猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第86話・きっかけ。

 

猛紅竜の失踪から、4日後。

一部の冒険者ギルドが騒ぎになっている一方で、当の本人達は魔王の元へ向けて歩き続けていた。

 

 

「──と、言うワケでさ。ヴィルジール君にもバルドール君にも、君に接触する様に魔法をかけておいたんだよね。結果として、君の成長は大幅に⋯⋯って、アレ??」

 

 

ふと、幼女は振り返る。

そこには、後ろを着いてきていた筈の猛紅竜の姿が無かった。

 

 

(うそッ!?え、ちょっ⋯、マジぃ!?)

 

 

一瞬にして、幼女の背筋を焦燥が駆け上がる。

だが、直後に魔力感知で猛紅竜の反応を発見。そちらへ向くと、道端の茂みを突き進んでいる猛紅竜の姿が目に入った。

 

 

「⋯何してんの」

 

「ん〜?いや、ちょっとな。多分コッチに⋯⋯」

 

 

ガサガサと草むらを掻き分け、猛紅竜は進む。

呆れる幼女などお構い無しの猛紅竜には、ある思惑があった。

正確には、思惑が『あるのかもしれない』という、曖昧なモノではあるが。

 

何故なら、『その思惑』は猛紅竜自身もよく理解できていなかったからだ。“なんとなく・そんな気がする”といった感覚で、現在の彼は突き進んでいるのだった。

 

 

「ん〜もう!時間無いんだってばー!!」

 

「少し!あと少しだけ!」

 

「じゃあ、何を探してるのか教えてよ!私が見つけるから!」

 

「いいって!後から追っかけるから、先行ってろよ!」

 

「いいワケあるか!見つかりでもしたら困るんだってば!」

 

 

やいのやいのと言い争い、幼女は猛紅竜を引っ張る。

踏み留まろうと気張った猛紅竜だったが、圧倒的なパワーの差で敗北。地面を抉りながら、強引に引き戻されるのであった。

 

 

「いーでででっ!わ、分かった!」

 

「何が!何が分かったって!?エェ!?」

 

「みっ、道草しない!ちゃんと着いてく!」

 

「──うむ。くるしゅうない」

 

 

パッと手を離し、幼女は腕を組む。

猛紅竜が掴まれていた自身の腕を見ると、幼女の手の形そのままのアザが出来上がっていた。

 

 

「⋯⋯ちぇ。コレが世界を救って欲しいモンの態度かよ」

 

「それはゴメン。いや、ホント」

 

「⋯はぁ。それで、あとどんくらい歩けばいいんだよ」

 

「ん〜⋯。()()()()だと思うんだけどなぁ?」

 

 

はて?と、幼女は首を傾げる。

“来た道も覚えていないのか”というツッコミを押しとどめ、猛紅竜は溜息を零した。

 

 

「──まぁ事情が事情だし、俺も兎や角は言わないけどさぁ?

もう少し真面目にというか、しっかりとしてくれよ」

 

「⋯ゴメンなさい。私も、テンション上がっちゃてて」

 

「そうか?あんまり、そうには見えないけどな⋯⋯」

 

「『このまま年老いて死ぬか、殺されるか』って考える日常がずっと続いていたからね。そりゃあ、内心ではウキウキだよ♪

⋯また、明日を見て生きていけるかもだからね」

 

 

幼女は、純白の髪とワンピースを(なび)かせる。

後光が差している錯覚さえ見せるその姿に、猛紅竜は──

 

 

再び、草むらを進み始めていた。

 

 

「⋯は?本気で怒るよ?いい加減に──」

 

「あぁっ!!やっぱりそうだ!」

 

 

猛紅竜が、大声で叫ぶ。

その直後、勢いよく走り出した猛紅竜に、幼女は唖然とする。

もう、1度好きにさせてやろうと考えた幼女は、ため息をつきながら猛紅竜の後を追うのだった──⋯

 

 

 

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「⋯──ご満足で?」

 

 

猛紅竜を見つけ、幼女は尋ねる。

結局、あれよあれよと走り待った猛紅竜がたどり着いたのは、小さな丘の上だった。

 

 

「⋯⋯。」

 

 

遠くを見つめながら、猛紅竜は黙り込む。

何かに見入っている様子の彼に対し、幼女は後ろから静かに近付いた。そして、彼女が猛紅竜の隣に立った時、彼が見ている光景が幼女の目にも飛び込んできた。

 

 

「⋯村、だね」

 

「⋯⋯あぁ」

 

 

なんの変哲もない村が、そこにはあった。

多少、広さがある特徴があるが、それ以外は特別目を引くモノは見当たらない。“何がそんなに気になるのか”と、幼女は首を傾げたが、それを言葉にするより早く、猛紅竜が口を開いた。

 

 

「あの村⋯⋯あの村の名前は⋯?」

 

「さぁ?私も、ここ最近は引きこもりだったしねぇ。前までは色んなトコを旅するのが趣味だったんだけど⋯⋯。まぁ、そんな話はどうでもいいよ。それで、君はなんであの村に──」

 

 

横から話し掛けてくる幼女を無視し、猛紅竜は村に見入る。

彼も、分かっていなかった。何故、初めて見る村にここまで興味が湧いてくるのか。何故、初めて見る筈の村に対して、故郷の様な安心感を覚えるのか。

 

全てが、謎であった。

 

 

「──行こう」

 

「え?」

 

「行こう、幼女。あの村へ」

 

「えぇ?ダメに決まって──。⋯もう、少しだけだからね?」

 

 

猛紅竜の真っ直ぐな眼差しに、幼女は折れる。

やれやれとため息をつく幼女を尻目に、猛紅竜小走りで丘を下る。まるで、少年の様に目を輝かせながら。

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