私のヒーロー   作:Sakiru

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『運命』って言葉はロックっぽい

 

『運命』って言葉はとてもロックだと、私は思う。

 何がどうロックなのかと聞かれたら答えに窮するところだけど、それもまたロックなのだ。

 とは言ったものの……実の所、私はロックの本当の意味をあまり知らない。とはいえ偏見だけど、それは殆どのロックバンドも同じなんじゃないだろうか。

 私たちはその格好良さに魅了され、音楽の道を選んだ。それはあまりにも刹那的で、他の人から見たらあまりにも無謀過ぎる修羅の道なんだろう。何故なら音楽はまるで流れ星のように、一瞬の煌めきを残して儚くも散る事が多いからだ。一世を風靡(ふうび)する、なんて言葉があるように、いつかは歴史の彼方に忘れ去られてしまう。

 それでも私たちは、無限の可能性を求めて私たちの音楽を追究する。それには様々な理由があるけれど、確実に言えるのは、私たちが音楽を大好きであるという事だ。

 これは、私の思い出だ。たとえ世界が忘れても、私たちは──私だけは忘れないという記憶。そして、誓い。

 

 

 

 その日、私は『運命』と出会った。

 

 

 

§

 

 

 

 その日、私──伊地知虹夏(いじちにじか)は焦っていた。私の所属しているバンド『結束バンド』のライブがこの後すぐに控えているという直前のタイミングで、ギター役がバンドを辞めたいと申し出てきたからだ。

 バンドで使われる楽器には様々な種類があるけれど、基本的には以下の五つで構成される事が多い。

 ボーカリスト、ギタリスト、ベーシスト、ドラマー、キーボディストだ。

 そして、バンドの形態にも様々な種類があって必ずしも五人で組む必要はない。二人(ツーピース)バンド、三人(スリーピース)バンド、四人(フォーピース)や、五人以上の人数で組む場合もある。

 私たち結束バンドは三人(スリーピース)バンド、その構成はギター・ベース・ドラムを採用していた。

 今日は、初ライブの日だった。

 前のバンドをやめて、バンド活動そのものに嫌気がさしていた親友に声を掛けて結束バンドを結成した。そしてギタリストも何とか集まり、ライブ成功を目指して練習を重ねていた。

 だが土壇場(どたんば)での、メンバー脱退。ギタリストの子に何度も電話を掛けるも、音信不通の状態だった。

 一人抜けても二人居るのだから二人(ツーピース)バンドをやれば良い、なんて言う人もいるだろう。だが、ベースとドラムの二人(ツーピース)バンドなんて聞いた事がない。

 このままでは、ライブどころの話ではない。友達をライブに誘っている事もそうだが、このままではスタジオの顔に泥を塗る事になってしまう。

 それだけは絶対に避けなければならない。

 

「お願い……誰か……!」

 

 誰か、居ないか。

 スタジオを飛び出した私はそのまま、無我夢中に走っていた。当然、当てなんてものはない。

 一方的に辞めてしまったギタリストを見付けて説得し、連れ戻すのが一番だが……彼女は先に述べた通り音信不通だ。万が一の可能性に()けて親友にはスタジオに残るよう言ってあるけれど、それは望み薄だろう。

 

「どうしよう……! このままじゃ……!」

 

 焦りが募る。視野も狭まり、目眩(めまい)すら覚えてくる。

 全力疾走の代償はとても高い。意識した途端、私は膝に手をついて荒い呼吸を繰り返す。

 

 ──無謀だったんじゃない? 

 

 もう一人の自分──『私』が、そんな事を(ささや)いた。

 それは、私の『夢』を否定するものだった。

 

 ──お姉ちゃんの代わりになるなんて、無理だったんだよ。

 

 私の『夢』。

 それは私の為にバンドを辞めてしまった姉の分まで人気になり──本人は絶対にそうとは言わないけれど──、姉が私の為に始めてくれたライブハウスを有名店にするというもの。

 もちろん、バンドは好きだ。音楽も大好きだ。いつだって私のすぐに、音楽があったから。

 だが私の根幹に、それがあるのも事実。

 

 ──今ならまだ引き戻せるよ。辞めちゃえば良いじゃん。

 

 うるさい。

 

 ──そもそもギタリストを仮に見付けてその子とバンドを組んだとして、『成功』するとは限らないよ。売れるのはほんのひと握りの強者だけだよ? 

 

 知っている、そんな事。

 何千、何万という屍の上に、トップは立っているという事くらい知っている。実際にこの目で見てきたんだ。全てとは言わないけれど、その道が苦難に満ちたものなのは知っている。

 だけど、それでも私はバンドをやりたいんだ。こんな所で(つまづ)く訳には行かない。

 

「……ッ!」

 

 大きく息を吸いながら、ゆっくりと顔を上げる。

 そんな私を、『私』が呆れたように嘲笑う。けれどそこには、確かなあたたかさがあった。

 そして、『私』は消える。

 私は呼吸を落ち着かせながら、周りの景色を見渡した。

 ここはどこだろう。携帯を取り出して現在位置を確認すると、私の住居がある下北沢から離れてしまっている。我武者羅に走ってしまった代償だった。

 通知欄には、親友からのメッセージが来ていた。私の身を案じるメッセージに申し訳なさと感謝を抱く。

 

『ライブは中止しよう。事情が事情だし、店長も許してくれる』

 

 既読がついたのを見たのだろう、親友がそんな事を言ってきた。私が返信する前に、またもやメッセージが届く。

 

『また今度、メンバーが集まったらライブしよう。今は虹夏が心配。店長も内心では心配してる』

 

 我儘な子供を諭すような文章だった。こう言えば私が帰ってくると確信しているのだろう。

 流石、長年の付き合いなだけはある。姉──お姉ちゃんにも触れられたら、私が従うと分かっているのだ。

 そしてそれは、悔しいが正解だ。

 

「でも、ごめん。あと少しだけ……!」

 

 あとほんの少しだけで良い。そうすれば諦めるから。

 私は既読だけつけて、返信をしなかった。所謂、既読無視という奴だ。向こうは慌てているだろうが、今は叱られる事よりも大事な事がある。

 

「ねえー、パパー! 今日の晩ご飯はなぁにー?」

 

「そうだなー、何が食べたい?」

 

「うーん……ハンバーグ!」

 

 一つの家族とすれ違う。幼い子供に、優しそうなお父さんとお母さんという、普通の、幸せそうな家族だった。

 私は視線を外すと、彼らが出てきた場所を見る。少し開けた空間が広がっているようだった。

 

「……」

 

 不思議な事に私は『そこ』へ足を運んでいた。何故かと聞かれると、自分でも分からない。ただ、そうしなければならない──そんな使命感が私にはあった。

『そこ』はやや古ぼけた公園だった。遊具と呼べるものは数える程しかなく、人々に忘れ去られてしまったような哀愁が漂っている。

 

 そして、私は──『運命』と出会った。

 

 公園のブランコ、そこに、一人の少女が腰掛けている。美しい桃色の長髪に、同色のジャージ。下を向いていて顔は分からないけれど、何となく、整っているんだろうなと思った。

 まるで世界に取り残されているかのように、その少女はそこに居た。

 だがそれ以上に、目を引くものがあった。それは彼女が纏っている独特な雰囲気ではない。彼女が背中に担いでいるそれは、私が探してやまないものだった。

 

「あ!」

 

 と、気が付けば私は叫んでいた。

 そこでようやく、少女は私の存在に気が付いたようだった。ビクッと身体を震わせる、彼女。

 だが今の私にそんな事を意識する余裕はなかった。公園の敷地内に入り、走る。先程までの疲労は嘘だったかのように、足はとても軽やかだった。

 そして、私は彼女に近付くとまたもや叫んでいた。

 

「ギター!」

 

 私の叫び声に呼応するかのように、少女がゆっくりと顔を上げる。

 そして、目が合った。綺麗な蒼色の瞳に、私は言葉を失ってしまう。

 だがそれは一瞬の事で、彼女はすぐに視線を逸らした。そこでようやく、彼女から見た私が如何に変質者なのか思い至った。

 突然声を掛けてきたと思ったら、それが『ギター!』だなんて、警察に通報されても仕方がない。寧ろ、逃げられてないだけ奇跡だ。

 だがしかし、言い訳をさせて欲しい。探して求めていたギターがそこにはあったのだから、興奮のままに叫ぶのも仕方のない事だろう。

 これを逃す訳には行かない。私はさらに一歩彼女に近付くと、自分でも分かるほどの上機嫌な声音で尋ねていた。

 

「それギターだよね? 弾けるの!?」

 

「……」

 

「……おーい?」

 

「…………」

 

 何度か声を掛けるも、返事が来ることはなかった。

 無視されてしまっているのかと不安に思ったが、それはどうやら違うようだった。

 というのも、少女は中途半端に口を半開きにしてプルプルと震わせていたからだ。

 まるで、誰かと話すのが久し振りだとても言うかのように。

 だが、それは違うだろう。この歳にもなってそんな事ある筈がない。私はそれを緊張の所為だと結論付け、少しでも彼女の緊張が解れるように笑顔を向けた。

 

「私は下北沢高校二年、伊地知虹夏!」

 

「あっ後藤(ごとう)ひとりです」

 

 これが、私たちの出会いだった。

 

 

 

§

 

 

 

 ひとりちゃんを説得して、私は半ば強引にライブスタジオ──STARRY(スターリー)に戻っていた。

 正直に言うと、向かう道中ひとりちゃんがブツブツと何か呟いていたり私と目が一切合わなかったり私の匂いを嗅いできたりした時はヤバい人に声を掛けてしまったと後悔してしまったけれど、今更もう引き返せないと腹を括った。

 話を聞くと、ひとりちゃんはバンドを組んでいなかった。もしどこかに所属していたら問題になりかねなかった為、そこに内心で安堵していたのは内緒だ。

 ひとりちゃんは誰かとバンドを組みたいとは思っていたそうだけれど、メンバーが集まらなくて苦労していると言った。サポートギターのつもりだったけれど、これはそのままライブの後に入ってくれるかもしれないと都合の良い妄想をする。

 そんな彼女は普段、バンドのカバー曲を弾いてはネットに投稿していると言った。そっちの方が勇気いるんじゃないだろうか。

 

「何弾くの?」

 

 純粋に気になったので聞いてみると、ひとりちゃんはやはり目を合わすことなく答えた。

 

「結成した時すぐに対応出来るように、ここ数年の売れ線バンドの曲は全部弾けます」

 

「す、凄い執念だね……」

 

 いや、これは最早妄執の領域ではないか。そんな事を思ったが、口に出すのは憚られた。

 しかし、もしひとりちゃんの言葉が真実ならそれは凄い事だ。努力の方向はやや間違っている気がするが、それ自体はとても尊いものだと思う。

 と、そこまで考えて私は違和感を覚えた。今、ひとりちゃんが言ったのはまるで──。

 

「まるで、『guitarhero(ギターヒーロー)』みたいだね」

 

 そう、正しくそれだった。

 数年前、某有名動画サイトに突如として現れたのが『guitarhero』だ。登録者数は何の後ろ盾もないのに数万人。これだけでも凄いというのに、彼女の最も凄い所は投稿する動画全てがプロレベルだという事。オリジナル曲はなく、動画であげているのはひとりちゃんが語った内容──つまり、ここ数年で売れているバンドの曲だった。

 

「『guitarhero』って名前はちょっと痛いけどね」

 

「……ッ!?」

 

「でも私、『guitarhero』さんが動画をあげるのをいつも待っているんだー」

 

 概要欄に貼られているサジェストや文章はかなりアレだけれど、私は『guitarhero』さんの音楽が好きだった。

 

「あっありがとうございますぅ……!」

 

「えっ、なに!? 何が!?」

 

 ひとりちゃん、情緒が不安定過ぎる! 

 何やら感極まって泣いているひとりちゃんに、私は内心でそう突っ込まずにはいられない。

 しかしこれではまるで、彼女が『guitarhero』ではないか。そうでなければこの反応はおかしいだろう。

 動画に映っているジャージ姿の彼女とひとりちゃんは似ている部分がある。あの痛々しい黒歴史の数々も、ひとりちゃんの妄執によるものだと考えたらどうだろう。

 

「あっあの、どうかしましたか……?」

 

 ジッと見詰めていると、ひとりちゃんが今にも泣き出しそうな表情を浮かべながらそう尋ねてきた。

 

「ううん! 何でもない! ごめんね!」

 

 私は慌てて謝ると、後藤ひとり=『guitarhero』説を一旦保留にした。正直な所、二人が同一人物なのは半分半分といったところだけれど、それはすぐに分かることだ。

 何故なら、私たちはこの後一緒にライブをするのだから。その時のひとりちゃんの音楽を聞けば、自ずと分かるだろう。

 そう結論付け、私は服の袖をおずおずと握ってくる──話を聞くと、下北沢に来るのは初めてだそうで怖いのだとか。小動物みたいで可愛いなぁ──ひとりちゃんを連れ、STARRYに戻ったのだった。

 

 

 

§

 

 

 

 STARRYに続く階段を降りていると、足音に気がついたのだろう、親友が扉を開けた。私の姿を認めると、普段の無表情を少し崩す。

 

「おかえり」

 

「うん、ただいま!」

 

 私は笑顔でそれに返すと、ひとりちゃんに軽く親友の事を紹介した。

 

「ひとりちゃん、この子はベース担当の山田(やまだ)リョウ」

 

「こんにちは」

 

 リョウがひとりちゃんにぺこりと会釈(えしゃく)する。しかし無表情で挨拶されたひとりちゃんは怯えたように、私の服の袖を握る手に力を込めた。

 睨まれていると勘違いしているのかもしれない。

 

「リョウは感情が表情に出にくいだけだから、安心して!」

 

「あっはい」

 

「だいたいのベーシストがこれで落ちるように、『変人』って言うと喜ぶから何かあったら言うと良いよ!」

 

「喜ばないし」

 

 ぽわ〜っとした表情で言っても説得力はない。

 兎にも角にも、そんな表情を見たひとりちゃんも安心したようだった。

 

「あっ後藤ひとりです。こ、今回はよろしくお願いします」

 

 そう言って頭を下げる、ひとりちゃん。それを見た私は、ファーストコンタクトが成功したと胸を撫で下ろした。

 

「それじゃあ、中に入ろう! またライブまでには少しだけ時間あるから、一曲くらいなら合わせが出来るよ!」

 

「うん」「はっはい!」

 

 二人に声を掛け、私は扉のドアノブに手を掛けた。

 

「あっ、そうだ虹夏。言い忘れていた事が──」

 

 リョウが何か言っていたが、それが私の耳に届く事はなかった。

 ギタリストを見付けられた喜びのまま、意気揚々と扉を開けた私はすっかりと忘れていたのだ。

 制止してきたお姉ちゃん──店長の言葉を無視して我が家(スタジオ)を出ていった事を。

 

「おう、虹夏。勝手に飛び出しやがって、どういうつもりだ?」

 

 そこには、阿修羅が居た。

 

「ひゅぅぅぅぅぅ……!?」

 

 ひとりちゃんが奇声を上げながら、私の背中に抱き着いてくる。服の上からは分からなかったけど、ひとりちゃん、結構なものをお持ちだった。着痩せするタイプだったようだ。

 そんな現実逃避する私に雷が落ちたのは、当然の帰結だと言えるだろう。

 

 

 

§

 

 

 

 説教からようやく解放された私は、今度こそ曲の合わせをしようと思っていた。

 だが、しかし。それは出来ずにいた。

 

「ひとりちゃん、出てきて! もうすぐでライブ始まっちゃうよ!?」

 

「ややややややややややっぱり無理ですぅ!?」

 

 私の必死の声掛けに、ひとりちゃんがそう返す。

 可燃物を入れるゴミ箱の中に、ひとりちゃんは立てこもっていた。衛生的に汚いので是非ともやめて欲しい。というか、女子高校生が進んでそんな所に入らないで欲しい。

 最初こそひとりちゃんは初めてのライブハウスに緊張していた様子だったが、すぐに馴染んだのか「私の家!」とニヤニヤ笑いながらそんな突拍子もないことを言い出した。いや、ここは私の家なんだけど。

 その後もPAさんを見たと思ったら「イキッてすみません」って言うし、何がなんだか分からない。

 

「ガクガクブルブルガクガクブルブル」

 

 そんな事を口に出して言う人、初めて会ったよ。

 どうしたものかと悩んでいると、お姉ちゃん──店長が近付いてきた。

 

「おい、虹夏。そろそろ合わせしないとヤバいぞ」

 

「びぇええええええええ!?」

 

「うおっ!?」

 

 ひとりちゃんがゴミ箱のさらに奥に入る。

 

「お姉ちゃん、空気を読んでよ!」

 

「な、何だと!? というか、ここでは店長と呼ぶように何度も──」

 

 お姉ちゃんの言葉を無視し、私は頭を抱えた。

 ひとりちゃんがゴミ箱から出てこない理由、それはお姉ちゃんにあった。

 それは、仕方のない部分もあった。お姉ちゃんはお世辞にも愛想が良いとは言えないし、浮かべているのはいつだって仏頂面だ。

 憧れていたライブスタジオに阿修羅が居たとなれば怯えてしまうのは仕方ない。ま、まあ、お姉ちゃんを阿修羅にしてしまったのは私の所為なんだけど。

 

「お願い! 流石に合わせなしでいきなりライブするのは……」

 

 お姉ちゃんをパソコンの前に座らせた私は、再度ひとりちゃんを説得する。私の必死な声掛けに、彼女も心を動かされたのかおずおずと顔を上げてくる。

 一瞬、目が合った。私は出来る限りの優しい笑みを浮かべ、ひとりちゃんに向ける。

 

「てっ天使……!」

 

 何を言い出するんだろうかこの子は。そう突っ込みたかったが、ここでまたゴミ箱の中に立てこもられては困る。リョウが笑っているのを尻目に──後で頭をひっぱたこう──私はひとりちゃんに言った。

 

「ひとりちゃんの音楽、聴きたいな!」

 

「わっ私の音楽を……?」

 

「うん、もちろんだよ! リョウもそうだよね!?」

 

「私は別に」

 

「こんの山田ァー!」

 

 空気を読めと私が()えるも、リョウはどこ吹く風だった。親友の私には分かる、こいつ、この状況を楽しんでいるに違いない。

「ぴいっ!?」とひとりちゃんが悲鳴を上げる。しまったと私は後悔する。これでは何の為に言葉を尽くしてきたのか分からない。

 しかし、ひとりちゃんは私の後悔に反して、おずおずとゴミ箱の中から出てきた。埃とゴミを叩き落とす私に、彼女は確かに言った。

 

「やっやります。合わせ!」

 

 

§

 

 

 

 ひとりちゃんをサポートギターに誘うにあたって、私が聞いたのは一つだけ。すなわち、どれくらいの『レベル』なのかという事だった。全くの初心者だったら話にもならないが、彼女は『そこそこ』だと言っていた。

 それを聞いた私は安心した。今日披露する曲は初心者じゃなければまず出来る難易度だったからだ。

 だが、しかし──。

 

「…………ド下手だ(きみは最高のギタリストだ)」

 

「虹夏。逆、逆」

 

 リョウが真顔で突っ込んでくる。そこで私は、自分の失言に気が付いた。恐る恐るひとりちゃんに顔を向けると、そこには絶望一色のひとりちゃんが居た。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 慌ててひとりちゃんに駆け寄り、頭を深く下げる。

 

「だ、大丈夫ですから頭を上げてください……!」

 

「で、でも私……」

 

「ほ、本当に大丈夫ですからっ」

 

 下手と言われた事よりも、私が頭を下げている事の方がひとりちゃんは辛いようだった。言われるがまま、死刑を宣告された罪人の気持ちで顔を上げる。

 ひとりちゃんは表情を引き()らせながらも、私に笑いかけてきた。

 違う。私はそんな表情見たくない。

 自分の愚かさに情けなさを感じていると、静観していたリョウが口を開ける。

 

「その子、随分とやりにくそうだった。そうじゃない?」

 

 それは私も感じていた事だった。

 最初から最後まで、ひとりちゃんはやりにくそうにギターを弾いていた。本来の実力が発揮出来ない、そんなもどかしさすら感じた。

 

「あっはい。な、何ででしょうか……?」

 

 リョウの質問に、ひとりちゃんはおずおずと頷く。

 

「誰かとセッションをしたのも、これが初めて?」

 

「あっはい。頭の中では何回もしているんですけどねヘヘヘ」

 

「そっか」

 

 リョウは、答えに辿り着いたようだった。「なるほど」と呟くと私に説明する。

 

「この子はずっと、一人で練習してきた。それがどれくらいの練習量なのかは分からない。だけど、ある程度のスキルは持っていると仮定する」

 

「う、うん」

 

「問題は、そこにある。一人で練習してきた弊害とでも言うのかな、この子は他の人と呼吸を合わせるのを知らない」

 

 なるほど、と今度は私に腑に落ちた。バンドをやるに当たって、リョウが言った事は大前提の条件だ。

 一人でやるのとは違い、複数人で音楽を生む場合は互いのリズムを合わせる必要がある。

 これまでずっと一人で練習してきたひとりちゃんはそれを知らないし、行う術を知らない。

 

「私たちはインストバンド。ボーカルが居れば多少は誤魔化しが効くけど、私たちにはそれが出来ない」

 

 それはつまり、音楽とは言えない。

 

「ごっごめんなさい折角声を掛けて貰ったのに役に立てなくて……!」

 

 ひとりちゃんが顔を青くしながら、頭を深々と下げた。

 違う。ひとりちゃんは何も悪くない。全部、私が悪いんだ。私の思い付きの行動が、ひとりちゃんを傷付けたんだ。

 

「どうする?」

 

 リョウが無表情にそう尋ねてくる。

 この『どうする?』はライブをやるかどうかの質問だろう。私の『夢』は誰にも、それこそ親友にだって話してないが私の想いは察している筈だ。

 こんな音楽とは言えない品物でライブをやって、果たして良いのだろうか。

 自問自答する。そして私は、一つの結論を出した。

 

「やろう」

 

「ん、分かった。それじゃあ、やろう」

 

「ごめんね、リョウ。ありがとう」

 

「……良いよ。いつも、面倒を見てもらってるから。これでチャラにしてくれるならね」

 

 そう言って、リョウはニヤリと笑った。素直じゃない親友が、私は大好きだ。

 

「え? えっ?」

 

 状況を呑み込めてないのか、ひとりちゃんが困ったように視線を彷徨わせる。私は彼女に近付くと、こう言った。

 

「本当にごめんなさい! ライブは私とリョウでやるから、ひとりちゃんは大丈夫!」

 

「え? えっ?」

 

「強引にここに連れてきて、ごめん! ひとりちゃん、本当はあまりここに来たくなかったよね? それなのに……本当にごめんなさい!」

 

「え? えっ? えっ?」

 

「笑われるのは、私とリョウだけで良いから。ひとりちゃんは大丈夫だから!」

 

 困惑している、ひとりちゃん。

 本当はもっと話したいけど、これ以上は無理だ。時間に余裕がない。私はリョウと一緒に店長に事情を説明、三人(スリーピース)バンドではなく二人(ツーピース)バンドでライブさせて欲しいことを頼んだ。

 店長は最初こそ呆れていたが、しかし、最後には承諾してくれた。

 

「ごめんね、お姉ちゃん」

 

「ここでは店長と呼べと言っているだろう。店の事は気にするな、虹夏」

 

「……うん、ありがとう」

 

 そう言って、店長──お姉ちゃんは優しく私に微笑んだ。こういう格好良い所が、私は大好きだ。自慢のお姉ちゃんだと自慢したくなる。

 

「けどまっ、今日の客は虹夏の友達だけだろう? ズブの素人に音楽の善し悪しなんて分からんだろうから、そういった意味でも心配するな」

 

「……」

 

「……? おい、何だよ虹夏。その不機嫌そうな顔は?」

 

 一言余計なお姉ちゃんが、私は嫌いだ。

 PAさんが心底呆れたようにため息を吐くのを、お姉ちゃんは不思議そうに首を傾げていた。

 お姉ちゃん、無意識のツンデレは今時流行らないよ。ロックじゃないよ。

 

 

 

§

 

 

 

 お姉ちゃんの予想通り──と言うのはとても悔しいけれど──観客は私が呼んだ友達数人だった。その友達も、次回からはきっと来てくれなくなるだろう。

 次回からのノルマを考えると頭痛がするが──家族サービスで無料にしてくれないかなぁ──今は目の前のお客さんと、これから演奏する音楽に集中すべきだ。

 リョウと二人、ステージに立つ。明るい照明の光がさすのは、私たち二人だけ。

 私が今日呼んだ友達は、音楽に関して造詣が深い訳ではない。だがベーシストとドラマーの二人(ツーピース)バンドが変なのは察したのか、顔を見合せていた。

 

「はい、『結束バンド』です! 今日は──」

 

 友達とは言え、今はお客さんだ。そう意識すると、緊張してしまう。お姉ちゃんの凄さを、私はここで少し知った気がした。

 声が震えないように、噛まないように、私はMCを行う。正直、何を言っているのか自分でも分からない。突拍子もないことは言ってないと思うけど、お世辞にもお客さんのウケが良いとは言えず、お通夜のような空気が流れていた。

 これはまずい、と私は一曲目を演奏する。だが私の予想通り、全く盛り上がらない。

 当然だ、私たちは所謂『リズム隊』。いわば縁の下の力持ちであって、ボーカルやギタリストが居なければ全く意味がない。リョウが一生懸命、持っている高等スキル全部を出してお客さんが飽きないようにしているけれど、それも今日のお客さんには響かない。

 分かっていたとはいえ、これは堪える。これが夢に見ていた初のライブだなんて、私は今悪い夢でも見ているのだろうか。

 一曲目が終わり、二曲目に入る。お客さんが眠たそうに欠伸をした。みんな、ここには義務感でしか残ってない。

 MCを挟む。空気は何も変わらず、私は道化のように振る舞う。PAさんが、リョウが、お姉ちゃんが心配してくれる。それは救いでもあり、辛くもあった。

 三曲目に入る。お客さんの興味は私たちに一切なく、早く終われとその眼差しは語っていた。

 そんな、音楽とは程遠い『何か』をしている中。

 私は一つ、視線を感じた。

 そこには、ひとりちゃんが立っていた。ジッと私とリョウを……──いや、違う。私を見詰めている。

 その瞳の奥にある色を直視するのが怖くて、私は彼女から視線を逸らした。

 ああ、本当に惨めだと思う。こんな、子供のお遊戯会同然のライブに、意味なんてものはない。

 こんな筈ではなかった。こんな筈じゃなかったんだ。

 それなのに、現実はこれだ。

 リョウのベースを弾く手が、乱れる。当然だ。最初からあれだけ飛ばせば、息切れするのは当然だ。

 いつもは熱いドラムスティックが、今だけは冷たい。私は機械のように淡々とドラムを叩く。

 自然と、私の顔は俯いていた。熱中からくるものではなく、逃避からくるものだ。

 だが、そんな私を許さないと言うかのように──一つの視線が送られてくる。

 見れば、ひとりちゃんが未だに私の事を見詰めていた。長い前髪が邪魔をして、表情は伺えない。だがそれが失望で彩られているのは分かる。

 さぞかし私は滑稽に映っているだろう。ひとりちゃんの音楽を聴いて私は思わず下手と言ってしまったけれど、今の私はそれ未満だ。

 

 そして、目が合った。

 

 だが、今までとは違った。ひとりちゃんは目を逸らさず、私を見詰め続けてくる。

 堪えられなくなって、私はその視線から逃げる。そして次、私がそこを見た時にはひとりちゃんは居なくなっていた。

 三曲目が終わる。そして次が、最後の曲だ。

 普通なら「盛り上がっていきましょー!」などと言うべきなんだろうけれど、今の私にそんな気力はなかった。ボソボソと次が最後の曲だと告げると、お客さんの態度は明らかだった。これでようやく解放されると、雄弁に書かれていた。

 演奏を始める。リョウも体力が尽きたのか、奏でる音にいつもの力強さはなかった。

 サビに入る。本来サビはその曲の最も盛り上がる所だけれど、全く盛り上がらない。

 一番目が終わり、二番目に入る。そして、また盛り上がらないサビに入ろうとした、その時。

 

 一陣の風が通った。

 

『それ』は突如、突然ステージに上がってきた。

『それ』はこの場に居る全員の視線を集めていた。

 お客さんも、PAさんも、お姉ちゃんも、リョウも、そして私も『それ』に視線が釘付けとなる。

 それは当然だ。何故なら『それ』は、とても大きなダンボール箱だったからだ。『完熟マンゴー』と文字が書かれているそのダンボール箱には、マンゴーが入っていたのだろう。

 

「な、何あれ……?」

 

 お客さんが、この場に居る全員の心の声を代表してそう呟いた。

 ライブに於いて、演奏者が手を止めるのは最大の禁忌だ。だがリョウも、そして私も突然現れた『完熟マンゴー』なるダンボール箱に衝撃を受けて楽器に触る手を止めてしまう。

 

 時が、止まった。

 

 だが──突如として奏でられたギターの音が、それを許さないと言うかのように、時を動かした。

 発生源は、ダンボール箱からだった。それは音楽素人でも分かる程の、質の高い音。

 

「これって……?」

 

 まさか、と思う。私は恐る恐る、ダンボール箱の蓋を開けた。そこでは、ひとりちゃんがギターを携えて演奏をしていた。

 暗闇の中に光が差し込み、ひとりちゃんの顔を照らす。

 

「ひとりちゃん……」

 

 私が彼女の名前を呟くと、ひとりちゃんはビクッと身体を震わせた。しかし、手を止める事はしない。顔を上げ、真剣な顔で私に何かを訴えかけてくる。

 

「──」

 

 訳が分からない。取り敢えず、まずは話をしないと……そんな私の思考を断ち切るように、別の音が鳴る。

 顔をそちらに振り向かせると、そこではリョウがベースを弾いていた。彼女もまた、ひとりちゃんと同じように私に何かを訴え掛けてくる。

 訳が、分からない。二人が何を言いたいのか、私には分からない。

 だが、だが──。

 気が付けば私は、ドラムの前に座っていた。ドラムスティックを握っていた。そして私は、衝動に駆られるままにドラムを叩いていた。

 凍っていた手先を溶かすように、全力で身体を動かす。そして身体に熱が灯り、加速していく。

 そんな私を見て、リョウは笑った。そしてドラムの私に合わせると、音楽を始める。

 そこに、ギターの音が合わさる。

 やはりと言うべきか、音は噛み合わない。当然だ、ただでさえ暗闇のダンボール箱の中で弾いているのだ、さっきの合わせよりも難易度は跳ね上がっている。

 だが不思議な事に、さっきよりも私たちは一体と化していた。

 私たちの熱が、少しずつ広がっていく。それはやがてお客さんたちの心にも伝わり、音楽は息を吹き返した。

 私たちは、残り数十秒のこの命に全てを賭けた。

 

 

 

§

 

 

 

 初ライブはこうして終わった。お世辞にも成功とは言えない、寧ろ、大失敗の部類に入るだろう。

 だが最後のあの数十秒だけは違ったと私は胸を張って言える。あの時間違いなく、世界で一番熱いライブハウスはここ、STARRYだったと断言出来る。

 閉店時間を迎えたライブスタジオはとても寂しい。店長とPAさんが最後の業務をしている中、私はひとりちゃんとリョウに声を掛けていた。

 

「良いライブだった」

 

「あっはい」

 

 リョウの呟きに、ひとりちゃんが反応する。

 リョウは変人だけど、音楽に関してはとても誠実だ。そのリョウが『良いライブだった』と言ったのは、嘘ではなく本心なのだろう。

 

「最初に登場してきた時、びっくりした。本当に上手だったんだね」

 

 あの時のひとりちゃんは『そこそこ』なんてレベルではなかった。レーベルに入らないかと誘われる程の腕前を持つお姉ちゃんも、ライブが終わった後ひとりちゃんに声を掛けた程だ。まあ、ひとりちゃんはお姉ちゃんに苦手意識を持ってしまったようで文字通り溶けかけていたけれど。

 

「えへへ……ありがとうございます……」

 

 リョウに褒められ、ひとりちゃんがニヤニヤと笑いながら照れる。

 

「まあ、その後は壊滅に下手だったけど」

 

「グハァ……す、すみません……」

 

「あれが安定して出来ると良いね」

 

「はい仰る通りです生きててすみません私はプランクトンです」

 

 乾いた笑いを浮かべながら、ひとりちゃんは吐血すると床に倒れた。そしてビクッ、ビクッと震える。

 

「面白いね」

 

「面白くない! ひとりちゃん、大丈夫!?」

 

「あっはい」

 

 ひとりちゃんに手を貸し、立ち上がらせる。椅子に座り直した彼女に、私は尋ねた。

 

「ねえ、ひとりちゃん」

 

「あっはい何でしょうもしかして死刑ですかごめんなさい」

 

「ち、違うから! ──どうしてあの時、ステージに来てくれたの?」

 

 ひとりちゃんは引っ込み思案な性格な筈だ。そんな彼女がどうして、あんな目立つ行動をしたのか。

 

「ごめんなさい勝手な事をしてごめんなさい生きててすみませんあっそうだハラキリショーなんてどうでしょうきっとお客さんも喜ぶと思います」

 

「違う違う! 何も責めてないから! 寧ろ私たちは感謝しているんだよ!」

 

「ん、虹夏の言う通り」

 

 私は「ひとりちゃん」と名前を呼ぶと、声音を出来る限り優しくしてもう一度尋ねた。

 

「ライブは失敗だった。ひとりちゃんが出る必要はなかったんだよ?」

 

「……そうだとしても」

 

 ひとりちゃんはそう呟くと、顔を上げて言った。

 

「あんなのは、あんまりだと思ったんです。虹夏ちゃんもリョウさんも、あんなに一生懸命に演奏してたのに……あれじゃあ、誰も報われない」

 

「……」

 

「そ、それに、あの時虹夏ちゃんが助けを求めているような気がしてっ」

 

「……へっ!?」

 

「じ、自分でも分からないんですけど、気が付いたらあのダンボールの中に入っていてっ! た、助けたいって思ったんです」

 

 そう言うと、ひとりちゃんは力尽きたように顔を俯かせた。余程恥ずかしかったのか、俯いていても顔が真っ赤なのが分かる。

 だが、それは私もだ。ひとりちゃんの方をまともに見る事が出来ない。

 

「イチャイチャしてるね」

 

「〜〜!? リョウ!?」

 

「わっ、怒った」

 

 そりゃあ怒るに決まってるよ! と私は内心で叫んだ。

 これ以上調子に乗らせる訳には行かない。私はリョウを強く睨むと、黙らせた。

 呼吸を落ち着かせた私は、これからの事を考える。とはいえ、考えるまでもなかった。

 私の中では、既に結論が出ている。

 

「ねえ、ひとりちゃん」

 

「あっはい」

 

 少しだけ顔を上げるひとりちゃん。少し目が合うだけで俯き、また少しだけ顔を上げるのを繰り返す。

 普通なら面倒だと感じる所だろうが、何故か、私にはそれとは全く別の感情が芽生えていた。可愛いなぁ、と心から思う。

 可愛い物好きのお姉ちゃんの遺伝がそうさせているのだろうか。

 今から話す事は、とても大切な事だ。私は深呼吸すると、勇気を振り絞って言った。

 

「今回限りのサポートギターじゃなくて、正式にギタリストとして結束バンドに入ってくれないかな?」

 

「……えっ?」

 

「も、もちろんさっきとは違って無理強いはしないよ! ただ出来れば、ひとりちゃんとこれからもバンドをやりたいなって思って! リョウもそうだよね?」

 

「うん、面白そう」

 

「…………ええっ!?」

 

 ひとりちゃんは今日一番の大声を出すと、私とリョウの顔を何度も見返した。冗談だと思っているのかもしれない。それは少し嫌だなと思う。

 

「ど、どうかな?」

 

 語尾は震えていなかったと思う。

 私の質問に、ひとりちゃんは中々答えなかった。視線を彷徨わせ、「えーっと、あーっと」とブツブツと呟く。

 私は彼女が答えるその時まで、待っていた。

 そして、その時は訪れた。

 

「ふふふふふふふ不束者ですがよろしくお願いします」

 

 そう言って、頭を下げるひとりちゃん。

 私は自分でも分かる程の満面の笑みを浮かべると、思わず彼女に抱きついた。砂になる事も、今の私にはどうでも良かった。

 

 これが、私たちの出会い。

 

 この日、私は『ヒーロー』と出会ったのだ。

 

 

 

§

 

 

 

 余談だが。

 本名のままバンド活動をするのか聞いた時に、せっかくだからとひとりちゃんの渾名を考える事となった。

 曰く、これまでは「あの〜」とか「おい」としか呼ばれてこなかったらしい。『ひとり』と呼ばれたのは幼稚園の先生や両親を除けば初めてだったとの事だ。

 察してはいたがまさかここまで重症だとは思わなかった。私が絶句していると、話を聞いたリョウが妙案を思い付いたのか口を開け、

 

「後藤ひとり……『ひとり』──『ぼっちちゃん』はどう?」

 

 そんな、デリカシーの欠片もない渾名を提案した。

 だが私が口を挟む前に、ひとりちゃんはその渾名を受け入れてしまった。初めての渾名に感動してしまったようだ。

 思う所がないわけではなかったけれど、本人が望むならそうしよう。

 そういう事で、ひとりちゃん改めぼっちちゃんは正式に結束バンドに所属する事となったのだった。

 ……私が名付け親になりたかったなぁ、と思ったのは絶対に内緒だ。

 




息抜きがてら、人生で二度目の短編小説を書きました。
短編小説なので、あと数話で終わらせます。

ぼっち・ざ・ろっく! おすすめです。面白いです。

感想や評価など頂けると励みになります。よろしくお願いします。

※私は音楽知識など一切ないので、もし間違えていたらごめんなさい。教えてくださると助かります。
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