シン・ウルトラセブン   作:Sashimi4lyfe

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注:本作に出てくる地名は全てフィクションです。


3. バディとの信頼

ブランドンは広い会議室の中で一人、パソコンに向かい合って話していた。

 

画面の向こうには国連の幹部たちが険しい顔でブランドンの報告に耳を傾けている。

そう、今行われているのはウルトラ警備隊最高指揮官と国連幹部の機密会議である。

 

「...つまりこれはウルトラ警備隊のみならず、我々人類への警告、ということか。」

「そうです。このままでは被害は日本にとどまらず、世界各国へも及ぶ可能性があります。」

「たかがスマホのアプリだろう。ダウンロードを禁止すれば済む話ではないのかね?」

「それはもう日本政府により検討済みです。まぁ結果はご覧の通りですが。」

 

国連幹部の面々が表情をさらにゆがめていく。

 

「ふむ。我々の大抵の動きは読まれているようだな。」

「厄介なことを...しかも使用ユーザーの75%が日常的使用をしているというではないか。」

「変な介入は市民の疑いを買う。問題の発端を叩くしか解決策はないだろう。」

「軍事的行動に移るしかないようだな。」

 

幹部の一人が水を一飲みしながら命じた。

 

「よし、コンディションレベルを3に移行しよう。カテゴリー2のMETEOR(メテオール)の使用を許可する。」

「うむ、やむを得まい。健闘を祈るぞ、指揮官(コマンダー)。」

「了解しました。では。」

 

―――…

 

「中央合同庁舎第7号館の第34号室...ここかぁ。」

 

彼は佐村博人、練間警察署付属の警察官だ。

署長の急な命令により、34号室に呼び出された彼は混乱しながらも部屋のインターホンを押した。

 

「音がしない...中は完全防音か。俺、一体なんでここに呼ばれたんだろう...」

 

間もなくしてドアが開くと、眼鏡をした白人の女性が出てきた。

敬礼をする間もなく、女性は彼の右手をつかんで部屋に招き入れた。

 

「オォー!!あなたがヒロトサンね!初めまして!あたしオリビア。さっ、入って入って~」

「は、はぁ。失礼致します。」

 

部屋の中には、背広姿の男女がオリビアを含めて7人おり、パソコンとにらめっこをしている。

後ろのドアが閉まると、博人は姿勢を正し、敬礼をして名を名乗った。

 

「申し遅れました、佐村博人と申します!練間警察署の森岡署長の命により参りました!」

「もう、そんな堅苦しい挨拶なんていいのに。ところでヒロトサン、スマホ貸して!」

「は?えぇ、どうぞ...」

 

(この人たち、誰なんだ?それになんで俺のスマホを?)

 

オリビアは博人からスマホを受け取ると、デスクに置いてあった装置を充電口に差し込み、スマホをアンロックした。

 

「えっ、どうやってそれを...」

「まぁいいから。さてと、バースは...あった!」

「ちょっ、何を...」

「協力してくれたまえ。」

 

ハンズの野太い声に博人は氷ついた。

首にかけたネームカードを見せびらかしながらオリビアはちゃらかすように言う。

 

「にひひ~。こう見えて私たち、国連の一員なんだぁ。」

「こ、国連!?」

 

(なんでみんな日本語話せんだよ...でもそれよりも...)

 

オリビアがバースのアイコンをタップし、アプリを起動する。

 

(まずい...俺のチャットログを見られたら...!!)

 

博人とメトロンのチャットログが表示される。

 

「ほほー。これはこれは...」

「...」

「随分メトロンちゃんとラブラブみたいねぇ、ヒロトサン?」

 

博人は赤面しながら目をそらす。

 

「真面目にやれ!」

 

鬼のような形相でハンズが一括した。

 

「はぁ~い。じゃ、アキレッシュ、お願いね。」

「了解。METEOR(メテオール)スクランブル・ディクリプター、稼働します。」

 

METEOR(メテオール)-それは外星人が残したオーバーテクノロジーを改善・調整したものである。

この存在はウルトラ警備隊と国連組織の一部しか知らされておらず、外星人にかかわる事態のみに使用が許可されているものである。

 

中でもスクランブル・ディクリプターはカテゴリー2に分類されるMETEOR(メテオール)の一つで、関係者以外の人物に直接的な接触が求められる物。METEOR(メテオール)利用規約により、コンディションレベル3以上の状況でしか使用できない代物だ。

 

「QPNのバックトレース完了。ディクリプション、オールクリア。成功です!発信源が判明しました!」

「でかしたぞ、アキレッシュ!」

 

ブランドンが歓喜の声を上げる。

 

「なんだ、もうおしまい?じゃあ、失礼して...」

 

おもむろに万年筆を取り出すと、オリビアは博人の首に突き刺した。

 

「!?はにゃ~...?」

 

博人の口から情けない声が漏れだし、目がうつろになっていく。

彼の耳に近づき、オリビアはささやいた。

 

「いい?あなたはこの10分間、公安庁のオフィスに呼ばれたけれど同姓同名の人違いだったことが判明したの。だから特に何もせずに職場に戻った。いいわね?」

はい...

 

オリビアは彼の首から万年筆を抜き取った。

 

「うん!じゃ、そういうことで!お疲れさ~ん。」

 

博人は強引にオフィスの外に放り出された。

 

「あれ?ここは...そうだ、職場に戻らなきゃ...」

 

頭のだるさに疑いを持ちながらも、博人は練間警察署へと戻っていった。

 

 

 

 

「さっすが、カテゴリー2のMETEOR(メテオール)なだけあって効果はテキメンね!」

METEOR(メテオール)メメティック・オーバーライター...人工的にトランス状態を誘発させ、既存の記憶を書き換えるMETEOR(メテオール)。情報規制局も随分と怖いおもちゃを持ってるのね。」

「それで、ヤツの居場所は?」

 

ダンが話を本題に戻す。

 

「場所は...日本橋の芹沢団地です!より詳細な位置データを算出するには現地まで行く必要があります。」

「よし。ダン、アンヌ、アキレッシュ、ロバートの四名はPNTR(ポインター)で直行。ダンとアンヌは現場に赴いて敵のパルスデータを収集し、残りの隊員はPNTR(ポインター)車内で収集したデータの分析にあたってくれ。」

指揮官(コマンダー)、あたしはぁ?」

「オリビア、君は残れ。君には奴が残した量子パルスの解析が残っているだろう。」

「そんなぁ、あたしも行きたいのに~。」

「馬鹿を言うな、遠足じゃないんだから。」

「ちぇっ。」

 

頬を不満そうに膨らませながら、オリビアはカタカタと作業に移った。

 

「よし、ウルトラ警備隊、出動!」

 

―――…

 

「ここが芹沢団地...普通の集合住宅地に見えるわね。」

 

ダンとアンヌは団地の前に立ち、アキレッシュたちの解析結果を待っていた。

 

「ねぇ、まだかかりそう?」

 

無線でアンヌがPNTR(ポインター)に連絡を送る。

 

「団地の他の電波がノイズになってなかなか特定できないんだ。そこらへんで暇をつぶしててくれよ、データは十分とれたから。」

「...そう。了解したわ。」

 

アンヌは無線を切り、ダンに尋ねる。

 

「ですって。どうする、ダン?」

「近くに喫茶店があったはずだ。あそこで茶でもしないか?」

「外星人の拠点の近くだっていうのに、よくそんなこと思いつくわね...でも気に入ったわ。行きましょ。」

 

その喫茶店は、芹沢団地から徒歩8分ほどの距離にあった。ビルの2階にある喫茶店の窓からはちょうど団地が見える。

二人はコーヒーを頼み、団地から目を離さずに仲間たちからの無線を待った。

 

「ダン、あなたって趣味とかあるの?」

 

アンヌの質問が沈黙を破る。

 

「なんだい、急に。」

「私、バディ組んで仕事することあんまりないんだ。分析官(エージェント)の仕事は一人が多いから。でも、私はダンのことほとんど知らないし、それはあなたも同じ。この仕事をしてる限り、私は仲間を最大限信用したいから、あなたのことをもっと知りたいと思って。」

「僕のことが信用できないっていうのかい?」

「違うわよ。ただ、いつ死んでもおかしくない仕事だから...一緒にいる仲間とはなるべく仲良くしたいでしょ?」

「...そうか。」

「まだ質問に答えてもらってないわよ、ダン。」

 

ダンが答える暇もなく、アンヌの無線が鳴った。

 

「こちらアンヌ。」

「奴の詳細な位置情報が分かったよ。奴は3号棟の315号室にいる!」

「なるほど、じゃあ一旦作戦室に戻って対策を...」

「その必要はないよ。幹部からコンディションレベルを4に引き上げろとの通達があった。」

 

アンヌの背筋に緊張が走る。

 

「ハンズから作戦概要が送られてきた。一度PNTR(ポインター)に帰還してくれ、そこで作戦のブリーフィングを行う。」

「了解。今ダンとそちらに向かうわ。」

 

―――…

 

コンディションレベル4。

地球の来訪目的が友好的なものでないと国連が決断した時に発令されるコンディションである。

レベル4の判決は外星人の物理的排除を要求するものと等しい。

 

「では、もう一度作戦の概要を説明する。ダンが外星人が潜伏しているとされる室内に潜入し、アンヌは一階で待機。残りの隊員はPNTR(ポインター)車内でダンとアンヌの周波観測機から観測される電磁データを解析。外星人との交戦にはMETEOR(メテオール)マルス-133を使用するものとし、各隊員に1機ずつ付与するものとする。」

「やはり納得がいかないわ。外星人の駆除なら経験のある私が担当するべきよ。ダンはまだ外星人とのコンタクトを取ったことさえないのよ。」

 

アンヌが腕を組みながらロバートに反論する。

 

「彼だって日本の公安局を代表する人物だ。それに、我々ウルトラ警備隊の唯一のエージェントである君を失っては、多大な影響が出る。」

「じゃあ、ダンは噛ませ犬になるってことじゃない!」

「しかし、彼の観測データを利用すればさらに確実な作戦が立てられる。」

「そんな!」

 

「分かってくれ、アンヌ。これは国連の受諾を受けた決定事項なんだ。」

 

アキレッシュは何とかアンヌを説得しようとするも、彼女は頑なに作戦を受け入れない。

 

「認めないわよ、こんな作戦。いくらウルトラ警備隊とはいえ、一人の命を使い捨てにしていい権限はどこにもないはずよ!」

 

その時、アンヌは肩に温かみを感じた。

ダンがそっと右手を彼女の方に添えたのだ。

 

「僕なら大丈夫だから。心配しないでくれ。」

「でも...」

「僕を信用してくれるんだろ?」

「...」

 

アンヌはうつむいたまま返事をしなかった。

 

「では、作戦は予定通り午後5時に決行する。二人とも、健闘を祈るよ。」

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