仮面ライダーΑΓΗΤΩ(アギト)   作:赫牛

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正体見たり

『人がアンノウンに!?変身の瞬間を撮った衝撃映像!』

 

 アンノウンとは我々人類の平和な日常を脅かす存在である事は周知の事実だろう。しかし、もしそれらが人間社会の中に潜伏していたとすれば、その危険度は計り知れない。

 先日筆者に送られてきたのは、その『もしも』は決して妄想と片付けられるものではないと、我々に警鐘を鳴らす映像であった。

 撮影されたのは藍御区内の公園。匿名の送り主は、愛犬のビデオを撮影していた時、違和感に気付いたのだと言う……

 

「氷川くん、何見てるの?」

 

「ああ、アンノウンについての記事ですよ。ほらこれ」

 

 携帯の画面を見せると、小沢さんは顔をしかめた。動画では公園のベンチに座っていた男が突如立ち上がると、その姿がアンノウンのものに変わっていく様が映し出されていた。

 

「氷川くん、まさかこれを信じている訳じゃないでしょうね?」

 

「え、一考の余地はありませんか?」

 

「無い無い無い。こんなのフェイクでしょ」

 

「それは分からないじゃないですか」

 

「こんな夜更けに犬のビデオ撮ってるのがおかしいわよ。シチュエーションからなってない。第一アンノウンが人間に化けるなんて聞いた事無いわ」

 

 小沢さんの言う事はもっともだ。僕だって信じられない。でもアンノウンについてはまだ解明されていない事が有るか無いかすら分からないのだ。可能性は考慮しても良いと思う。

 

「こう言うネットの情報は鵜呑みにしないって散々言われてるでしょ。自分の目で確かめてから騒げば良いじゃない」

 

「まあそうですが」

 

 この動画が本当だとして、僕がその場面に出くわせるかどうかは、また別の話である。

 

 

 

 

 

 季節に関係なく、この廊下はいつも冷え冷えとしている。

 温度が一定に保たれているからではなく、四六時中白い照明が点いているからでもなく、何と言うか、得体の知れない不気味さを感じる。ここに閉じ込められてもう何年にもなるが、不意にそう感じる事が今でもある。

 あの女がいる時なんかは特にそうだ。全身の毛が逆立つ。前から歩いてくる女の機嫌は悪そうで尚更近づきたくないが、生憎ここは一本道だ。

 女はすれ違う直前で一瞬俺の顔を見、立ち止まって道を開けた俺を無視して通り過ぎ、そして止まった。

 

「ねえ」

 

 どう考えても話しかけられているのは俺だ。

 

「何でしょう」

 

「天使の子はどうなってるの?」

 

 またそれか。

 

「申し訳ありません、こちらでは姿を確認できておらず……」

 

「ええ、ええそうでしょうね。捜索班も追えていないもの。仕方ないでしょうね」

 

 だったら俺に言わないで欲しい。

 

「でも貴方もあの子の事は心配でしょう?」

 

「心配、とは?」

 

「だって、ねえ?分かってるでしょう?」

 

 整った顔が歪む。笑っているのはさっきの発言が少なからず俺に効いているのが分かっているからだろう。自分のモノだから何をして良いと思っているのがこの女だ。

 怒りのままにこいつをここで殺してしまうのは簡単だ。しかしそうなった瞬間に真由美と里沙に張り付いた監視員が二人を殺す。流石にここからでは間に合わない。それが分かった上でこの女もやっているのだ。

 

「失礼します」

 

 故に怒りがこぼれないように、拳を握りしめて廊下を歩く。

 何が天使の子だ。俺には関係無い。

 関係無いんだ、絶対。

 

 

 

 

 

 その日も普段と同じ様にアンノウン出現の報告があり、いつもの様にG3を装着した。そしていつもと変わらず現場に出てアンノウンを探していた。

 幸か不幸か、まさか自分が『それ』を目にするなんて思ってもいなかった。

 

 

 

 

 

『……G3ユニット1に出動要請』

 

「ユニット1出動します」

 

 Gトレーラーの独特なサイレンが鳴るのが聞こえ、少しの揺れと共に発進した。機械に預けた体が青い装甲に覆われ、仮面を被ると視界に大量の情報が映し出される。機能が正常に稼働している事をチェックし、ガードチェイサーに跨る。背後の扉が開きスロープが展開する。

 

「ガードチェイサー、離脱します!」

 

 ゆっくりとエンジンをふかしてバック。道路に乗って前進しサイレンを鳴らす。装甲が重くなったにも関わらず、月明かりに照らされたガードチェイサーは変わらぬ速さで公道を駆け抜けた。

 

 

 

 

 

 目撃情報によれば敵は1体のみ。だからと言って油断してはいけない。体感にはなってしまうが、ここの所アンノウンが強くなっている気がする。単純なパワーもそうだが何より知性を感じる動きが多くなったように思う。複数体同時に相手した時などはそれが顕著で、連携の練度が段違いなのだ。G3-Χだとしても危うい時もある。

 人払いの済んだ噴水広場は水の流れる音と僕の足音だけが木霊する。

 

『解除シマス』

 

 ガトリング砲を展開しゆっくりと歩を進める。それまでは消えていた街灯がぶぅんと振動しながら点灯し、少し離れた所に倒れた誰かを照らし出した。

 それに駆け寄ろうとした時に後ろの茂みが揺れた音がした。振り向くが敵影は無く、茂みも微かに騒めくだけだった。一応確かめようと注意がそちらに向いた瞬間、背後で水が弾ける音がした。

 振り返った時には視界全体がアンノウンに占領され、アンノウンと一緒に地面を転がりそのはずみでガトリング砲が手から離れる。

 パッと見た所水棲生物の特徴を備えたアンノウンの瞳は、魚ではなく人と同じ様に僕を睨みつけている。視線が交錯した瞬間に駆け出しまた襲い掛かってくるのを警棒を抜いて防ぐ。返す刃がアンノウンの身体を捉え、怯んだアンノウンを休ませる事無く追撃を加える。そして大きく溜めた拳がアンノウンを吹き飛ばした。

 アンノウンが茂みの奥へと消え、おそらく逃げようとしているのだろう茂みをかき分ける音が遠ざかっていく。それを追いかける。羽虫が漂う草木の間を駆け抜け、開けた場所に飛び出た所でアンノウンがつまずいて盛大に転げた。

 

 

 

 そしてその姿が、ゆっくりと人のそれに変わっていった。

 

 

 

「え……?」

 

 思わず身体が固まった。そうしている間にアンノウンだったものは立ち上がり、夜の中を駆けていった。振り返ったその顔は、完全に人と同じだった。

 

『こう言うネットの情報は鵜呑みにしないって散々言われてるでしょ。自分の目で確かめてから騒げば良いじゃない』

 

 あの日目にしたニュースは多分フェイクだろう。しかし、それはその事象の実在を否定するものにはならない。

 確かに見た。見てしまった。それが有り得る事を。他でもない僕が、戦う僕が見てしまった。

 

 アンノウンと一体何なのだろう。

 ただの怪物と思っていた。それは間違いだったのか?本当は人間だったのか?

 そんな事、僕に分かる訳が無かった。

 

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