「シン・ウルトラセブン」を読んでくれてありがとうございます!
シン・ウルトラマンを見た後に勢いで書き始めてしまったこの作品ですが、何とか完結にまで持っていくことができました。
嬉しい感想や評価もいただくことができ、本当にうれしい限りです。
本編自体は完結しましたが、これからちょこちょこ番外編を書き足していくかもしれないです(保障はしません。なんでやねん。)
完結編なので文字量が他の話より多くなっていますが、最後までお付き合い願います。
アルジェリア、グフィ渓谷。
北アフリカに位置する山々の上空を、ダンたちウルトラ警備隊員を乗せた
「では、再び作戦のブリーフィングを行います。」
ロバートが作戦概要を説明する中、ダンはじっと干からびた大地を見つめていた。
彼の両手足には拘束具がはめられてあり、身動きできない体制を取らされている。
反物質爆弾の起爆まであと1時間。タイムリミットはもうすぐそこまで来ていた。
―――・・・
「僕は...僕はね、人間じゃないんだ!M78星雲から来た、ウルトラセブンなんだよ!!」
ダンが発した言葉のあまりの突拍子のなさに、アンヌは返す言葉もなかった。
「それ...本気で言ってるの?」
「信じてもらえないみたいだね。」
アンヌを説得すべく、ダンはポケットから
すると一瞬だけ、ダンの姿がウルトラセブンのそれに変わった。
「...!!」
目を見開き、アンヌはダンを見つめる。
さっき見た光景が信じられないのか、何度も瞬きをして自分の意識を確かめる。
「びっくりしただろう?」
「どうして...今になってあなたは正体を明かそうと思ったの?」
「この状況を覆すには僕が君たちと協力するしかない。そのためにはモロボシ・ダンの名を捨てるしかないと思ったんだ。」
アンヌは今起こっている状況を整理するためか、髪を掻きむしりながら大きなため息をついた。
「全然理解が追い付かないんですけど...とにかく、あなたが協力してくれるとして、どうやってこの状況を打破するつもり?」
「僕が光子状態になってこの惑星の地表を隅々まで調査する。今から1時間もあればできるはずだ。」
「地表の調査って...そんなこと...」
「できる。それが僕の元々の職務だからね。」
「じゃあ...外星人と戦うことはあなたの専門外ってことじゃない!」
「まぁ、そういうことになるな。」
予想外の事実の波がアンヌの脳に押し寄せる。
自分が知らぬ間に外星人とバディを組んでおり、そして彼が人類が知らない間に、知らない場所で知らない敵から人類を守ってくれていたというのだ。
「もう時間がない。一時間後にここに戻ってくる。その間にウルトラ警備隊の皆に連絡を。」
「ちょ...待って!!」
「デュワッ!!!」
目が眩むほどの光がダンから発せられ、アンヌは反射的に目を細めた。
光が収まった時、もうそこにはダンの姿はなかった。
「どうしてもっと早くに言ってくれなかったのよ...私たち...バディなのに...」
―――・・・
「...以上です。何か質問は?」
「ないよ、ロバート。」
「もうすぐターゲット地点に到達する。こんな体制を取らせることになってしまって、本当に申し訳ない。」
「
「でも酷いよ!キングジョーはあなたの協力なしには倒せなかったかもしれないのに、幹部の連中がこんな真似をするなんて!」
「そう怒るなよオリビア。僕は平気だよ。」
不機嫌そうなオリビアをダンは優しくなだめた。
「国連本部から連絡が来た。これから君の拘束具を解除するよ。」
アキレッシュがキーボードをカタッと叩くと、ダンに装着されていた拘束具が外れた。
「ありがとう、アキレッシュ。」
「ウルトラセブン、人類を代表して言わせてもらおう。非常に押しつけがましいことだが、我々人類の存亡は君にかかっている。どうか...人類を救ってくれ!!」
ハンズの熱い願いを受け、ダンは小さくこくっと頷いた。
ダンのスーツが激しく風に揺られ、まるでマントのようにたなびいていた。
「ダン!!」
両手をメガホン状に丸めてアンヌは叫んだ。
ダンは振り返り、彼女を見つめる。
「私、あなたのことまだ何にも知らないんだから...絶対...絶対生きて帰って来なさいよ!!!」
にこりと笑みを浮かべると、ダンはアンヌに向かい叫んだ。
「あぁ!約束だ!」
その言葉を最後に、ダンはハッチから飛び降りた。
山々の間のくぼみめがけ、ダンの体は急降下していく。
ポケットから
「デュワッ!!!」
激しい光を放ち、ダンの体がウルトラセブンのものに変わったことを確認すると、
砲弾は山肌に直撃し、その中から建造物のようなものが露になっている。セブンが光子状態となって発見した、外星人のアジトである。セブンはその中に潜入し、両手の手先から光線を発しながら次々に建造物を破壊していく。
セブンの後を追うように、
潜入から3分ほどすると、アジトの核と思われる部分にセブンたちはたどり着いた。
セブンが光線を放とうと構えを取ると同時に、セブンの頭上の天井が二つに割れ、青空が割れ目から顔をのぞかせる。
すると、アジトの核部分から飛行体のようなものが空に向かって飛び立っていった。それを迎撃すべくセブンとドローンたちは攻撃を開始したが、バリアのようなものに守られて効果がない。
その直後だった。
アジト全体が激しく揺れ始め、セブンはやむなく天井の割れ目から脱出した。
その揺れの正体は間もなく明らかになった。
山肌が盛り上がり、地底から赤色の巨大生物が地面を突き破って姿を現したのだ。恐らく、敵がこちらの注意を引くために用意した生物兵器なのだろう。
かつ30cmほどのカプセル内で収納できる他文明を制圧するために用いられる生物兵器だ。
パンドンは雄たけびを上げながら、国連軍のドローンを火炎放射で一層していく。その温度、なんと摂氏5000度。
そうしている間にも、外星人の飛行体はどんどん高度を上げていく。この状況を前に、さすがのセブンも焦りを隠せないでいた。
(私が巨大化すれば、パンドンを倒し、あの飛行体を撃ち堕とせるかもしれない...)
そう考えるセブンの脳内に、誰かの声が響いた。
『セブン、警告しよう。君のエネルギー残量から考えて、これ以上の巨大化は君の死を意味する。』
その声の主は、光の国の恒点観測局長、アルジュンだった。
(しかし、もう時間がない!このままではこの外星人を逃してしまう!)
『君がこの星の文明に余計な干渉をした以上、我々も君の行動に伴う責任は負いかねる。それが光の国が出した決断だ。悪く思わないでくれたまえ、ウルトラセブン。』
そう言い残すと、アルジュンからの声は途絶えた。
(このままパンドンを野放しにすれば、甚大な被害が出る...かと言ってあの外星人を逃せば、再び地下に眠る反物質爆弾を起動しようとたくらむだろう...)
どっちみち、自分には巨大化するしか選択肢はない。
そう考えたセブンは自分の命を犠牲にしてでも闘うことを決意した。
(この星を守るためなら...私のこの命、くれてやろう。)
ドローンを焼き払うパンドンを見つめながら、セブンは覚悟を決めた。
恒点観測員として生きていたなら、決して沸き上がらなかったであろこの感情。
この「守る」という行為に対する熱意は、紛れもなく薩摩次郎のものだった。
巨大化しようとセブンが念じた、その瞬間。
ドカーン!!!
さっきまで大気圏外へと逃走しようとしていた敵の飛行体が爆音と木っ端みじんになっていたのだ。
(これは...ウルトラ警備隊の仕業か!?)
―――・・・
「飛行体の爆散を確認!迎撃、成功しました!」
ロバートがモニターの映像を確認しながら状況を報告した。
「アンヌ、お手柄だったな。
「これが日本語のいう所の『用意周到』ってとこですよ、
「ちょっとぉー。バリアの光子スペクトルを解析したの、私なんですけどぉー。」
自分の手柄を横取りされたことに腹を立てたのか、オリビアは頬を膨らませながら愚痴った。
それもそのはず、あの飛行体のバリアを中和させたのはオリビアの解析結果のおかげだからだ。
ドローンの攻撃が効かないことを目撃したオリビアたちは、さっそくバリアの解析に取り掛かった。アンヌはあらかじめ忍ばせておいた
バリアの中和が完了した直後、
(でも、その解析アルゴリズムを作ったの、俺なんだけどな...)
アキレッシュは一人ぶつぶつ言いながらキーボードを叩いた。
「まだ喜ぶのは早い。問題はあのバケモノをどう片づけるかだ。」
口ひげをいじりながらハンズが冷静に状況を判断する。
「奴にサーヴェイ弾を撃ち込んでみましょう。まずは奴の生物的情報を調査しなくては。」
「よし、
サーヴェイ弾とは、物質と衝突した際にその内部構造に応じて複雑な波形を生成するサーヴェイ粒子を内蔵したミサイルのことである。
攻撃を食らったパンドンは怒りのままに
「うぉっ...さすがこの速度で動かれるとGがきついな...」
「
―私の力も使ってくれ。―
「...?今のは...」
「まさか...ウルトラセブンが我々とテレパシーで会話している...?」
―私の光線と君たちの兵器の威力を合わせれば、奴にダメージを与えられるかもしれない。―
「試してある価値はありそうです、
「よし、
セブンはガッツポーズの姿勢を取ると、胸のプロテクターから太陽光を集め始めた。太陽からのエネルギーがセブンの両腕を駆け巡り、彼の筋肉組織が膨れ上がる。
「デュアーッ!!!」
腕をL字に組み、雄たけびと共に全集中の必殺光線がセブンの腕から発射された。
「今だ!発射!!」
ブランドンの命令を受け、
「
「撃ち続けろ!責任は私が取るッ!!」
しかし、さすがに物理的限界に達したのか
「くそっ、ここまでか。敵の状況は?」
「まだ生体反応があります!」
「チッ、後一歩のところで...」
セブンは最後の力を振り絞り、頭についている
「ダァーッ!!!!」
その声と共に放たれたアイスラッガーは宙を切り、白熱化しながらパンドンの首元へと飛行していく。
スパッ。
痛快な音と共にパンドンの首を貫通したアイスラッガーは、ブーメランのようにセブンの頭上へと戻っていった。
「...やったか?」
パンドンは静止の状態を保ったまま、セブンたちをじっと見つめている。
ウルトラ警備隊員たちはデータを解析する余裕もなく、ただモニターに映るパンドンの動きを観測していた。セブンのエネルギーもさっきの一撃で底を尽きている。これでパンドンを仕留められなければ、もう後はないのだ。
グギギギギ....
不気味な音を立てながら、パンドンの首が本体から崩れるように転げ落ちた。首が本体から切断されると同時に、パンドンの体もバタリと膝から崩れ落ちていった。
セブンとウルトラ警備隊は、一か八かの賭けに勝ったのだ。
「パンドンの生体反応...消失しました...」
「コ、
「...」
ゆっくりとブランドンが頷く。
「や、や、や...」
「やったぁー!!!」
狭い
―――・・・
「本当に...行っちゃうのね?」
ウルトラ警備隊の作戦室の中、つかの間の勝利を祝う暇もなく隊員たちはダンから悲しい知らせを告げられた。
「...あぁ。僕がこの惑星に干渉することは元々禁じられていることなんだ。これ以上君たちの文明に干渉すると君たちも処罰の対象になりかねない。」
ダンはブランドンに向かい、目配せをした。
「
「分かっているよ。君が愛したこの星は私たちの手で必ず守って見せる。地球は我々人類、自らの手で守るものなのだからな。」
ブランドンの力強い答えに同調したのか、隊員たちもダンに守りの誓いを立てた。
「そうよ!任せときなさい!」
「僕たちがいる限り、外星人なんかにこの星を渡してたまるもんか!」
「安心して帰ってくれ。これからの仕事は僕たちが引き継ぐから。」
隊員たちの言葉にダンの心が揺さぶられる。この「人間らしい」感情ももうすぐ消えてしまうのかと思うと、どこか切ない感情がこみ上げてきた。
「セブン...いや、ダン。」
ハンズはダンに歩み寄り、右手を差し出した。それをダンは握り返し、二人は固く握手を交わした。
「君と戦えたことを誇りに思う。」
自然と顔が笑顔になる。人間として生きることの素晴らしさをダンは再確認した。
「僕も光栄ですよ、ハンズ。」
ダンの右肩をポンと叩き、ハンズは手を離した。
「...では。」
ポケットからウルトラアイを取り出すと、装着する準備をした。心なしか、何かやり残したような違和感がダンの心を包み込む。
「待ちなさいよ。」
その違和感の正体を、ダンはその声の中に感じ取った。
彼に初めて信頼されることの嬉しさを教えてくれた、あの人。彼女に対して抱いていた感情は、いつしか友情の枠を超えてしまっていたのだ。
「バディには何の挨拶もしないわけ?」
「ご、ごめん...」
「急にいなくなったり、帰ってきたと思ったらすぐいなくなっちゃったり...最低のバディね、あなたって!」
「そうだよな...でも、君は僕にとって最高のバディだったぜ。」
「...こんな時にそんなこと言わないでよ。」
目をそらすようにアンヌは下を見つめた。
「アンヌ、」
彼女と視線を合わせるようにダンはアンヌの両肩をつかむ。
「君は僕に『信頼』というものの素晴らしさを教えてくれた。でもそれだけじゃない。僕は君から、もっと素晴らしいものを教わったんだ。」
「...何よ、それ。」
ただ感じていることを口に出すだけ。それだけなのに、心臓が高鳴り、口が渇く。書籍や映像でしか見たことがなかったこの感情を、ダンはこの瞬間有り余るほどに感じていた。
「人を好きになること、さ。」
言ってしまった。
しかし、悔いはなかった。もうこれから、彼女に会うことはないのであろうから。
ダンの言葉を聞いたアンヌの目が潤み、一筋の涙が頬を伝う。
「そんなこと...こんな時に言うものじゃないって言ってるじゃない!!」
アンヌはダンに体を投げ出すように抱き着いた。ダンはその体をやさしく受け止め、固く抱きしめる。
「どうして...どうしてこんな時に言うのよ...こんな大事なこと...」
「...今だからさ。僕が人間じゃなくなる前にどうしても言っておきたかった。」
体を包む手が緩み、二人は互いに目を見つめ合った。
「あなたが人間だろうと、外星人だろうと私は気にしちゃいないわ。たとえウルトラセブンでも...」
「ありがとう...ありがとうアンヌ。」
気を取り直すように少しうつむくと、アンヌは涙声のままわざと冷たく言い放った。
「さぁ、早く行きなさいよ!もうこの星にはいられないんでしょう!?」
「...あぁ。」
ダンは後ろに下がりながら距離を取ると、再びウルトラアイを取り出した。
「...なぁアンヌ。あの日、君は僕の趣味について聞いたよな。」
涙を強がるようにふき取ると、アンヌは聞き返した.
「さぁ、どうだったかしら?」
「僕...時計集めにはまってるんだ。」
こわばっていたアンヌの顔が緩み、プッと笑いがこぼれた。
「ふふっ...何よそれ。」
アンヌの笑顔を噛みしめるように見つめると、ダンは笑顔で別れの挨拶をした。
「さようなら、アンヌ。」
「...うん。またね、ダン。」
隊員たちに背を向け、ダンはウルトラアイを構えると勢いよく目に着けた。
「デュワッ!!!」
激しい閃光が作戦室を満たす。
光が収まったかと思うと、そこにはもうダンの姿はなく、赤い光の球体があった。球体はなぜか高度を保ったまま、不規則に何度か瞬いた。
「...!」
その意味に気づいたのはアンヌだけのようだった。
球体は最後に大きく輝いて部屋を光で埋め尽くし、隊員たちが目を開けたころにはもう姿を消していた。
「アンヌ、ダンはなんて言ってたんだ?」
隊員たちは皆アンヌの答えに興味津々のようだった。
アンヌはふっと失笑しながらつぶやくように答えた。
「THANK YOU (ありがとう)。」
完読ありがとうございます!!
この最後の「THANK YOU」は読者の皆様に向けた「アリガトウ」でもあります。
素人者の趣味小説にお付き合いいただき、本当にありがとうございました!