猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第79話・真実。①

 

──そもそも、だ。

俺は『世界の均衡を保つ事』を使命として、この世界に誕生させられている。この幼女も、あの老人と“何らかの関わり”があるからこそ、俺を色々サポートしてくれたんだろう。

 

⋯だが、流石に早すぎ無いか?

俺も、『いずれ大きな事件に巻き込まれるのでは?』と、考えていたが⋯⋯。まさか、もうなのか?

 

 

「──おい、待て」

 

 

事態を飲み込めずにいる中、ヴィルジールが1歩前に出る。

殺気を向ける対象を幼女に変えた彼は、睨みを強く効かせながら言葉を続けた。

 

 

「手短に頼むよ?ヴィルジール君」

 

「⋯お前、“魔族”だな?ヤツらは、人の姿に近い見た目だと聞く。俺の銀槍竜に手を出す気か?」

 

「きゃっ♪『俺の』だって、銀槍竜!ホレられてるねぇ〜?」

 

「話す気は⋯無い様だな⋯⋯!!」

 

 

ドッと、ヴィルジールの殺気が爆発する。

勢いよく踏み込んだ彼は、直後に幼女の目の前まで跳躍した。

 

だが、彼の両剣が振られる事は無い。

跳躍を終えた頃には、既に()()()()()()()()からだ。

 

 

「ふぃ〜。血の気が多いコだねぇ?」

 

 

勢い余るヴィルジールを、幼女はポスンと腹で受け止める。

彼女は、落下するヴィルジールを魔法で浮かせた後、ゆっくりと地面に下ろした。そして、地面から此方を見上げていたバルドールへと、幼女は視線を移した。

 

 

「⋯何者だ」

 

「ヒ・ミ・ツ〜♪まぁ、“魔族”ではないから安心してよ。この子を悪い様にはしないからさ〜♪」

 

「⋯⋯⋯⋯。」

 

「あっれ、疑ってる?コッチも時間無いからさ、『何かする』のなら──」

 

 

その瞬間、俺と幼女は蒼白い光に包まれる。

先程、バルドールがヴィルジールに向けて放ったソレより、遥かに眩い光が視界を覆った。⋯が、何故か爆発が発生しない。

俺は、何事かと周囲を確認する。

そして目にしたのは、あまりに不可思議な光景だった。まるで『時間が止まっている』かの様に、バルドールの魔法は動きを止めていたのである。

 

 

「──やれやれ。近頃の若いコはイカンねぇ〜?」

 

 

小さな右手を蒼白い光にかざし、幼女は(おど)ける。

完全に勢いを失った魔法を、彼女はお手玉の様に操ってみせた。

 

 

「⋯で、まだやる気?」

 

 

パチンと指を鳴らし、幼女はバルドールを見下ろす。

止めた魔法を果実の様に口に放り込みながら、彼女はバルドールの返答を待った。

 

 

「──仕方ねえな、降参だ」

 

「ん、おっけい。その潔さに免じて、“引き分け”って事にしてあげる♪」

 

 

そう言って、幼女は上昇を始める。

釣られる様に体が浮き上がる俺に、バルドールは片手を振る。

焦土と化した荒野にて俺が最後に見たのは、ヴィルジールを担ぐバルドールの姿だった──⋯

 

 

 

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「⋯──さて、何から聞きたい?」

 

「全部を、ゆっくり、分かり易く頼む⋯⋯」

 

「う〜ん。いいけど、長い話になるよ?」

 

「構わない。頼む」

 

「⋯分かった。じゃあまず、昔話から初めよっか──⋯」

 

 

 

 

⋯──きっかけは、私が犯したミスが原因だった。

『彼』の心の奥にあった怒りに気が付けなくてね。その結果、対立して戦う様な関係にまで拗れちゃったんだ。

 

まぁ、私の方が『彼』より強かったから、戦いには勝ったんだけどね。あはは。

 

⋯⋯でも、私も甘さを捨て切れなかった。

どうしても彼にとどめが刺せなくて、この胸に倒れてきた『彼』に、完全に油断してしまったんだ。

 

⋯⋯後悔しているよ、物凄く。

結果的に、私は力のほぼ全てを奪われてこのザマだからね。

 

幸いだったのは、私から力を奪った『彼』が、真っ先に『この世界』を破壊しようとしなかった事だ。⋯⋯ぶっちゃけ、全盛期の私の力なら『この世界』くらい簡単に壊せちゃうからね。

⋯本当に運が良かったよ。

 

まぁ多分、『魔王』の影響が大きんだろう。

私に匹敵しうるヤツだし、『彼』も私の力を奪ったとはいえ警戒してたんだと思う。だからこそ、“外堀から埋める”ってやり方を取ったんだろうし。

 

でも、それが『彼』の過ちだった。

『他の世界』と『自分』に、力を使い過ぎたんだよ。

結果として『彼』は、『この世界』に戻ってきた時には殆ど力を使い切っている状態だったんだ。

 

⋯⋯ただその分、厄介な力も身に付けていたけど。

分かりやすく言うなら、『自分への攻撃を別世界へ転送する』って能力かな?⋯ね?厄介でしょ?

 

『その能力』が『彼』の周囲に張られているせいで、私はおろか『魔王』ですら手出しが出来なくなってしまったんだよ。

『その能力』は、周囲に『自動転送空間』みたいなのを作り出している訳で、破壊や無効化うんぬんの話でもないし。

 

もっというなら、『彼』と『私達』の“力の性質”の違いかな。

君も使っている『魔力』というのは分かるよね?ソレっていうのは、簡単に言えばDNAみたいに『人それぞれ、絶対に違う』ってモノなんだけど、中でも『彼』は特別でね。

 

⋯⋯え?

さっきから言っている『彼』って誰かって?

 

⋯君も知っている筈だよ。

ただ、『君にした自己紹介』とは少し違うけど。

 

『彼』も、私の力を奪って以降、『本来の力』なんて捨てちゃったからね。だから、言っちゃえば『偽物』だよ。

 

まぁ、『ギシン』ってところかな?

⋯ん?どう書くのかって?文字通りだよ。

 

 

 

 

 

 

 

偽物の神、さ。




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