仮面ライダーΑΓΗΤΩ(アギト)   作:赫牛

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見える過去(4)

 その後目が覚めてからは立っているのがやっとでまともに動けなかった。だが動けた所で何ができる訳でもなかった。白い部屋に閉じ込められ、外に出られるのは『あれ』に関する実験の時とトイレの時だけ。まともに歩けないまま武装した男たちに無理矢理引きずられて違う部屋に閉じ込められ、あの機械を付ける。そして外されるまでの記憶は飛び飛びで、また白い部屋に連れ戻される。定期的に簡素な食事が提供され、無感情にそれを口に運ぶ。その繰り返しでもうどれ程時間が過ぎたかなんて考えるのも馬鹿馬鹿しくなった。

 姉さんと、可奈と、マナちゃんとの約束が心の支えだった。いつか会える日をただひたすらに待つ事が、まともに動けない今の俺にできる全てだった。

 

 

 

 そしてその日は唐突にやってきた。

 

 

 

 男二人に抱えられ無機質な照明に照らされた廊下を歩く。最初に比べて随分と体が動く様になったが、そうなるまで一体何日かかったのか分からない。現状なら足手まといにはならなそうだが、マナちゃんからの音沙汰が無い。

 今日もいつもの部屋。いつもの定位置。そしていつもの機械。光に包まれて俺はまたあれになった。頭が痛い。思考が流されていく。このまま俺が無くなってしまうのではないか。いつもそう思う。そしてこのまま——。

 

 

 

 助けて、翔一くん!

 

 

 

「マナ……ちゃん?」

 

 聞こえた。確かに聞こえた。俺を呼ぶ声がした。助けて欲しいと叫んでいた。

 準備が出来た訳じゃないのは分かる。これが『次に会う時』じゃないのは百も承知だ。

 でも。

 行かないと。

 

「う……おおおおおおっ!」

 

 拘束具は思ったよりも簡単に外れた。自由になった身体はこの鎧を着けているせいか、いつもよりも身軽に動ける事に気付いた。腰の機械に繋がったケーブルを力任せに引きちぎると断面から火花が散った。呆気に取られていた白衣の男達は、俺がそちらを見た事に気付いて慌てて機械を操作する。赤い光が点滅し警報が鳴る。しかしそんなものは関係無い。一蹴りで扉が吹き飛び、逃げようとする研究員達を後目に部屋を出ると、外には何人ものG3が待ちかまえていた。

 

「撃て!」

 

 何発もの銃弾が降り注ぐ。僅かに痛みを感じるが、歩みを止める程のものではない。一番前にいたG3の銃を掴み奪い取る。それでG3の頭を殴りダウンさせる。次に襲ってくる警棒を腕で防ぎ、隙だらけの胴体に銃弾を浴びせると腹を押さえてうずくまった。

 しばしの静寂。残ったG3達が困惑しているのが伝わってくる。放り投げた銃が床を転がる音が廊下に木霊した。

 

「う、撃て!」

 

 我に返ったG3達が銃を構えるよりも速く動く。一人を殴り、一人を蹴り飛ばし、また一人を突き飛ばす。反撃を受け止め、受け流し、G3の間を縫って同士討ちさせる。廊下を埋め尽くす程いたG3の内、立っているのは残り一人。

 

「おおおおおおっ!」

 

 おそらく司令塔だったのであろう最後の一人は勇敢にも立ち向かってきた。全体重を乗せたタックルを受け止め、突き放す。拳を避け、カウンターのパンチ。まだ繰り出される拳を受け止め大きく振りかぶった一撃を顔面に叩きつける。吹き飛んだG3のヘルメットは割れて装着員の顔が見える。既に意識を失っていた。

 誰も殺していない、はずだ。そんな事を気にしているよりも早く、マナちゃんの元へ行かないと。

 

 

 

 

 

 翔一くん……翔一くん……。

 騒々しいサイレンの中でもはっきりと声が聞こえる。俺を導いていた。どこに行けば良いのかがはっきりと分かった。だから入り組んだ道でも迷わずに進む。きっとあの子が待っているから。

 厳重にロックされた扉も全く意味を成さない。確実にマナちゃんに近づいているのが分かる。そして最後の扉が開かれる。

 部屋の中心には手術台に乗ったマナちゃんが苦しそうに呻いている。腕に刺さったチューブの中を血液が流れ、隣に設置されたカプセルの中にいる何かに注がれている。そしてそれを取り囲んだ白衣の人間達が、皆驚きの表情で俺を見る。

 

「どけっ!」

 

 威嚇すると白衣達はすぐに逃げ出した。マナちゃんに駆け寄って刺さったチューブを引き抜き、血が流れる腕に近くにあった布を押し当てる。顔が青ざめている。一体どれ程の血液を抜かれたのか。血が止まるまで安静にしておくべきだが、いつ増援が来るか分からない。

 

「ごめん、ちょっとだけ我慢して」

 

 布を腕に巻き、マナちゃんを背負って部屋を出る。しかし出たは良いものの、どこに行けば良いか分からない。

 

「左……左に行って」

 

「……分かった」

 

 察したマナちゃんが道を示してくれる。マナちゃんを信じて進むしか無い。

 

「そこの扉、開けてあげて」

 

 マナちゃんをそっと降ろし、扉を蹴破る。その部屋は俺が閉じ込められていた部屋と瓜二つだった。

 そして中にいたのは。

 

「姉さん!?」

 

「その声、翔一!?」

 

 やはり姉さんもここにいたのか。見つけられて安堵したが、今は再会を喜んでいる場合じゃない。

 

「逃げよう姉さん、一緒に」

 

「『その時』、が来たのね」

 

「え?」

 

「私もマナちゃんの声が聞こえたから。分かってる」

 

「……良し、行こう。行くよマナ……」

 

 振り返るとそこには誰もいなかった。

 

「翔一?」

 

「マナちゃんがいない。連れてきたはずなのに」

 

「探しましょう。遠くないはずよ」

 

 脱出するための道はマナちゃんしか分からない。それに何より、一緒に逃げると約束した。

 

「マナちゃん!どこだマナちゃん!」

 

 廊下を走り、途中にある幾つもの扉を開けて中を確認する。いない。いない。いない。

 何分経ったか、一つだけ開いている部屋があった。そして長い黒髪がちらりと見えた。

 

「マナちゃん!」

 

 中にはマナちゃん……と、こちらを訝し気に見る短髪の男がいた。どう言う状況なのかはこの一瞬では理解できなかった。

 

「翔一くん、行こ」

 

「え……」

 

 マナちゃんの声はとても辛そうだった。

 

「早く、行こ」

 

「う、うん」

 

 差し出された手を取って、俺達はまた走りだす。俺を引っ張るマナちゃんの頬に涙が伝っているのを、俺は確かに見てしまった。

 

 

 

 

 

「ああいた、良かったマナちゃん!」

 

「ごめんなさい……こっちです」

 

 姉さんと合流し、マナちゃんの案内に従って進む。何度も角を曲がり、非常階段を昇り、水道管や排気口が剥き出しになった階層の更に奥へ進んでいく。最後の階段を進んで扉を開けた先は、何度か目にした事のある光景だった。

 

「総監室……?」

 

 どう見てもその通りだった。と言う事はここは警視庁と言う事になる。何故あの施設と警視庁が繋がっているんだ?

 

「翔一くん!早く行かないと!」

 

「ご、ごめん」

 

 考えても仕方ない。部屋を出て記憶を頼りに出口を目指す。しかし階段を降りるにつれて、どう考えても悲鳴の様なものが大きくなっていく。

 

 

 

 そして辿り着いた先は地獄だった。

 

 

 

 星の見えない夜空。見慣れた警視庁のエントランスに大量のアンノウンがいる。襲われる警官とそれを助けるG3部隊。しかしG3も圧倒的な物量差に押され、既に何人かは倒れて動かなくなっていた。

 そしてその凄惨な光景の中に、似つかわしくない人がいた。

 

「可奈?……可奈!」

 

 人とアンノウンが入り乱れる間を縫い、押しのけて隅で震える可奈に駆け寄る。

 

「いやっ!」

 

「落ち着け、俺だ、可奈!」

 

「え……翔一?」

 

「逃げよう。立てる?」

 

「う、うん……」

 

 可奈の手を取って出口に向かおうとするが、そこでおぞましい光景を目にしてしまった。警視庁の入り口を埋め尽くさんばかりにアンノウンが外を徘徊していた。あれを突っ切って脱出するのは間違いなく不可能だ。

 

「上に行こう、早く!」

 

 一先ずアンノウンがいない上層階を目指す。後ろから迫ってくるアンノウンは牽制するが、窓から飛行できるアンノウンが入り込んでいない事を祈るばかりだ。

 

 何階分か階段を昇った時、先頭にいたマナちゃんが足を止めた。

 

「マナちゃん?」

 

「駄目、逃げて!」

 

 上の階から足音が聞こえてくる。ゆっくりと一段一段降りてくるその足音に混じって金属が擦れ合う音がする。何度も聞いた事もある、G3を装備している時の音だ。追手がここまで来ている。

 

「こっちだ!」

 

 逃げ込んだのは指令室がある階だった。遮蔽物が多いこの部屋ならやり過ごせるはず。照明が点いていない部屋のできるだけ奥まで行き、しゃがんで息を殺す。

 入り口の方からこつ、こつと硬い足音が聞こえる。ピンポイントでこの階のこの部屋に来ている。戦う事はできるが、非戦闘員が三人いる状態ではやり辛い。そう考えている間にも足音は近づいて来ている。いざとなれば俺が飛び出さないといけない。

 可奈の震えが伝わってくる。声をかけることはできないがせめて手を握る。大丈夫、大丈夫、大丈夫と伝わる様に。

 足音が止まる。かなり近い。ほんの数メートル先かもしれない。些細なきっかけで崩れてしまいそうな程張り詰めた空気が、更に俺達を追いつめる。

 頼む、止まれ。向こうに行け。

 足音が止まる。機械の駆動音。そして。

 

 

 

 黒い腕がデスクを叩き割り、俺の喉元を掴んだ。

 

 

 

「がっ……は……」

 

 ぎりぎりと首が絞められる。しかしそのまま絞め殺す事はせず、黒い何かは片手で俺を放り投げた。背中に強い衝撃が走り一瞬気が遠くなる。

 ぼやけた視界が段々明瞭になってくると、そこに立っている者の姿が見えてきた。

 大まかなシルエットはG3だ。しかし頭部にある3本のアンテナの内2本はG3より長く、装甲は黒く染まっている。瞳は青く、闇の中で人魂の様に揺れている。

 倒れた俺を一瞥した黒い何者かはすぐに視線を戻し歩みを進める。その視線の先にいるのは。

 

「マナちゃん……!」

 

全身に力を込めて立ち上がり、黒いG3を羽交い絞めにする。しかし簡単に振り払われてしまう。可奈も姉さんも無視してマナちゃんに掴みかかろうとするその背を捕まえるが、黒いG3が振り向いた弾みで振りほどかれ胸に強烈な一撃を入れられてしまう。今まで戦ったどんなアンノウンの攻撃よりも強い衝撃だった。

先に邪魔者を排除するつもりか、黒いG3はそのまま俺に襲い掛かる。力強く重い拳が何の捻りもなく真っ直ぐに振り抜かれ、受け流すのは間に合わず受け止めきれないまま後退る。反撃の拳は腕を取られ、脇腹にカウンターを入れられてしまう。一撃入れる事ができたが、すぐに返しの蹴りが胴に直撃した。ハイキックは腕で防がれ、連続して胴を殴りつけられ最後に蹴りで吹き飛ばされる。機械が点滅し、鎧が光に溶けていった。

呼吸が荒い。全身が痛む。暗闇に立ちふさがる黒いG3は巨人の如き存在感を放っていた。

 

「凄いでしょう、このG4は」

 

 いつの間にか入り口にあの女が立っていた。皆の前で演説してみせた時とは真逆の、獲物をいたぶり楽しむ獣の様な顔をしていた。

 

「でも本当はアギトの方が強いはずなのよ。まだ上手く使いこなせていないだけかそれとも……貴方は相応しくなかったのかもしれないわね」

 

 嘲笑う女は悠然と歩きG4の肩に手を置く。

 

「まあ貴方は正直どうでも良いの。それを持っている限りGPSで何時でも追えるし……邪魔しないでもらえると助かるわ」

 

 その言葉と共にG4がマナちゃんの腕を掴み無理矢理立たせた。

 

「放して!」

 

「連れていきなさい」

 

 G4と女はマナちゃんを連れて去って行く。追いかけたい。しかし体は動かない。

 そうしている内に飛び出していく影があった。姉さんだ。

 

「姉さん!」

 

「行かないと!一緒に逃げるんでしょ!」

 

 追いかけて指令室を出ていった。駄目だ。どう考えてもG4に勝ち目は無いのに。

 

「翔一」

 

 可奈が駆け寄ってくる。合わせた目線で何を言いたいのか分かった。

 

「行かないと」

 

「うん、分かった」

 

 可奈が支えてくれてやっと立つ事ができた。足を引きずりながら、それでも階段を昇っていく。

 昇っていく内に振動する音が聞こえた。滅多に聞く事の無い、ヘリの音だ。奴らはヘリでマナちゃんを連れ去る気だ。

 動かない体に鞭打って階段を昇る。重い扉を押し開け、屋上に出た時には既にヘリは目前まで降下しており、そして。

 

「姉さん!」

 

 姉さんは倒れ、G4が背中を踏みつけている。マナちゃんは敵の元から離れた所にいるが、状況は最悪に近い。そして近づこうとした時背後からG3が襲い掛かってきて、可奈の手を放してしまった。

 

「可奈!」

 

「翔一!」

 

 完全に孤立した俺はまともに立つ事もできず、無様に地面に倒れた。

 俺を見下ろす女が冷たい笑みを浮かべる。

 

「下は騒々しいみたいだし……もう一つくらい死体が増えても大丈夫でしょう」

 

 嘘だろ、まさか。

 

「やめろ……」

 

「撃ちなさい」

 

 何でもない事かの様に、その一言は放たれた。

 気が付いた姉さんが俺を見る。その目にはまだ光が灯っていた。

 

「翔一……」

 

「姉さん……!」

 

 手を伸ばす。

 地べたを這いながら姉さんの手を掴むために手を伸ばす。しかし伸ばされた手と手の間には、埋める事のできない絶対的な空白があった。

 

「姉さん……」

 

 助けたい大事な人のもとへ、絶望的な遅さで前へ進む。

 しかし無情にも、姉の背を踏みつけて立つG4が銃を抜く。

 

「やめろおおおお!」

 

 そして一発の弾丸が姉の背を撃ち抜いた。

 さっきまで俺を見ていたその目の輝きは、最初から幻であったかのように消えてしまった。

 

「もう良いでしょう、撤退するわよ」

 

 了解、と応える男達の声は捻じ曲がって聞こえてきた。呼吸が浅く息苦しさが、そして悲しみが込み上げてきた。そして——怒りが体から溢れ出してきた。

 体が動く。足は震えるがそれでも立てる。ゆらゆらと一歩ずつ、目の前の敵に近づいていく。

 

「まだ動くの?……始末しなさい」

 

 発砲音が空に木霊する。俺の服に血が滲む。不思議と痛くはなかった。さっきと同じ様にまた一歩踏み出す。女は明らかに動揺していた。

 

「撃ちなさい!」

 

 連続して銃弾が放たれ、全てが俺に当たったはずだ。血も流れているはずだけど、まだ動けた。機械の中心が黄金の光を放つ。大気を振動させ、微かに熱を帯びて地面を焦がす。

 G4は銃撃を止めて殴りかかってくる。迫る拳を避け、スーツが剥き出しの腹に拳を入れる。蹴りを腕でブロックし、はらい落として胴を真正面から蹴る。

 輝きは徐々に増し、そして光が暗闇を染め上げた。再び俺は黄金の鎧……『アギト』を身に纏った。

 正面からの拳を受け止め、振り払い拳で撃つ。背後からG3が振るった警棒を躱し、腕を撃って叩き落す。銃弾は鎧に弾かれ、それを放っていた銃は瞬く間に破壊された。

 蹴り、殴り、また殴る。そうしている内にいつの間にかG3部隊は壊滅していた。残るのはG4とあの女だけ。

 女はヘリに乗って逃げる体勢に入っている。それを守るようにG4は立ち向かってくる。その一撃を受け止めて全力の拳で胴を撃つと、黒の装甲から火花が散った。G4が膝を突き、明らかな隙を晒した。

 どうすれば良いのか、何故か分かった。

 

 

 

 

 

 アギトの角が展開する。地面には龍を模った紋章が現れる。

 腕を水平に広げ、身体に引き寄せて半身を下げ、腰を落とす。紋章がアギトの脚に吸い込まれ、一瞬の静寂が流れた。

 そしてアギトは跳躍した。

 

「はあっ!」

 

 天を翔ける龍の鋭い一撃はG4の胸を撃ち、大きく吹き飛ばした。僅かに震えたG4は、次の瞬間に糸の切れた人形の様に動かなくなった。

 

 

 

 

 

 ヘリは高度を上げ遠くへ去って行く。それを追いかける気力はもう無くて、ただ見ている事しかできなかった。

 視線を下ろすと姉さんがいた。月の光を反射して赤く輝く血溜まりの中で眠っている様にも見えた。俺はまた家族を失った。

 

「姉さん……」

 

 姉さんを抱き寄せる。鎧越しには体温は伝わらない。もう体は冷え切っているのかもしれない。それでも、伝わるものはきっとあるはず。

 

「翔一……」

 

 可奈とマナちゃんが傍にいてくれる。だからきっと俺は大丈夫だろうけど、頬を伝う涙は止まらなかった。

 

 

 

 ぴ、ぴ、ぴ。

 

 

 

 何かが聞こえた。それは何かのカウントダウンの様な、不吉な音。

 姉さんをそっと降ろし、聞き耳を立てる。そして発生源を見つける。それは倒れたままのG4だった。

 不味い。そう思っている内に音の間隔は速くなっていき、バッテリー残量を示すゲージがそれに合わせて点滅する。そして点滅が点灯に変わった瞬間、G4の身体が弾けた。

 

「可奈!」

 

 体を引き寄せると同時に炎と風が俺達を吹き飛ばした。広いはずの屋上階なぞゆうに飛び越え、地上21メートルから自由落下する。地面に衝突するまでの数秒の間に体勢を入れ替え、俺が下に——。

 衝撃が走り思考が飛ぶ。全身の感覚が消え、自分が今どこにいるのかすらあやふやになった。

 

 翔一……翔一……!

 

 俺を呼ぶ誰かの声が聞こえた。だけどそれは俺を繋ぎ留められなかった。

 そして俺はまた落ちて、落ちて——。

 

 

 

 

 

 太陽が昇り始める朝焼けの中、翔一は目覚めた。

 呻き、ふらつきながらも立ち上がる。そしてその瞳が大きく見開かれた。

 

「思い出したぞ……全てを!」

 

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