処刑実行日、当日。
わずかながらに残っていたセブンのエネルギーも底を尽きようとしていた。
照りつける太陽の中、聞いた覚えのある声がセブンの脳内に語り掛けてくる。
「無様だな、ウルトラセブン。」
(ガ...ッツ...)
はっきりと思考することさえままならない。
そこまでセブンは弱り切っていたのだ。
「もうすぐ貴様は私によって処刑される。貴様が愛した人間どもに侵略者のレッテルを張られながら死んでいくのだ。」
(ど...うし...て...)
「なぜ私がこんなことをするのか、と聞きたいのだろう。簡単に言ってしまえば、貴様は鼻つまみ者なのだよ。この惑星は非常に理想的な座標に位置している。この時代においてこの惑星を手にいれたくない文明はないだろう。」
かつて人類史に大航海時代が訪れたように、宇宙の様々な文明は宇宙航海期に突入しようとしていた。
天の川銀河の中に位置し、水を保有する惑星である地球は多くの文明にとって非常に価値のある惑星であった。
「もうこの星の取得権はいくつかの文明との間に分けられているのだ。しかし地球の領土分別の作業を邪魔する外星人がいる...それが貴様なのだ。その邪魔者をまず始末するために雇われたのがこの私なのさ。」
(さ...せ...ない...)
「何を言おうともう手遅れなのだよ。計画はほぼ完成している。貴様を殺した後、地球占領計画は第二ステージへと移行する。もうこの星の原住民たちでは止めることはできない。」
(ぐっ...)
「せいぜい悔しがるがいい。ハハハハハ!!」
ガッツの高笑いがセブンの脳内にこだまする。
しかし、セブンは決してあきらめてはいなかった。
(あなたは...絶対に死なせないわ。)
アンヌの言葉を胸に、セブンは辛抱強く待ち続けるのだった。
仲間たちが彼を助けに来る、その時を。
―――…
「明夫、朝ごはんよ!明夫!」
明夫の母、峰子がそう呼びかけるが、明夫は部屋から出てこない。
三日前まで順調に復帰していたと思っていたのに、突然明夫はまた部屋から出てこなくなってしまったのだ。
「...そろそろ支援センターにまた電話してみようかしら。」
テーブルに付き、テレビを付けるとニュースにセブンの処刑の生中継が行われていた。
―...周辺の住民の避難は完了しているとのことです。さぁ、果たして本当にこの外星人の処刑が行われるのでしょうか?―
テレビの実況を聞きながら、峰子がコーヒーをすする。
―あっ、何かが現れました!ガッツです!何の前触れもなく突然ガッツが姿を見せました!―
巨大な十字架に捕らわれた赤い外星人と、それを殺そうと現れた巨大な鳥人のような外星人。
峰子はテレビに映るSF映画のようなな光景から目を離せないでいた。
「処刑って、ちょっとグロテスクよね...でもちょっと見てみたいかも。」
―そして上空を飛んでいるのは...飛行機...でしょうか?あぁっ、飛行機からなにか光線のようなものが十字架に向けて放射されました!-
「一体何が起こってるのよ...」
―大変です、ウルトラセブンを捕らえていた十字架が消えて行っています!-
ガチャリ。
テレビの実況の声が聞こえたのか、明夫は部屋のドアを開き、テレビを覗いた。
「明夫!よかった、早く朝ごはんを...」
峰子の声は明夫の耳に届かなかった。テレビに映る光景にくぎ付けになっていたからだ。
あの飛行機の正体は明夫には分らなかったが、彼には根拠のない自信があった。
彼らはウルトラセブンを救おうとしている...彼はそう信じたかった。
(お願いだ...
―――…
「今だ!
ハンズの命令を受け、
セブンの額めがけ、マグネリウム・メディカライザーが照射される。
ウルトラ警備隊の科学者たちが必死の研究の末に開発した、最新鋭の
「せ、成功です!稼働率97%!」
「セブンのエネルギー波長が回復していってるわ!」
額のビームランプが緑色の輝きを取り戻し、くたっとしていたセブンの体に力が宿っていく。
「デュワッ!!」
威風堂々とガッツポーズを決め、セブンは復活の宣言をした。
太陽の光が胸のプロテクターに反射され、神々しい輝きを見せている。
「セブンが...セブンが生き返りました!!」
ガッツは分が悪いと見たのか、テレポーテーションで一時脱出を試みた。
しかし、逃がすものかと言わんばかりにセブンは額のランプから緑色の光線を発射する。
「グギャアア!???」
断末魔を上げながら、ガッツの体は大爆発を起こした。
苦闘の末、人類とセブンはガッツとの闘いに勝利したのだ。
勝利を祝うこともなく、セブンは疲れたようにぐたっと膝をつくと、すっと姿を消した。
―――…
「やった...やった!!ウルトラセブンが勝った!!」
テレビに映ったセブンの勝利を前に、明夫は思わず歓喜の声を漏らした。
「何喜んでるのよ。あの外星人は悪い侵略者なのよ?」
「母さん、ガッツは僕たちを騙そうとしてたんだ!本当は奴が悪い奴だったんだよ!」
「...何を言ってるのかよくわからないわ。だって地球のために戦ってくれるって言ってたじゃない。」
ピンポーン。
明夫の家のインターホンが鳴る。
重い腰を上げるようにゆっくりと立ち上がると、峰子はインターホンに出た。
「はーい。どちら様でしょうか。」
「...」
「もう、今時ピンポンダッシュかしら。」
渋々峰子が玄関のドアを開けると、ダンが弱々しく立っていた。
まるでゾンビのようにぐったりとした姿勢で、立っているのがやっとのようだった。
「も、諸星さん!」
明夫がダンに駆け寄り、肩を貸す。
「あ、明夫君...少しの間...かくまってくれ...」
「う、うん!母さん、僕の部屋まで運ぶの手伝ってよ!」
「それはいいけど...なんでまた
「いいから!」
峰子と明夫はダンを部屋に担ぎ入れ、ベッドに横たわらせた。
ベッドに横になった瞬間、ダンは気絶したように眠りについた。
「すっごい熱...お仕事中に何かあったのかしら。」
「今はそっとしてあげようよ。随分疲れてるみたいだしさ。」
「まぁ、可哀そうに...よっぽどブラックな職場なのね...」
「ま、まぁ...そうなんだろうね...」
明夫はダンの体にそっと布団をかけると、心の中でダンに語り掛けた。
(お疲れさま、ウルトラセブン。)