猛焔滅斬の碧刃龍   作:Nidhogg

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第92話・ブチギレ

 

 

──ズドンッッ!!

 

 

俺の頭上で、巨大な衝撃波が発生する。

幼女の拳とオーガの持つ杖。2つが衝突した事で生まれた衝撃波は、大気を揺らす轟音となって地上に響き渡った。

 

幼女とオーガの戦闘。

 

それは最早、俺の目で追える次元のものではない。

⋯⋯だが、それでも尚、一つだけハッキリと言える事がある。

“どちらが有利で、どちらが不利か”という疑問についだ。

 

 

「──おじ〜ちゃ〜ん?年の瀬には勝てんかね〜?」

 

「ハァ⋯ハァ⋯、黙れ⋯!!」

 

 

空中で仁王立ちをする幼女を、オーガは睨み付ける。

その気迫に応じる様に、オーガの周囲に金色の稲妻が走った。

しかし、怒りの形相とは裏腹に、彼の光背(こうはい)はエネルギー消耗を示すかの様に点滅をする。

 

俺は、心の中で確信をした。

無論、戦闘内容自体は、とても俺が把握できるモノではない。

⋯だが、2人の戦いに一瞬の膠着状態が生まれるたび、オーガだけは消耗の色を濃くしている。

 

そして、対する幼女は常に余裕の笑みがあった。

⋯となると、

 

 

(──幼女の勝ち、だな)

 

 

自信を持って、胸を張って、神に誓って、そう言い切れる。

⋯おっと。ここでの神は、あのオーガだったけか。誓うのは、幼女にでもしておこう。

 

 

「⋯今日のトコは、見逃してもいいけど。どうする?」

 

「抜かせ。貴様がこのワシに触れるなど、結局は叶わぬ事なのじゃ。そして此方は、眈々と反撃の時を待てば良いだけの話。その時が来るまで、幾年月でも待ってやろうぞ」

 

「残念だけど、仮に何兆年経ったとしてもアナタが反撃するタイミングなんて来ないよ。私のアナタとの“差”が埋まる事がないからね♪」

 

「⋯ふん。なんとでも言うがいい。貴様が吐く言葉の全てが、

“負け惜しみ”である事には変わりの無い事じゃ。()()()を使い、何を企んでいるのか知らぬが──」

 

 

その時、オーガは唐突に俺へ視線を向けた。

何やら幼女とレスバを繰り広げていたらしいが、急激に表情を変えて俺を見ている。

 

⋯いや、そんな渋い顔でこっち見んなし。

 

 

「──アルノヴィア⋯貴様、まさか⋯?!」

 

「言ったでしょ。覚悟は出来ているって」

 

「クッ⋯、させん、絶対にさせんぞぉッ!!!」

 

 

酷く焦燥を浮かべた表情で、オーガは幼女へ突進する。

再び戦闘を開始した2人を見上げながら、地に立つ俺は思う。

『あのオーガ、能力ありきの戦い方だな』と。

 

確かに、奴は“自分への攻撃を別世界へ転送する能力”とやらのお陰か、傷の一つも負っていない。⋯⋯だが、“それだけ”だ。

本当にそれさえ無ければ、どうにでもなりそうな気がする。

 

体力の底も見えたし、攻撃も単調で大味。

『相手に打たせて反撃』という戦闘方っぽいが、それも『攻撃を無効化できる能力があるから』という点に依存している⋯。

 

 

(⋯⋯大体だが、オーガという奴について理解してきたぞ)

 

 

ざわざわざわ。

心の中で潮騒(しおさい)の音が騒がしく反響する。

 

⋯⋯はは、成程。

本当に、魔物ってのは血の気が多いモンだなあ。

 

 

「──アナタとの因縁も、時期に終わる!」

 

「アーリィィーアーーッッッ!!!」

 

 

空高く、オーガの怒号が轟く。

緋色と金色の2色が、オーロラの様に煌めく中で──⋯

 

 

 

NOW LOADING⋯

 

 

 

「⋯──クソッ⋯、だあー!クソがァ!!」

 

 

額に聳(そび)える、1本の角。

漆黒の角と、同じく漆黒の肌を持つ、()()()()がいた。

 

凄まじい苛立ちに表情を歪め、音速をゆうに超える爆速で空を飛ぶこの男の正体は、何を隠そう『魔王』である。

 

 

「アイツ⋯先走りやがってコノ⋯!!」

 

 

まさにブチギレ。

彼のあまりの怒りは、巨大な魔力の渦を生み出し、周囲に大規模な被害を及ぼしていた。

 

大山脈に大海原。

全てを“突き破って”飛行するその様子は、魔王という肩書きに恥じぬ力の振る舞い方⋯⋯だが。

 

そんな男の背後に、唯一。

馬鹿げた速度と、そして莫大な魔力の奔流をものともせずに、同行する物がいた。

 

 

「──全く持って、同感でございます。あんのクソガキ、どんな風に殺してやりましょうか⋯??四肢を捻り千切り、胴には全身の穴から爆破魔法をブチ込み、生首だけにして未来永劫を生き長らえさせ⋯⋯」

 

「ちょ待てって、グレンデル。何が『同感』だよ。お前って、時々めっちゃ怖いコト言うよな?まじチビりそうになるから⋯やめて?」

 

「失礼しました」

 

 

大きく湾曲した2本角。

グレンデルと呼ばれた男は、素っ気なく謝罪をする。一応は『上司と部下』という立場がある2人だが、部下の暴言に流石の上司も引き気味な様子。

 

そんなギャグの様なやり取りの最中にも、周囲への被害は増す一方であった。

 

 

「──やれやれ。兎に角、今は⋯⋯」

 

 

そこまで言い、魔王は正面を見る。

その視線の果てしなく先。星廻龍と偽神オーガ、そして猛紅竜がいる場所へと、彼らは速度を上げた。

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