運命の始まり
──────二木市、竜ヶ崎と蛇の宮の中間の地点。
誰も気に留めないであろう路地裏の一角が歪むと同時に、長く伸びた黒髪をツインテールに纏めた少女がスタッと着地する。
白を基調とした和風の衣装に身を包み、何も知らない人間が見ればアニメのコスプレか何かかと疑われてもおかしくはない。
その少女はパンパンに膨らんだリュックを改めて背負い直すと、ふぅと一息吐く。
少女は周囲を見渡して見ると自分が全く土地勘のない場所にいることに気付き、ポケットに入れていたスマホを取り出し地図アプリを起動する。
「二木市…………知らない名前の街に着ちゃったみたいね。想定以上に『魔女』の『結界』が広かったからもしやとは思ったけど、ここまで離れているだなんて…………」
最初に少女がいた地点から数十キロは離れており、愛用の自転車はそこに置き去りのなっていた。
そして少女が口にした魔女と結界という言葉だが、これは少女が思春期特有の病を患っているということではない。
少女──
魔法少女は魔女と呼ばれる世界に絶望を撒き散らす存在と人知れず戦い、人々のために希望を与えるのが役割だ。
本来であれば魔法少女にはそれぞれのテリトリー、つまりは縄張りのようなものがあるのだが静里の場合は別だった。
日の本を守護する巫として、静里の実家である時女本家の中においてすら彼女は異端なのだ。
自分のやりたいようにやると武者修行という名目で静里の故郷、霧峰村から出てきて様々な地を回っていた。
その地の魔法少女と交流することで友好関係を築き、多くの少女たちの信頼を得ることで静里はテリトリーの縛りを実質的にないものとしている。
だが、そんな静里をしてこのような事例は初めてだ。
静里は顎に手を当てて考える仕草を取るが、間もなく顔を上げて元気な笑みを浮かべる。
「こんなこと気にしてもしょうがないわよね! これも旅の醍醐味だと思えば何てことないもの! むしろ姉様たちへのお土産話が増えるわ!」
良くも悪くもポジティブな静里だったが事態が好転したわけではない。
まあなんとかなるだろうと歩を動かそうとしたのだが、何者かの気配を感じて動きを止める。
(この魔力は魔法少女? 数は二人。魔女はもういないのに、何でわざわざこっちに…………)
二木市は静里にとっても初めての土地であり、当然ながら二木の魔法少女との交流も一切ない。
もしかしたらテリトリー侵犯として自分を咎めに来たのかもしれない。
(いいえ、これはむしろチャンスよ。交渉次第では魔女狩りの許可も得られるかもしれないし、もっと友達も増やせるかもしれないもの)
何処かルンルン気分の静里だったが、程なくして現れた二人の魔法少女の剣呑な雰囲気に僅かの冷や汗を垂らす。
殺意とまではいかないものの、猜疑心に満ちた視線がじろじろと向けられさしもの静里もたじろぐ。
二人の魔法少女が視線を合わせ、片方の少女が静里に向けて口を開いた。
「お前、何処の魔法少女だ!? さては虎屋町のスパイじゃないだろうな!?」
(虎屋町のスパイ? この人たちは何を…………とにかく事情を把握しないことにはどうしようもなさそうね)
「何のことか知らないけど、私はそんな大袈裟なものじゃないわ。たまたま魔女狩りをしていたら偶然入り込んでしまっただけよ」
嘘をついたところで静里にはメリットなど無いうえ、ここで下手に刺激を与えすぎればすぐさま戦闘ということにもなりかねない。
事態の好転を図るために、あくまでも慎重に相手の気を引けそうな
「グリーフシードがお望みなら、別にあげてもいいわよ。ストックには余裕があるもの」
「グリーフシードに余裕…………?」
「バカな、そんなことがあるはずがない!」
「でも、こいつが外から来たっていうのが本当なら…………」
静里は顔には出すことはないが、隙らしき話題が見えたことに内心で歓喜する。
そしてこの少女たちから全ての情報を引き出せれば、逃げるにしても進むにしても必ず有益なものとなるはずだ。
静里の『固有魔法』を持ってすれば造作もないのだから。
「ええ本当よ。直接確かめてもらっても構わないわ」
「…………わかった。だが少しでも妙な動きを見せたら容赦はしない」
背負っていたリュックを地面に置き、静里は数メートルほど後退する。
一人がリュックの中身を探っている間、もう一人は静里の見張りをするべく注意を払っている様子。
チーム単位での動きに慣れていることに静里は関心しつつも、これから自分がすることに若干の申し訳なさを感じてしまう。
しかし静里は躊躇わない。
武者修行の過程でチンピラ同然の魔法少女に絡まれることも、一度や二度ではどころか両手の指を全て使っても足りないはしない。
「ごめんなさい」
「えっ…………ぐあっ!」
静里に対して警戒を行っていた少女は一息に距離を詰められ、腹に強い一撃を食らい意識を刈り取られる。
「安心しなさい峰打ちよ」
常人には見えない速度で二本の刀を魔力によって生成し、間違っても怪我をさせないように峰打ちを選んだ。
魔法少女であれば多少斬ったところで治癒の魔法なりを使えばいいのだろうが、余計な恨みを進んで買えるほど静里は壊れてはいなかった。
「お前、いったい…………!?」
「しー」
「ひっ!」
唇の前で指を一本立て、静かにするように促す。
刀を魔法少女の力の源であり、
静里はそれ以上刀を近づけるつもりすらないのだが、うっすらと涙まで滲んでいるほどに少女は恐怖している。
抵抗の意思が無くなったのを見て、静里は少女の耳元に唇を寄せて言葉を紡ぐ。
「大丈夫よ。私はあなたの『親友』なんだから、ちょっとすれ違いがあっただけ。だから、ね?」
「あ、うん。そうだったね。『親友』のあなたになんてことを………… 」
(喋り方のすごい変わり様ね。高圧的に装って自分を鼓舞するタイプか)
少女の変わり様には静里も一瞬たじろぐが、固有魔法の効果が出ていることに安堵する。
静里の固有魔法は『改変』。
改変の固有魔法によって少女の中では、静里が親友であることは確固たる事実となる。しかし、現実に二人が親友であった事実など何処にもない。
この魔法はとにかく汎用性が高く、『あなたは魔法を使えない』と言えば魔法は使用不能となり、『あなたは歩き方なんて知らない』と言えば歩行が不可能となる。
一見強力無比に思える魔法だが、その実欠点がないわけではない。
魔法の使用時間と改変した事実の大きさ次第では魔力の消費が大きくなり、その分だけソウルジェムに多くの穢れが溜まっていく。
何よりも対象は一人だけに限定され、既に固有魔法を使用している場合、他の人間に続けて使えば前者の魔法は解除される。
先んじて一人を気絶させたのはそういったデメリットがあってこそであった。
「それじゃあ話を聞かせてくれる? 二木市の魔法少女に関する全てをね」
キリがいいので今回はここまで
ゲーム上の性能(想像)
基本データ
時女静里
属性 ライト
タイプ バランス
ディスク構成
Accele ×2
Blast(縦方向)×1
Blast(横方向)×1
Charge ×1
最大ステータス
レアリティ
星4
レベル LV.80
HP 24875
ATK 8669
DEF 8125
星5
レベル LV.100
HP 30002
ATK 10689
DEF 9689
コネクト「共に幸せな未来を掴みましょう」
星4 攻撃力UP[Ⅶ]&必ず回避無効&アオにコネクトでMP回復
星5 攻撃力UP[Ⅶ]&必ず回避無効&ターゲット生存時に必ず追撃&アオにコネクトでMP回復
マギア「巫二天一流・無限ノ太刀」
星4 敵全体に属性強化ダメージ[Ⅴ]&光属性攻撃力UP&デバフ解除&必ず回避
星5 敵全体に属性強化ダメージ[Ⅶ]&光属性攻撃力UP&デバフ解除&必ず回避&状態異常解除
ドッペル『渇望のドッペル』
レアリティ星5
効果 敵全体に属性強化ダメージ[Ⅸ]&光属性攻撃力UP&デバフ解除&必ず回避&状態異常解除&ヴァリアブル(自/3T)
EXスキル「未来への希望」
攻撃力UP[Ⅰ](味全/∞)&MP自動回復[Ⅰ]
スキル[ライトブレイク[Ⅱ]]
光属性耐性DOWN[Ⅰ]&さらに光属性耐性DOWN[Ⅱ](敵単/3T)