向いた。
「『やめ』だと?俺は腹を斬られてるんだぜ?黙って見逃すには、事態が重過ぎる気がしねぇか?」
「ヴィルジールを見ろ、もう動ける身体じゃない。十分にやり返しただろ?」
「⋯ふん。まぁ、仮にそっちはいいとして、だ」
バルドールは、腕組みを解く。
それと同時に一歩踏み込み、彼は戦闘態勢へと移った。
「──俺とお前の決着は、まだだろう?」
「⋯勘弁してくれないか?アンタの強さは本当に凄いと思うが、今は興が冷めちまって⋯⋯」
「おい⋯⋯何を勝手に話を進めてんだ?」
ヴィルジールの額に、青筋が入る。
2人の会話を黙って聞いていた彼だったが、完全に除け者にされている事に気が付き、純粋な怒りが湧いてきたのだった。
「銀槍竜を狩るのはこの俺だ。バルドールっつったか?テメェを殺すのも俺だ。邪魔すんなら、どっちもブチ殺すぞ!!」
「おいおい。1人だけ欲張ってんじゃねえぞ、ボク。ワガママなお年頃か?」
「2人共、やめろって言ってんだろ⋯ッ!!」
表情が強ばり始める3人は、再び構えを取る。
銀槍竜は【炎装】を再発動し、バルドールは両手を銃の形に。
そして、ヴィルジールは緋黒の両剣を振り上げ⋯
焦土と化した荒野に、三つ巴が生まれた──⋯
「⋯──お楽しみ中に悪いけど、今日はここまで」
突然の声に、3名はピタリと動きを止める。
その、よく澄んだ声の主は、幼い少女であった。
白いワンピースと、同じく美しい白髪を靡かせる彼女の姿は、あまりにこの場に相応しく無い。⋯だが、そんな事など、彼ら3人からすればどうでもよかった。
年の程、8歳にも満たないであろうその少女⋯⋯いや幼女は、宙に浮いていたのだから。
「き⋯君は⋯⋯」
「やぁ、銀槍竜。久し振りだね♪」
フワリと銀槍竜の前に降り立ち、幼女は笑みを浮かべる。
状況の意味不明さに、バルドールとヴィルジールは、見守る事しかできなかった。
「突然だけど、今から私に着いてきてもらうね」
「⋯今から?何の用が──」
「
銀槍竜に手をかざし、幼女は彼を浮かび上がらせる。
真剣な表情の幼女を見て、銀槍竜は思う。
──もう、なのか──
と。